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June 24, 2007

『ライアーゲーム』の収支

 甲斐谷忍『ライアーゲーム』(2005年~2007年集英社、4巻まで、505円+税)は、ある架空のゲームを設定し、登場人物たちがその必勝法を探して知恵をしぼる、というマンガです。『カイジ』+『デスノート』という感じですね。

 昨日は、TVドラマバージョンの総集編+最終回スペシャルをフジテレビが三時間も放映してました。TVではえらく倫理的な結末の三回戦でしたが、雑誌連載中のマンガもそうなのかしら。

 で、このマンガ、ゲーム設定や展開はおもしろく思ってたのですが、ゲーム主催者の意図がよくわかんなくて。とくに経済的にどう考えてんのか。TVでは万俵大介=北大路欣也が黒幕で、ぐふふ、とかやってましたけど。

 そこで。

     ◆

 わたしはライアーゲームの主催者である。

 これからライアーゲームを開催するわけだが、わたしはどのような収支を考えてこのゲームを進行させているのか教えよう。

     ◆

 一回戦、ふたりの人間が、貸し与えられた1億円ずつを時間内に奪い合う。勝者は敗者から奪った金額分を賞金として得る。勝者も敗者も借りた1億円は主催者に返還する。返還できなければ借金となる。

 ひとつのゲームで、勝者が敗者の1億円をすべて奪った上で、二回戦に行かずに賞金の半額を払いドロップアウトすると、わたしは最高で5000万円を得ることができる。しかし、勝者がドロップアウトせずに二回戦に進んでしまってはわたしの儲けは存在しない。

 もし勝者が敗者から1万円しか奪わなかったら、ドロップアウトしてくれてもわたしの儲けは5000円である。

 二回戦は22人で開催されたのだから、一回戦は最低22ゲーム施行された。ただし、一回戦から二回戦へのドロップアウト率がゼロという前提で22ゲームである。そしてその場合、わたしの儲けもゼロである。

 人間の欲は深いものだ。心理学にくわしいわたしは、一回戦の勝者は、ドロップアウトせずに必ず二回戦に進むものだと予測している。ドロップアウトしてくれた方がわたしの収益は上がるのだが、そうならないようにいろいろ努力をしているのだから、我ながら矛盾した行為である。

     ◆

 二回戦は、参加する22人中ひとりだけが勝者。大きな金額が動くのだが、実はわたしは金を出していない。勝者ひとりが敗者21人から21億円を手に入れる。

 ここで二回戦の勝者がドロップアウトしてくれたら、わたしは勝者が獲得した金額の半分、10億5000万円を手に入れることができるのだ。しかしそうならなければ、わたしの儲けはゼロである。実際主人公はドロップアウトせずに三回戦に進んでしまい、わたしはまったく儲けることができなかった。

     ◆

 敗者復活戦では9人が参加して8人が勝ち抜けする。ここでは敗者ひとりが拠出する1億円を勝者の8人で分ける。わたしには儲けも損もない。

 というつもりで、最初参加者に説明しておったのだが、実はこれが大まちがい。

 参加者全員に1億円分の小切手を渡し、この金額がアッチ行ったりコッチ行ったりしててわかりにくくなってるのだが、もし、参加者が小切手を使用せずゲームが終了すればどうなっていたか。

 参加者全員が未使用の小切手をそのままわたしに返還して、ひとりだけゲームから脱落。残りの8人が1250万円ずつの賞金を手にして、三回戦に進む。って、この賞金誰が出すんだよっ。わたしである。

 敗者復活戦の最後でカンザキナオが指摘したように(説明は少しヘンだが)、敗者復活戦では、わたしは無条件に1億円の損をするのである。うう、わたしはバカである。

     ◆

 敗者復活戦の勝者8人が三回戦へ参加する前のドロップアウトは想定していない。敗者復活戦が開催されているとき、参加者たちはドロップアウトに必要な金額を5000万円ではないかと噂しあっていたが、実は1億円である。これではだれもドロップアウトしない。

