普通の人の普通の人生「兄帰る」
ビッグコミックに連載されてた、近藤ようこ「兄帰る」が単行本化されてます。
オープニングはこんなふう。実家の寝具店で働いている主人公・真樹子に、元婚約者・功一の家族から連絡がはいります。三年前、真樹子との結婚を目前に功一は失踪。家族とも連絡がとれなくなっていましたが、東京で交通事故にあい死亡したと。なぜ功一が失踪したのか真樹子には納得がいかず、功一の遺品を手がかりに、真樹子と功一の残された家族(妹・弟・母)が協力して、失踪後の功一の足跡をたどることになります。
ミステリふうの始まりにわくわく。功一の遺体の顔が事故で腫れてて識別できなかった、なんてひとことがありますと、おお、「顔のない死体」か、なんて考えちゃいますが、近藤ようこですからそんな展開にはなりません。
功一が出会ったひとびとを訪ねて話を聞き、功一の心の中が次第に明らかに。その旅をとおして、主人公や功一の家族は自分の人生や心の中を見つめ直すことになります。劇的な展開があるわけではありませんが、きちんとおもしろい。
近藤ようこのマンガを読んでていつもうまいなあと思うのは、小さなエピソードでもって主要登場人物だけじゃなくてちょっとした脇役の人生まで意識させられるところ。彼女のマンガには普通の人しか出てきませんが、彼らの普通の人生はそれぞれにやっぱり重いのです。
最終章のタイトルは「許す日」。ラストは心が暖かくなります。
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Comments
ホームドラマでもあり、ハッピーエンディングにまとまってるしミステリふうプロットで読み進めやすい。さらには入浴やヌードシーンもあり(著者の手になるとエロくはなりませんが)。いろいろがんばってる作品だと思います。
Posted by: 漫棚通信 | November 07, 2006 12:13 PM
ぼくも『兄帰る』は楽しみました。
近藤ようこの「現代モノ」の久々のヒットだと思いました。
失踪者の設定で一瞬『アンダーカレント』を思い出しましたが、
「わからなさ」がつのるのではなく、功一の失踪の軌跡を追うことで、
家族が再生するというシンプルで明るい第一印象をもちました。
近藤のこういう作品がもっと読みたい。
Posted by: 紙屋研究所 | November 06, 2006 10:43 PM