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November 15, 2006

評伝「異能の画家 小松崎茂」

 わたしは絵物語を雑誌で読んでいた世代ではありませんので、小松崎茂作品のうち、きちんと読んだ作品といえば「大平原児」ぐらいです。むしろ、雑誌口絵の未来都市や、イマイのプラモデル「サンダーバード」の箱絵のほうがおなじみ。

 前回エントリのコメント欄に小松崎茂「地球SOS」がなぜ連載中断したかを書きこむため、小松崎茂の評伝、根本圭助「異能の画家 小松崎茂」(光人社1993年、新装版1998年、文庫版2000年)をぱらぱらと読み直してて気づいたエピソードなど。根本圭助は小松崎茂の弟子のイラストレーターで、最近の小松崎画集の編集を多くされてます。

■小松崎茂も戦後すぐ、紙芝居を描いてみたことがありました。ヒットラーの亡霊が出てくるもの。「かなりの自信作だったが、内容を検討する前にGHQ側では、ヒットラーはだめ! ということで、あっさり没になった」

■海野十三がなくなる少し前、1949年の初めごろ。小松崎茂が世田谷の海野十三邸を訪れたときの海野のことば。「文と絵を書けるというのは特殊な才能で、これからは君と山川惣治の時代がくるなあ」 もひとつ、「大阪に手塚という若い漫画家がいるが、弟子にしたい」

 手塚治虫は自分の作品に「海野十四」というキャラクターを登場させるくらい海野十三のファンでしたから、この話を知ってたらどれほど喜んだか。海野十三もかつてマンガを描いていたことがあるひとでした。

■1954年元旦。手塚治虫からの年賀電報来たる。「コトシハ コマツザキイヤー ワタクシモセンセイヲオイカケテ イイトシニスルヨウハリキッテイマス」

■根本圭助によりますと、雑誌の絵物語時代にとどめを刺したのは、1957年1月の「赤胴鈴之助」ラジオ放送開始であったと。もちろん象徴的に語っているのですが、1955年ごろからマンガが絵物語を駆逐しつつありました。

■1959年から1960年にかけて、水木しげるが編集・執筆していた「少年戦記」という貸本マンガ短編集のシリーズがありました。この表紙を描いていたのが小松崎茂。水木しげるも画稿をもらうために、毎月小松崎邸を訪れていました。1960年ごろから貸本ブームが衰退して、「水木は雑誌への転進を決意。茂に少年マガジンへ紹介してくれるように頼みこんだ」 少年マガジンは1959年創刊。水木しげるの講談社デビューは1965年です。

■小松崎茂が円谷英二に請われて東宝特撮映画に協力していたことは、そっち系のかたならご存じでしょう。メカデザイン、キャラクターデザイン、衣装デザイン、ストーリーボードなどを担当。別の本ですが「小松崎茂 絵物語グラフィティ」(人類文化社/桜桃書房2000年)では、「地球防衛軍」(1957年)、「宇宙大戦争」(1959年)、「ガス人間第一号」(1960年)、「海底軍艦」(1963年)などのデザイン画が見られて、感涙ものです。轟天号の断面図なんかかっこいいぞー。

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Comments

北九州市で行われた「ぼくらの小松崎茂展」に8月に行きました。私は世代的にずっと後のほうになるのですが、原画の素晴らしさに圧倒されました。プラモのパッケージ、サンダーバードや戦車、軍艦、オリジナルの未来の乗り物・・・間違っているかもしれませんが、メカのデザイン性の高さは日本のレオナルド・ダ・ビンチだなーと思います。日本のみんなに影響を与えたという点では、手塚先生と共に評価されてもいいと思います。本当に轟天号もすばらしく、「ミニチュアを作る人が形がわからないと困るだろう。」といってメイン・メカにはほとんど四面図をつけたそうです。小松崎先生の頭の中は3Dだったのでしょう。もし、映画をまかされて製作されたら、どんな物語を見ることができただろう。
展覧会は盛況でした。作品の多さ、完成度など見て、後に続く人などいない作家だということを改めて思いました。
写真を拝見すると、正子夫人、奥様が大変美しい方だったです。

Posted by: not a second time | November 16, 2006 06:23 PM

口絵・プラモデルの箱・映画のデザインなど、絵物語以外の仕事も多く長く活躍されたかたなので、世代をこえてそれぞれにファンがいるのですね。実は知らなかったのですが、2002年に双葉社から「地球SOS」の完全復刻が出版されてました。

Posted by: 漫棚通信 | November 16, 2006 10:03 PM

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