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March 14, 2007

表記のモンダイ

 このブログでは、漫画・マンガ・まんが・劇画・コミック・コミックス・アメコミ・カートゥーン・カリカチュア・バンドデシネなど、世界じゅうのマンガ的なものすべてを総称して、カタカナで「マンガ」と表記してきました。読むひとにとってはどうでもいいことでしょうが、書くほうはけっこう気にするんですよ(←わたしだけか?)。ところが、どうも最近、これではちょっとマズイかな、と思うようになってきました。

 その理由の最大のものは、ここ数年で「manga」が欧米では、「日本マンガスタイルで描かれたコミック」の意味になっちゃったから。つまり「manga」といえば、かつて日本製コミックという意味で使われていたのが、「ジャパニーズマンガスタイル」という単にコミックのスタイルを示すように変化してきたことによります。

 ですから、「アメリカンマンガ」というようなものも出現するわけで、これは「アメリカ人がジャパニーズマンガスタイルで描いたコミック」を指します。こんな日が来ようとは、だれが想像したか。

 わたしが3年半ぐらい前からネットで文章を書き始めて以来、ずっとカタカナで「マンガ」と書いて、すべてのマンガ的なものをこの言葉で表現してきました。「マンガ」という言葉で世界じゅうのものを代表できたらいいなという、ちょっと国粋主義的な気分もあったかもしんない。

 しかし、日本マンガが世界に進出するいっぽうで、「マンガ」は世界じゅうののマンガ的なものを指す言葉になることはなく、逆に英語に取り込まれてしまい、「マンガ」といえばコミックのいちジャンルを示すにすぎなくなってしまいました。

 ですから「アメリカではマンガはどのように読まれるか」という文章があったとして、ここで言う「マンガ」とは、「アメコミを含めた一般的なマンガ的なもの」なのか、「日本マンガあるいは日本マンガスタイルのコミック」なのかの注釈が必要となります。最近ではふつう、後者として受け取られるようになってしまいました。ホントこんなニュアンスになったのはごく最近ですよ。こんな日が来ようとは。

 さあ、困っちゃったな。今後どうするか決めかねているのですが、他の文章書くひとはどうしてんのかしら。このあたり、意識的なひと、無意識なひと、いろいろです。

 「劇画」はもう歴史のかなたに去ってしまったのかな。劇画は、確かにある種のムーブメントで言葉の起源もはっきりしてます。しかも成功してこの言葉、大流行したわけですが、現在からさかのぼって考えると、水木しげるも白土三平も小島剛夕も「劇画」と称するのはどうだったでしょうか。みんな紙芝居出身者だし、関西系貸本とは別の出自ですから、ちょっと違うんじゃないかなあ。

 いずれにしても、今、劇画という言葉をつかうひとは、よっぽど意識して使うひとか、逆にまったくなーんにも考えずに使うひと、のどっちか。ただしエロ劇画は別で、美少女系エロマンガと区別するために、まだジャンルを示す言葉として残ってるようですね。

 漢字の「漫画」は根強いです。多くの批評文が、「一般的なマンガ的なもの」として「漫画」を使ってるみたい。「マンガ」とカタカナで表現するときは、「ジャパニーズマンガスタイル」であるか、そこまで世界を意識してなくても、手塚以後の戦後マンガ、とか、ストーリーを重視したマンガ、の意味で使ってることが多いような(気がします)。

 ひらがなの「まんが」はどうかなあ。字面が柔らかくていい感じなので今後も使用されるでしょうが、これ、という意味は与えづらいかしら。ま、このあたり流行によりますが。

 石ノ森章太郎が提唱した「萬画」は定着しませんでしたね。梅原克文の「サイファイ」みたいなものか。

 「コミック」は、小学館系があいかわらず使ってます。「小学館コミック大賞」がありますし。オヤジ向け週刊誌も、無意識でしょうけど、コミックって使ってるよなあ。ココログの分類でも「アニメ・コミック」です。

 だいたい出版や書店の用語として、「コミック」というのがすでに存在するようですし、日本で「コミックス」と言えば主に「マンガ単行本」を意味します。「今月のコミックス」とかね。

 ただ「漫画」をあえて使用せず日本マンガを「コミック」と呼ぶ、という選択は、かつてはそれなりに意味があったかもしれませんが、今はどうなんだろ。わたしには、ひと回りしてしまって、かえって時代遅れみたいに感じられてしまうのですねー。

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Comments

マット・マドン「コミック 文体練習(http://www.artbabe.com/exercises/)」のMANGAのところには無意味なパンチラが描かれていて、こんなのが日本漫画のスタイルとして認識されていることにショックを受けましたが、「アメリカンマンガ」というのはそういう感じなんでしょうか?

