「竹光侍」の絵
ひとりで描くとドライに行っちゃいそうになる松本大洋が、原作つきで人間関係や感情をしっとり描いておりますところの、松本大洋/永福一成「竹光侍」1巻。これはすごい。何がすごいといって、やっぱ絵がすごい。
手のアップだけでヒトコマもたせる画力はあいかわらずです。しかも今回、時代劇であります。
昔の日本人の着物がちゃんとしてるのが心地よい。てなこと書くのも、最近の時代劇の衣装がね、ちょっとあまりといえばあまりだから。時代劇マンガ誌のなかでもオヤジ作家の作品は比較的安心できるのですが、一部のかた、あーたハカマが袴に見えんし、おまえらみんな七五三かっ、というような着付けも見かけます。さらにはもはや着物とは考えられないモノを着てるのもあって、これは日本じゃないどこか架空の国のファンタジーだよ。
しかしそこはそれ、さすが松本大洋。袴を腰ではいております。登場人物はなで肩で、バランスの崩れた顔や手足をしてても、ちゃんと江戸人になっている。通常のイラストと違うのは、とんでもないアングルからの絵をかるがると描いてしまうところ。これはマンガならでは。
今回、時代劇らしく花鳥風月や家屋を描き分けてます。アクションも、23ページ、刀を振り下ろすとき頬がぷっとふくれる描写を見よ。いいなあ。
ただひとつ、刀の握り方がちょっと、らしくないところがあって、これは惜しかった。
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