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April 27, 2007

教科書にのっていない沖縄

 とか書いてますが、わたしの沖縄の歴史に関する知識も、新里堅進『まんが首里城ものがたり』やTV・映画などによるものがほとんだったりして、実はあんまりよく知りませんのです。

 比嘉慂『美童物語(みやらびものがたり)』(2007年講談社、638円+税、amazonbk1)について。

 舞台は戦時下の沖縄。日中戦争のさなかですが太平洋戦争はまだ始まっていない、のかな。美童(みやらび)とは少女、乙女の意味。主人公はノロ(世襲の女性司祭者)の家に生まれた海里カマル、高等女学校一年生13歳です。

 中編四作品が収録されています。『風葬』は沖縄に伝わる風葬と洗骨、『ジュリ馬』は沖縄のジュリ(芸妓・遊女)の話。『方言札』は、戦時下の沖縄方言がテーマで、『仁政叔父さん』は琉球古武道の使い手である叔父の物語。『方言札』のときカマルは小学生、『仁政叔父さん』では就学前で、主人公カマル一家の年代記ともなっています。

 戦争の醜さを真正面から描いた前作『カジムヌガタイ』とは違って、今回はちょっと静かな物語。戦時下の沖縄の風俗と、戦争、日本沖縄の関係、いろいろなものが複雑にからみあっていて、物語背景は重層的です。

 沖縄の風葬についても、こういうものだったんだなあとほとんど初めて知りました。かつての沖縄の死生観、というか宗教的なアプローチを加えたことで、前作とは印象が少し変化しました。絵もさらにプリミティブになってますが、それがいい感じ。著者の描くマンガは、アクション場面やひとが叫ぶシーンもとつとつとした口調、とでもいう雰囲気を持っています。一歩引いた視点から、一歩引いた語り口で。

 南米に移住した叔父さんのその後も、きっとえらいこと苦労するんだろうと予想されずいぶん気になります。カマルが登場するこのシリーズは、もっと描き続けて欲しいなあ。すごく大きな物語になる可能性を十分秘めていると考えます。

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Comments

 最初に「四四二部隊」について知ったのは、「少年」に連載された矢野徹さんの「442」でしたが(中一のときだったので1963年頃のことです。いちど角川文庫にも入りましたが、これが行方不明になってしまったため、一昨年、出たハードカバーの復刻版も買いました)、望月三起也氏の『最前線』のほうが、ちょっと遅かったのかなあ。『最前線』と関連のシリーズは史実をベースにしたフィクションだった記憶があるので、今回、断念しました。また四四二部隊は、別名「二世部隊」といわれるように、ハワイと西海岸で生まれた二世世代が中心です。それが課題の内容に合うかどうかは確認してみないといけません。
 移民の歴史に関しては、昨日、大学の図書館からドッサリと関連図書を借りてきたところです。ついでに視聴覚室にある『二世部隊』というドキュメント映画も見ようとしたのですが、満席で待っている人もたくさんいたので断念しました。

 早稲田大学の中央図書館には、週に一回くらいのペースで通っているんですが、よく考えたら現代マンガ図書館もすぐ近くですね。こんど行ってみます……。

Posted by: すがやみつる | April 28, 2007 12:41 AM

マンガには移民の話はちらっと出てくるだけです。でも沖縄からの海外移民は盛んだったと聞きしますし、望月三起也マンガでおなじみの二世部隊も沖縄出身者が多かったそうですから、このあたり課題図書としてどうでしょうか。

Posted by: 漫棚通信 | April 27, 2007 09:08 PM

 いま社会人大学生をしてるんですが、今学期、「異文化間教育論」という科目をとり、いま、移民に関する授業を受けています。移民に関連したブックレビューが課題になっているため、昨日も、関連書籍をどっさり図書館から借りてきたところですが、「美童物語」というマンガも沖縄からの移民関連で参考になりそうなので、注文してみます。課題はノンフィクションのみになっているので、このマンガのレビューを書くわけにはいかないのが残念ですが。

Posted by: すがやみつる | April 27, 2007 03:34 PM

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