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March 30, 2007

未読の山

 本日は本のご紹介。実はそれぞれまだ読み終わってません。読んでもない本について書くのもあれなんですが、ずいぶんとイッキ買いをしちゃったので、未読の山を眺めてますと読みおわるのは数年後になりそうな気がしたりして。でもいかにもおもしろそうなんですよ、これがみんな。

 まずはこれ。うしおそうじ『手塚治虫とボク』(2007年草思社、1800円+税)。

 うしおそうじは、特撮方面ではピープロ代表として有名ですが、マンガ家としては月刊誌時代のビッグネームのひとり。『チョウチョウ交響曲』や『朱房の小天狗』などが代表作です。きわめて緻密な絵と構成をする作家で、わたし大好きでした。今読んでもじゅうぶんおもしろいマンガです。

 著者は映像方面に行ってからは、マンガからはすっぱりと足を洗ってしまいました。うしおそうじと手塚治虫の親交は、うしおそうじのインタビューをもとに構成された鷺巣富雄(←うしおそうじの本名)『スペクトルマンvsライオン丸 うしおそうじとピープロの時代』(1999年太田出版)でも触れられていましたが、『手塚治虫とボク』はまずそこを中心に書かれています。

 うしおそうじは2004年に亡くなりましたが、この本は彼の残した文章から再構成されたものだそうです。赤本マンガ、月刊誌時代、アニメ草創期についてもたいへんくわしい。うーむ、必読本。


 二冊目はこれ。津堅信之『アニメ作家としての手塚治虫 その軌跡と本質』(2007年NTT出版、2400円+税)。

 うしおそうじの本にも、アニメ作家としての手塚治虫が登場していますが、本書はアニメ作家・手塚を本格的に評論したもの。マンガ家としての手塚治虫は言わずとしれた巨人でありますが、アニメ作家としてはどうか。

 手塚治虫は娯楽作品のプロデューサーとして、「鉄腕アトム」で週一回30分のテレビアニメを放映するという、現在も標準となっている日本アニメのフォーマットをつくりあげた人物であります。これについて、粗製濫造作品とか制作費のダンピングをおこなったとかの批判があるのですが、良くも悪くも、現在の日本アニメにおける特殊な演出の原点は手塚にあります。

 いっぽうで彼自身の演出作品は、娯楽作品、実験作品、いろいろあります。わたしの感想としては、言っちゃあれですが、あんまり感心したものではありません。カット間の動きと動きのつながりが無視されており、それこそマンガのようなアニメという印象でした。

 とまあ、毀誉褒貶あるアニメ作家としての手塚です。それに対する本格的評論。わたしはアニメにあんまりくわしくありませんが、この本は読まないわけにはいきますまい。今日もNHKBS2で虫プロ「あしたのジョー」が特集されてますが、なぜか今、手塚とアニメについて集中的に見聞きしてますねえ。


 三冊目。押山美知子『少女マンガジェンダー表象論 〈男装の少女〉の造形とアイデンティティ』(2007年採流社、2200円+税)。

 少女マンガでジェンダーで表象論であります。どれについてもよくわかんない。ああムズカシソウ、なのであります。で、読み始めるとそのとおり、ムズカシイ。

 内容は、少女マンガにおける男装の麗人を論じたもの、だと思います。きっと藤本由香里による少女マンガ論につながるものだと予測するのですが、ジェンダー/フェミニズムに知識がないから、読み進むのが遅々としてたいへん。学位論文をそのまま出版したものらしく、文章の正確さ命、読みやすさというものを廃した文章ですが、たまにはこういうのもいいか。


 次は洋書です。Scott McCloud 『Reinventing Comics』(2000年Perennial)。

 かつて邦訳され評判になった、スコット・マクラウド『マンガ学 マンガによるマンガのためのマンガ理論』(1998年美術出版社、原著「Understanding Comics」1993年)は、マンガで描かれたマンガ表現論、というたいへん刺激的な本でした。必読の名著であります。その続編である本書も、いつ邦訳されるかと待っていたのですが、その気配がない。で、小田切博『戦争はいかに「マンガ」を変えるか』で紹介されてたのをきっかけに、買っちゃいました。

 これもマンガで描かれた本です。広い意味での学習マンガ。わりとわかりやすく書いてくれてるんだろうけど、英語きっついわ。まだ最初のほうしか読んでませんが、これ、マンガ表現論の本じゃなくて、マンガに対して社会学的にアプローチした本のようです。アメリカンコミックス発展のためにとるべき戦略は何か、みたいなことが書いてあります。もちろん、日本における状況とは全然違いますから、確かに邦訳されないのもしょうがないかな。

 後半はネット上のマンガの可能性の話になってるようです。やっぱ、そこに行き着くのかー。


 最後が、東浩紀『ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2』(2007年講談社現代新書、800円+税)。

 これは有名だからわたしが紹介するまでもないですね。『動物化するポストモダン』の5年半ぶりの続編。取り上げられてる作品の多くがマンガじゃないので、ちょっときびしいっす。すでにファウスト系作家と美少女ゲームは基礎教養になってんのかな。

 さて、どれから読むべきでしょうかね。


追記(2007/3/30 21:40):あらら、すでに「伊藤剛のトカトントニズム」でも同じような紹介が。一日遅かったか。

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