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May 25, 2007

マジメな本なのだけど

 八窪頼明『マンガ編集者が語るおもしろさの創り方』(2007年同友館、1800円+税、amazonbk1)について。

 著者は元編集者のかた。昭和34年に小学館に入社といいますから週刊少年サンデー創刊の年です。「週刊少年サンデー」「別冊少年サンデー」「ビッグコミック」「ビッグコミックオリジナル」の創刊に加わられたという、歴戦の強者ですね。ビッグコミックや別コミの編集長もされていました。

 実にマジメな本です。ベテラン編集者が持ち込みにきたマンガ家志望者に懇切ていねいにいろんなことを教えてくれてる感じ。教科書になることを想定して書かれたのかな。

 タイトルどおり、「おもしろさを創る」の章がほぼ半分の分量を占めていて、チカラはいってます。熟読すれば、ずいぶん役に立つことが書かれていてすばらしい、のですが、これが何とも読みにくい本でして。

 なぜ読みにくいかというと、編集と構成がねえ。強調したいことがいろいろあるのはわかるのですが、強調される文章が、「大文字で太字」「太字」「横に波線」「枠の中」「太字で枠の中」「●に続く箇条書き」「○に続く箇条書き」「◆に続く箇条書き」「★に続く箇条書き」「反転白抜き文字」「太字横線」「太字で横に波線」、といっぱいありすぎて、しかも一貫性がない。デキの悪い中学生があらゆるところに12色でマーカーをひいた教科書、みたいなものでして、いったいどこをどう強調したいのかわけわからなくなってます。

 しかも章タイトルがあって、それにつづく小見出しがあって、さらにそれに続く小見出しがあって、と思ってたら、それがどうも小見出しじゃなかったみたいだったりして、うーんわかりにくいっ。この本はマンガ家志望者に向けた、言ってみれば学習参考書みたいなものなのですから、それと同じくらいきちんと整理された構成であってほしかった。

 たとえば著者によると主人公の行動原理はこのように分類されます。

・自衛本能
・願望
・不満や欲望
・恋心
・ひとの心をのぞく

 そして、主人公に必要な条件は以下のようになります。

・読者の味方
・信じられる正義の人
・同情心に訴える
・自己犠牲
・人間として生きる
・復讐と報復
・勝者と敗者
・孤独
・強さと弱点
・祈り

 なかなかいい感じでしょ。このほかにも「二作目がつくれない人に」対するアドバイスとして、生活環境を変えるとか、設定を変える、性格を変える、なんて実用的な部分も感心しました。でも全体に構成が混乱してるので自分のアタマの中で組み立て直さなきゃなりません。いいこといっぱい書いてあるのに、もったいないったらない。惜しい。

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Comments

八窪さんには、フジオプロ時代にお世話になりました。
「少年サンデー」におられるころです。

この本は、日本マンガ塾で教科書装丁にして
使っているようです。
読んでみましたが、塾や専門学校へ来る
生徒に~ということからですと、ちょっと
初歩的印象ですね。

彼が言うところの中身が低いのではないのですが。
なにか中学生たちに向けた本という感じでした。
今の編集者は、もっとダイレクトにコメントして
くるはずです。

若者がいま盛んに描いている作品の傾向に対し、編集者として
具体的に言ってあげる必要があると思います。

まあ、テキストということで
理想論・総合的~みたいになって
しまうのは、さけられないかも
知れませんがね。

Posted by: 長谷邦夫 | May 27, 2007 07:54 PM

漫画のレクチャ本って結構あるけど、
そういや編集の技術本って今までなかったような…

ええと、すいません、ここのリンク先にそちらの記事のリンクを紹介しました。
日本は閉鎖的じゃあねえ、と言いたいばかりに、すみません
コリアニメやつあたり ソウル国際漫画アニメーションフェスティバル
http://blog.goo.ne.jp/kanime_korea/e/25643c22a0df2b838e98030f575dc079

Posted by: リンク紹介 | May 27, 2007 04:54 AM

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