映画評論の蓮實重彦は、バンドデシネの訳語としてなのか、劇画という言葉を使いますが、みんなもう貸本劇画のことは置いといて、劇画に統一するわけにはいかないんでしょうかね。

Posted by: ブログ漫画館 | March 14, 2007 08:24 PM

「コミック」は古いかぁ…困りましたね。今度の本は「マンガ」を外して「コミック版」としようか、なんて話してたところ。
「まんが」にしたり「マンガ」にしたり…出版社も悩んでるようです(私の場合、必須なので)。

Posted by: manga-do | March 15, 2007 08:17 AM

>パンチラ
日本マンガといえば、コメカミの汗などの漫符の多用、大きな目、さらにエロとバイオレンスということになってるみたいですから、まあ、パンチラ程度はしょうがないのじゃないかと。でも最大の特徴は、テーマやストーリーの多様さですよね。

>「コミック」は古い
これはあくまでわたしの脳内妄想ですのでスミマセン。商業的に最も適した言葉を選ぼうとするのは当然で、出版社の裁量だと思います。

Posted by: 漫棚通信 | March 15, 2007 04:49 PM

私の場合、
マンガ全般「マンガ/コミックス(文脈で使い分け)」
日本マンガ「マンガ」
アメリカンコミックス「アメリカンコミックス」
絵のスタイル「マンガスタイル」
て感じですかね。
「単行本」の意味の「コミックス」はややこしくなるので使いません、「単行本」て書けばいいんだし。
ただ、この点でおかしいのはどうやらアメリカで「Tankobon」の語が使われだしていることで、最初に見つけたのは
http://www.imageandnarrative.be/narratology/chriscouch.htm
ですが、最近はたまにPublisher's Weeklyの記事で見かけたりします。

Posted by: boxman | March 15, 2007 05:23 PM

ほんとだー、Tankobonが普通に見出しに使われてる。TPBとは違うものだという認識なんですね。
こちらアメリカWikipedia→http://en.wikipedia.org/wiki/Tank%C5%8Dbon
あとアメリカアマゾンで検索してみるとTankobonとして発売されてる本がけっこうあるじゃないですか。驚きました。

Posted by: 漫棚通信 | March 15, 2007 11:31 PM

>TPBとは違うものだという認識
使い方を見てるとあのダイジェストだかトラベラーだかの小さいサイズのPBのことなのかなとも思いますが、たぶんそれほど厳密なものでもなく、日本での
「横文字のほうがオシャレっぽい」
単行本→コミックス
同様
「Japanese Manga Cool!」
Paperback→Tankobon
程度のモンではないかと。別に出版フォーマットは変わってないし。

Posted by: boxman | March 16, 2007 12:08 AM

ちょっとズレるんですが、上記の解釈を
「アニメ」という言い方のアメリカ人理解、
なんかもそうだということにすれば、
「アニメ」と「アニメーション」は違う
という区別なんかにも流用できそうです。


「最近のディズニーはアニメ的アニメーション化の
傾向が見られてよろしくない云々」(笑)とか
ちょっと「アニメ」を否定的・マイナス評価に
使って貶める…。
そんなヤツが居たりして。

Posted by: 長谷邦夫 | March 16, 2007 01:42 AM

アメリカWikipediaによりますと、「マンガ」も「アニメ」も、日本国内とそれ以外では意味が違うと解説してありまして、今はこの説明がいちばん的確かもしれません。

Posted by: 漫棚通信 | March 16, 2007 05:57 PM

Wikipedia
[シャンソン(chanson)は、フランス語で歌の意味である。したがって、少なくとも現代のフランス語圏においては、シャンソンは歌全般を意味し、特定ジャンルの楽曲を指すものではない。他言語圏ではフランス語で歌われる曲という意味で使われることが多く、この場合も何らかの音楽的特徴を持つものではない。なおイタリア音楽のカンツォーネ(Canzone)とは元々の語源は同じである。]

Posted by: しんご | March 17, 2007 05:50 PM

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