タンタンのコンゴ探検
エルジェのタンタンの冒険旅行シリーズ、福音館書店版の最新刊、『タンタンのコンゴ探検』(2007年福音館書店、1600円+税)が発売されてます。
いやー、感慨深いなあ。この作品が日本語で読める日がくるとは。なんせ日本でも、上の書影と同じデザインのポスターですら、売られるときはこっそりとだったんですから。
この作品については以前から何回か書いてきました。
○このページの「タンタンはコンゴで何をしたのか」
○日本におけるタンタンの現在(その1)
○日本におけるタンタンの現在(その2)
エルジェのタンタンシリーズは、もともとモノクロで雑誌連載されたものが、そのままモノクロで単行本化されていたのですが、戦後の1946年から、それまで出版されていたものもカラーで描き直され刊行され始めました。これが現在ふつうに流通しているタンタンです。
このカラー版の第一作が『タンタンのコンゴ探検』のフランス語版でした。しかしタンタンシリーズのうちこの作品だけは、植民地主義という批判を受け、英語版は出版されないまま(スペイン語版やドイツ語版はふつうに存在します)。わたしはその他にも、黒人のマンガ的表現(とくにぶ厚い唇)が問題になったと考えておりますが。
というわけで、英語でコンゴのタンタンといえば、ちょっとつたない絵のモノクロ版を英訳した『The Adventures of Tintin in the Congo』(1991年Casterman)しかありませんでした。もちろん子どもが楽しく読むようなものではなく、コレクターズアイテムです。
そういう状況のなか2005年、ついに、という感じでイギリスのEgmont社よりカラー版『Tintin in the Congo』の英語版が発売されました。なんとフランス語版が発売されてから、59年後のことであります。長かったね。
しかし、アメリカではまだまだコンゴのタンタンはおおっぴらに歩けません。
アメリカでも、このイギリスのエグモント社の『コンゴ』を買うことは可能なのですが、アメリカアマゾンではこの本の取り扱いをしておらず、マーケットプレイスにおまかせの形。エグモント社の『コンゴ』以外のタンタンシリーズは、もちろんアメリカアマゾンでもあたりまえに買えます。『コンゴ』だけが特別扱いです。
エグモント社版『Tintin in the Congo』のカスタマー・レビューを読んでみると、故意となのかどうなのか、モノクロ版『コンゴ』と、エグモント社版『コンゴ』の評をごちゃごちゃに並べています。あるひとは、エグモント社版はえらい長いこと"out of stock"が続いとるやないかー、と怒ってますが、アメリカアマゾンはまったく取り扱うつもりがないみたいです。
実はこのエグモント社版『コンゴ』、アメリカアマゾンではついこの間まで、"book"じゃなくてなぜか"home & garden"に分類されてまして、通常のブックサーチではヒットしなかったんですよ。
もうひとつのアメリカ書店の大手、バーンズアンドノーブルではどうでしょうか。こっちでもエグモント社版『コンゴ』は取り扱われていません。
この調子だと、アメリカでタンタンシリーズを発行しているHachetteグループのLittle, Brown Books for Young Readersが、『コンゴ』を出版するのはまだまだ先になりそうですね。
このように今も複雑な問題をかかえてる『タンタンのコンゴ探検』。やっと日本語で読めることになりました。みなさま、ココロしてお読みください。
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