かわいくないカワイイ「バカ姉弟」
奇妙なマンガ、安達哲「バカ姉弟」5巻が発売されました。これで完結、なのかな。この巻では成長したその後のバカ姉弟も描かれてます。
双子(←とは知らなかった)のバカ姉弟は3歳で幼稚園児。姉弟の生活は謎に満ちています。彼らは親から完全に放任されていて、ほとんどふたりだけで生活してるのですが、実は大金持ちらしい。そして奇妙な才能によって地域社会でサバイバルしている。その才能は何かと言いますと、「かわいがられること」であります。
ご近所の人たちは、彼ら姉弟がかわいくてかわいくてたまらない。さわりたい、なでたい、食事をさせたい、かまいたい。じじばばだけじゃなくて若い連中も世話をやきたくてたまりません。
ふたりともビジュアル的にはずいぶん年少に見えます。ほぼ二等身で、手足は極端に細く短い。臼井儀人「クレヨンしんちゃん」も、いがらみきお「3歳児くん」も、子どもをかわいく描こうとすると、こんな感じのプロポーションになりますが、バカ姉弟は大きなぽっこりしたおなかが特徴。そうそう、腹筋の弱い子どもはあんなカエルみたいなおなかしてるんだ。
そしてその顔は客観的に見てカワイイかというとこれがまた微妙です。目鼻口は頭の下方三分の一に集中しています。とくに口は思いっきり下に描かれ、両ほっぺたに隠れています。おねい(♀)は、限りなく額が広くハゲ頭に近い。きっと髪の毛も薄いのでしょう。
眉毛はほとんどありません。彼らはつねにうつむき加減で、目だけで上方にいるおとなを見つめています。おねいの目は大きく目尻の上がったつり目。瞳は大きく黒目がち。黒目には光が描かれないので表情が読めず、ブキミと言ってもいいくらい。
このふたりの顔は、まさに背の高いオトナが上方から見おろした子どものリアルな顔です。何を考えてるのかわからないのも、いかにも子ども。彼らは、通常の日本のカワイイ記号を持っていません。
でも、物陰からじっと大人たちを観察しているバカ姉弟。手をつないで歩いてるバカ姉弟。ヘンな顔でスネてるバカ姉弟。このバカ姉弟がかわいいっ。その言動だけでなく、たたずまいもなぜかかわいく見えてしまう。子どもだから? いえ、これが作品のちからというものでしょう。











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