動物園という思想「ZOOKEEPER」
近代動物園は1828年ロンドン動物学協会が設立したロンドン動物園に始まるそうです。日本では上野動物園の開設が1868年。生物に対する自然科学的研究、大衆への公開による娯楽の提供、そして教育と啓蒙。ただし、本来動物たちが住む自然環境と大きく違う気候のもとでオリの中で動物を飼うという行為は、動物愛護の精神とはどうしても矛盾しているわけで、これまでも常に議論されてきたところです。
考え出すときりがない問題で、ヒトが動物とどのようにつきあうべきか、さらに生とは、死とは何か、最近でいうなら、坂東真砂子問題までも。ああたいへん。
とまあ、動物園と動物をめぐるいろんなことを考えてしまう作品が、青木幸子「ZOOKEEPER」1巻です。
主人公・楠野香也(♀)は、動物園の新米飼育係。温度を視覚化することができるという、赤外線カメラみたいな特殊能力を持っています。
作品では、動物たちのウンチクが語られ、何らかの問題が起き、主人公の特殊能力で解決される、よくできたストーリー。ところがそのバックに描かれる現実が、重い。
パンダと野良犬、「保護動物」と「害獣」を分けるのは何なのか。動物を品種改良するヒトの責任は。動物園では生き餌としてモルモットを爬虫類に与えますが、そのモルモットを殺すのはだれの仕事か。密輸で摘発されたり、捨てられたりしたペットの爬虫類の末路は。
娯楽としてよくできているだけでなく、動物園をとおして読者に対して宗教的哲学的な問いかけまでがなされている、すぐれた作品だと思います。
Comments
「旭霧雪」内に「ZOO KEEPER用語辞典」作りました。
よろしければご覧になってください。
Posted by: 旭霧雪 | October 24, 2006 05:23 PM
おお、確かに異能力者+特殊職業モノだから、もやしもんと一緒ですね。こういうジャンルがはやりつつあるのか?
Posted by: 漫棚通信 | October 04, 2006 05:31 PM
「もやしもん」目当てで買い始めたイブニング誌。
おや、ちょっと面白いぞと目を留めたのが上掲の「ZOOKEEPER」。
「ドリトル先生物語」を読んで育った私にとって
「籠の中の鳥」の悲哀を感じ得る主人公は慣れ親しんだ造形です。
温度変化で心理や体調を読むというのは「動物とお話しできる」に近いのかも。
「米吐き娘、もやしもん、ZOOKEEPER」等々、主人公が異能者である作品の多いイブニング。
いずれも社会的にはマイナーな人間(=世間に能力を隠す)だと描かれている為「主人公が立ってない」と言われます。
来週の火曜日が待ち遠しいデス。
Posted by: トロ~ロ | October 04, 2006 07:38 AM