読者はだれ
マンガ誌以外の雑誌に連載されたマンガふたつ。
ひとつは、とり・みき『時事ネタ』(2007年文藝春秋、1048円+税)。『オール読物』に10年間連載されたもので、連載中のタイトルは『とり・みきの時事方眼』。
ネタはタイトルどおり「時事ネタ」であります。対象となる読者層はもちろん『オール読物』を読むようなオヤジなのですが、いつのまにやらオヤジたちも、とり・みきの手練のギャグを受け入れるまでに成長したんだなあ、と感慨しきり。
というか、マンガ読んでた世代がいつのまにやら中間小説誌を読むようなオヤジになっちゃったというのが正解でしょう。じゃ下の世代は、とり・みきを読むのか、というのが謎です。若いひとも、とり・みきや唐沢なをきなら読んでるんじゃないのか、と思う反面、あんなのもう古い、あるいは、わけわかんないしー、とか思われてたりして。ううーん。
ちなみにわたしは「向井千秋が出題した『宙がえり何度もできる無重力』の下の句」ネタで大爆笑しました。
もいっこ。古屋×乙一×兎丸『少年少女漂流記』(2007年集英社、1200円+税)。こっちは『小説すばる』に連載されたもの。古屋兎丸と乙一の合作です。
高校生を主人公にした短編連作。登場する主人公はみんなイタイ。我が身をふり返って、身を切られるようです。「自分が魔法少女だと妄想する少女」「銀河鉄道999のごとくネジの体を得た同級生を救おうとする少年」「ホームルームで青春を語りあいたい学級委員」 ああ、何やら全身が熱くてかゆいぞ。
ラストでは、それぞれの短編の主人公たちが一同に会して大団円に向かいます。だれもが経験してきた、自意識で頭がぱんぱんになっている中高生、を肯定してあげる、癒しの書。傑作と考えます。
ただ気になるのが、この作品を読むのはどんな層なのか。著者たちが読者対象にしてるのは、まさに中高生に違いない。このマンガは彼らに向けて描かれたメッセージです。しかし掲載誌が『小説すばる』だよ。連載中に中高生が読むはずもなく、単行本化されたら著者たちのファンは読むでしょうが、それってすでに中高生を卒業してる層じゃないのか。
このメッセージはいちばん読んで欲しいはずの現役中高生に届くのかどうか。そこが心配。いや、わたしが心配してもどないもならんのですけどね。
ひとつだけ。巻末の著者ふたりの対談は、まったくの蛇足。そこまでこまごまと自作解説してどうしますか。読者に親切すぎますよ。
Comments
立ち読みしました。まだどう転がるかわかんないですねー。
Posted by: 漫棚通信 | March 07, 2007 02:49 PM
COMICリュウで、「とりから往復書館」がはじまりました。
Posted by: momotarou | March 07, 2007 10:18 AM