あしたのジョーの時代
昨日のNHKBS2『とことん!あしたのジョー』初日をぼんやり眺めてましたが、いや4時間は長い。
藤岡重慶の丹下段平はやっぱいいっすねえ。井上伸一郎の、「ジョーの活躍期間は、15歳から19歳まで」(←これはちょっとおどろいた)、「ジョーは『まれびと』である」という指摘はおもしろかったです。ちょっとアレだったのが、オープニングのスタジオ部分。
マンガとアニメのどっちにコメントしてるのかがよくわかんないところや、コメント内容がうすいのはともかく、書誌的部分といいますか、マンガの連載期間やアニメの放映期間ぐらいはちゃんと伝えてくれよー。
マンガのほうのジョーの連載が「週刊少年マガジン」1967年末から1973年まで。虫プロ製作のアニメ『あしたのジョー』放映が1970年から1971年。アニメがマンガ連載に追いついてしまったので、対カーロス戦までで中断してしまいました。
アニメは、劇場版の『あしたのジョー』、これはかつてのテレビ版の総集編でしたが、これが劇場公開されたのが1980年の3月。続いてテレビ版『あしたのジョー2』放映が1980年10月から1981年8月まで。劇場版『ジョー』は対力石戦までで、テレビ版『ジョー2』はその続編として作られました。ですから力石の死後、対カーロス戦まではテレビ版『ジョー』と『ジョー2』でダブって制作されています。このあたり、アニメ版『エースをねらえ!』の制作経過とちょっと似てますね。
そして劇場版『あしたのジョー2』の公開が1981年7月。テレビ版の終了より先行して公開されております。前半はテレビ版の再編集ですが、後半はテレビ版とは別に描かれたものでして、ああ、ややこしいったら。というわけで、同じ出崎統監督とはいえ、アニメ版ジョーにはいろいろなバージョンがあるのであります。
年代を細かくチェックしておりますと、たとえば、こんなことも気になったりします。
アニメ版でこういうシーンがあります。まじめになった段平を見て、子どもたちが言うセリフ。「今まで毎日、血を売った金でのんだくれていたくせにさ」 これはマンガでもほぼ同じ。
梶原一騎は『男の条件』でも、売血のことを書いてますね。ただし、『ジョー』や『男の条件』が描かれた1968年には、すでに商業血液銀行による買血(売血)にさまざまな問題があることが指摘されていました。
1965年ごろまでは、手術に必要な血液は患者が高額で「買う」ものでした。輸血用血液は慢性的に不足しており、商業血液銀行で製造された輸血用血液を扱うブローカー(多くは暴力団関係)が暗躍したりしていました。しかし売血には、輸血後肝炎が高率におこる、頻回の売血が貧困層の健康をそこなう、暴力団の資金源になる、などの問題が存在します。欧米のような善意による献血事業への転換が進められており、売血の取り締まりは強化されていました。
そこで売血に代わって登場したのが「預血」という行為。タテマエとして、売るのじゃなくて預ける形をとりました。
200ml預血をすると、見舞金として商業血液銀行から500円がもらえたそうです(これでも売血に比べてずっと安い)。400mlの採血は禁じられていましたが、銀行側もそこをこっそりするものですから、一回に見舞金1000円。さらに預血証書というものがもらえますので、これをヤミで売ったりする。これがブローカーの手を経て患者の手もとに渡るわけです。
というわけで、このころ、丹下段平がやってたのはこれですね。あしたのジョーの時代とは、こういう時代でもありました。
商業血液銀行は、1969年には買血(売血)による輸血血液の供給を中止。1974年には預血制度も廃止されました。ただしその後も血液製剤を作るため、製薬会社による買血(血漿成分だけですが)が1990年まで続いていました。日本における有償の採血が禁止されたのは、なんとごく最近、2003年のことであります。
« あしたのジョーの読み方 | Main | 未読の山 »
Comments