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April 18, 2007

アレな絵の横綱

 いやー、雁須磨子『かよちゃんの荷物』1巻はスゴイ。

 何がスゴイかというと、著者は絵をうまく描こうという意識を捨てているノデハナイカ。というか、うまい絵を描くことを積極的に拒否しているノデハナイカ。はっきり言いましょう、マンガの絵のレベルがかつてなく上がっているこの現在、日本マンガ商業出版の中で、もっともアレな絵であると。

 わたしの中で、アレな絵のマンガ、現在ナンバーワンは柳沢きみおなのですが、ううーむ、雁須磨子はそれに対抗してるなあ。西の横綱といったところか。人物に関節はあるのやらないのやら、人物以外の小物は必要最小限しか描かれず、背景はないも同然。

 実はわたし、雁須磨子作品について二年前にも同じような感想を書いたことがあります。ただし今回は、もっと積極的にアレな絵を評価したい。

 『かよちゃんの荷物』の主人公かよちゃんは、無職30歳。仕事を辞めてごろごろしています。友人とだべりながらカバンの中身を披露したり、野放図な腹の肉をつかんだり、再就職先の店長と合コンの不毛さをグチりあったり。これがなかなかに楽しい。

 このゆるゆるの楽しさは、手書き文字がごちゃごちゃとあってまったく整理されていないアレな絵があってこそ。浦沢直樹や一条ゆかりの絵ではだめなんだよ。しかもこの絵でありながら、著者は登場人物の感情の微妙な揺れを描くことができている。ならば絵はこれでOKでしょう。洗練とは逆方向に進むマンガがあってもいいじゃないか。

 今回、新手法がひとつ。かよちゃん、頭にバッテンのバンソウコウを貼って登場しますが、これは「目にみえる痛手」だそうです(←ちゃんとそう書いてある)。流行るかな。

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