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February 16, 2007

若いマンガ

 よしもとばなな「なんくるない」のカバーイラストで有名になったタイ人マンガ家、ウィスット・ポンニミットの本も、日本ですでに四冊刊行されてます。知らなかったなあ。「everybodyeverything」「タムくんとイープン」「マーマー」「マムアンとマナオ」 最後のはマンガじゃなくて絵本らしいです。このうち、書店で見かけたこれを購入。

・ウィスット・ポンニミット「タムくんとイープン」(2006年新潮社、1300円+税)

 タムくんとは著者ウィスット・ポンニミットの愛称、イープンは日本のことですから、「私と日本」という真正面からのタイトルですね。カバーイラストのカワイイ女の子は、人気のキャラクター「マムアンちゃん」です。マムアン=マンゴーで、彼女の髪形からのネーミングだそうです。

 短編が八つ。そのうち四作品は、ああなつかしい、風刺マンガであります。

 マンガの基本と考えられてきた風刺マンガですが、現在日本では、新聞や週刊誌のヒトコマ・四コママンガとしてわずかに生き残っているだけ。あえて言うなら、久米田康治「さよなら絶望先生」がそうとうにひねくれた風刺マンガの新しい形か。

 そこへ「タムくんとイープン」の諸作品。「川」の主人公はタイから日本に来たばかりの著者自身。日本のあまりの人の多さとスピードに酔ってしまうお話。「鳥」は仮面をつけて生活する日本人の話。「本屋さん」はマニュアルどおりにしか行動できない日本人、「かわいい」はカワイーばかりを連発する日本人の話です。いずれもレトリックをそのまんま絵にしたもの。

 このストレート、直球ど真ん中を見よ。若い、若いなあ。著者は30歳でそんなに若くないですが、表現が若い。そして正面からの社会風刺という態度も若い。まるでかつての虫プロ「COM」の投稿マンガを読んでるような気分になります。

 こういうマンガを読みますと、作品のデキとは別に、日本のマンガやその読者である自分が、いかにスレてしまっているか思い知りますね。日本マンガ、老いたり。マンガは若くていいじゃないか、せまいニッチをめざしたり、絵の完成度ばかり追っててどうしますか。

 その他には、ボーイミーツガールのラブストーリーがひとつ、ファンタジーがふたつ、あとがきマンガがひとつ。完成度はけっして高くありませんが、いずれも視点が、いつも読んでる日本マンガとちょっと違う。

 その落差が新鮮で。著者の他の本も読んでみることにします。

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Comments

これは夏目さんが以前触れていたひとかな?
どうも絵本は以外なものが翻訳されているらしく、私も先日発見して驚いたのですが、以前講談社から『空想の大きさ』という単行本が出ていたペイント系アーティスト、ジョン・J・ミュースの絵本が何冊か翻訳されています。
http://www.ehonnavi.net/author.asp?n=4713
すでにご存知だったら申し訳ありません。

Posted by: boxman | February 19, 2007 06:56 PM

ウィスット・ポンニミット、夏目氏はヘタウマと表現してましたね。ジョン・J・ミュースについては、すみません、初めて名を知りました。

Posted by: 漫棚通信 | February 19, 2007 09:37 PM

>ジョン・J・ミュースについては、すみません、初めて名を知りました。

意外だな、というかたぶん名前覚えてないだけで作品はご覧になってると思います。
なにしろ『空想の大きさ』という作品は向こうで出た本の翻訳ではなく、アフタヌーンに連載してた日本オリジナル作品なので……と思って書影を探したら見つかりませんでした。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%95%E3%82%BF%E3%83%8C%E3%83%BC%E3%83%B3
で見ると一九九四年からの連載ですね。

Posted by: boxman | February 19, 2007 10:20 PM

うーむ、やっぱ思い出せません。というか、年表見てみると1990年代半ばのアフタヌーン、あんまり読んでなかったようです。

Posted by: 漫棚通信 | February 19, 2007 11:00 PM

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