 ドロップアウトしてくれないと、わたしはどんどん損をするばかりなのだ。それなのにドロップアウトしにくいこのような設定を作ってしまう。これでわたしが収益を目的としていないことがわかっていただけるであろう。

     ◆

 そして三回戦では、主人公たちのグループ9人とは別のユニットが存在することがわかった。こちらも9人のグループである。おそらく彼らの多くも敗者復活戦を経て、勝ち上がってきたのであろう。

 二回戦の獲得賞金は21億円。この半分をドロップアウトのために支払っても10億円以上残る。この条件をけって三回戦に進もうという人間がそんなにいるはずがない。

 さらに敗者復活戦がなければ、向こう側のユニットの二回戦は9ゲーム、さらに一回戦は最低でもその22倍の198ゲームもおこなわれたことになる。これでは手間もそうとうなものである。必要経費ばかりがふくれあがる。さすがに趣味のヒトのわたしにとっても、これはキビシイ数字である。

 だから、当然向こう側のユニットの9人も、主人公側と同じ経過で選ばれたものである。その場合、そちらでも敗者復活戦が開催されているから、わたしはさらに1億円の損をしている。

  三回戦では、きわめて大きな金額が動く。札束が実際に移動しているが、しかし、あんなものは見せ金である。どちらにしても三回戦の勝者がドロップアウトしてくれなければ、わたしに儲けはない。

     ◆

 というわけで、『ライアーゲーム』4巻終了までのわたしの収支は、収入は一回戦でのドロップアウトによるものだけ。敗者復活戦での2億円がマイナスされる。さらに人件費、諸費用を加えて、大幅な赤字である。大きな組織が関与していて、大きな金額が移動しているゲームなのだが、意外と収支はしょぼいのであった。しくしく。


※次回に続きます。

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Comments

目的は参加者から利益を得ることじゃないでしょうね。

金持ち連中にbetさせて、その胴元収益というところが
収益面での目的で、
娯楽という意味での目的もあるでしょうかね。

1回戦ドロップアウトしてくれれば
儲けは5000万と書いてますが
まぁ、違うでしょう。
正確には5000万の赤字です。
ゲーム開始時に2億配るので、-2億円
終了時に勝者から1億とドロップアウト5000万を回収できる。

敗者から、1億をとる・・・
無理です(笑)
無い袖はふれません。
回収の見込みのない債権はまさしく不良債権。
1円の価値もありません。
よって、5000万の赤字。

カイジなどと比べてこの作品のツメが甘いところは、
負けることに悲壮感がないことです。
負けた相手から回収するなんていう非現実的なことを作品内で書いていることもその要素の1つ。

ということで、
このゲーム参加者は競馬馬でしかない
というのが一番現実的かな、と。

Posted by: aa | June 25, 2007 12:41 AM

詰めが甘いというか、そもそもそんなところに重点を置いてないだけじゃないかな?
個人の捉え方の問題なんだろうけど…。

Posted by: なめ | June 25, 2007 12:55 AM

そうゆう事(収支・損得)を考えないで読んだ方が
マンガは楽しいよね。

Posted by: 素直くーる | June 25, 2007 01:53 AM

結局、漫画=空想上の話 なんだから世界観や金銭観も違うって話で終わりなんじゃない?

現実だったら、保険をかけて殺して保険金入手なんて方法はまず成功しないしリスクが高すぎる。
元保険外交員だから詳しいけれど、自殺させたって保険加入から三年以内は保険金は支払われないし支払額は25%ほど。他殺ならなおさら出ない。
臓器売買にしたって、幾らなんでも5000万にはならないだろう。
現実に臓器ドナーが機能し、海外では売り買いを認めている国すらあるのに、もしもそれが5000万になるなら大富豪続出している筈。

だけど、ライアーゲームの世界は現実ではないじゃん。
現実にないゲームが存在するように、現実にない借金回収の方法がある。残酷で悲惨な結末が。

>負けることに悲壮感がないことです
これは現実の常識に縛られすぎな意見だと思うな。

Posted by: unyu | June 25, 2007 08:26 PM

全く関係ないことですが、タイトル下の
♪(サバ言うなこのヤロー!)は
「鯖読むなこのヤロー!」の間違いかと思います。
さらに日本にはJASRACという噴飯物の団体がありましので、ご注意を。

Posted by: 老婆心 | June 26, 2007 12:16 PM

>老婆心さま
あれ? わたしの持ってるク○ージー○ャッツのCDからの聞き取りでは「サバ言うな」だったはず。あとさすがにJASRACも替え歌にまで文句は言ってくるまい(と思うのですが、甘いかな)。

Posted by: 漫棚通信 | June 26, 2007 04:05 PM

あれ? そうでしたっけ。
サバ言うなだったかなあ。
って検索したら――

http://www.fukuchan.ac/music/j-sengo1/gomanbushi.html

でした。
鯖を読むって言葉はあるんですよ(トホホな言訳)。
ごめんなさい。

Posted by: 老婆心 | June 26, 2007 04:20 PM

>敗者から、1億をとる・・・
 無理です(笑)
 無い袖はふれません。

という意見がありますが、事務局は生じた負債を“いかなる手段を使っても回収する”と明言しているので、マイナス収支になる事はないんじゃないですかね。
ドロップアウトする者が現れて、明確な利益が出るって事は確かでしょうけど。

それよりもツッコむべきは、3巻でカンザキは自分の場代1億を払えてねーじゃねーか、ということでしてw

Posted by: すら | June 26, 2007 08:40 PM

>3巻でカンザキは自分の場代1億を

そこがこのマンガの説明不足なところでして、じっくり計算してみてください。カンザキの手もとに9億集まってて2億をキシダにあげて残りが7億。これを残り7人に1億ずつ返しちゃったら、カンザキの手もとには何も残りませんが、それぞれに勝ち抜け賞金が1250万円ずつはいるはずなので、7人に配るのは8750万円ずつでよいのです。これでカンザキの手もとにも、賞金と合わせて1億円が残り、場代が払えます。

Posted by: 漫棚通信 | June 26, 2007 09:03 PM

>それぞれに勝ち抜け賞金が1250万円

あれ?でもこれって、敗者の1億を残った8人で分配した際の賞金ですよね?
敗者が場に1億置いて退場となっていないこのケースでは、賞金が発生しないのでは・・・。

Posted by: すら | June 27, 2007 12:10 AM

そもそもチマチマ収支とか考えてるやつが、
こんなゲームを開催しないわ。

儲かろうが、損しようがそんなことはどうでもいいだろ。
主催者は金儲けでやってるんじゃないんだから。

金持ちの余興だろ。

Posted by: ちいせーな | June 27, 2007 03:46 AM

>ちいせーな

分かってねーなー。
金持ちが麻雀やって、点棒に拘らねーか?

ギャンブルの経験皆無と見たぜ。

Posted by: カイジ | June 27, 2007 06:06 AM

たぶん、主催者は2億3億の負担なんて
どうってことないよっていうくらいの
大金持ちなんでしょうね。

運営側はお金の収支とかはどうでも良くて、
「うそつきの才能」を持った人材発掘のために
ゲームを主催してるんだと思います。
ベタなところだと日本の総理大臣とか?

Posted by: レドナ | June 27, 2007 06:36 AM

>敗者が場に1億置いて退場となっていないこのケース

敗者が持っていようがいまいが賞金は1億なのだと思います。
敗者の負債は変わらずに。
だから敗者が小切手を使うほどプレイヤー全体としては得をするのではないかと。

Posted by: TNT | June 27, 2007 10:58 AM

というか決勝あたりで主催者自らゲームに出張って回収すれば丸儲けなんじゃないですか?


・・・言っちゃヤバかったかな?

Posted by: 山 | June 29, 2007 12:34 PM

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