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September 05, 2006

ロボット三等兵が読みたい

 前谷惟光の描くロボットはいかにもブリキ製。ありゃ何のエネルギーで動いてるんでしょうね。原子力のはずはないし、蒸気にしてはコンパクト。もしかしてゼンマイ? そんなはずはなくて、ちゃんと内部に真空管持ってますし、頭にアンテナがついていて電波を受信できるみたいですので、電気方面のハイテクでしょうか。

 ロボットとトッピ博士は息の長いコンビで、1960年代末ごろまであちこちの月刊誌で見かけてました。登場人物もトニー谷やらローレルとハーディやらのいつものメンバー。秋本治「こち亀」に前谷ロボットにオマージュをこめたロボットが登場したこともありましたね。

 そのなかでも「ロボット三等兵」は前谷惟光の代表作です。お国のために何とか役立ちたいロボットが、陸軍に入隊して三等兵になるお話。

 1952年から描き始められ、貸本単行本として寿書房から1955年から1957年にかけて出版。その後「少年クラブ」1958年6月号から1962年12月号まで連載。雑誌連載のきっかけは、ある少年読者の推薦によるものだったそうです。

 1963年講談社から全六巻の単行本が発売。少年クラブは1962年12月号が休刊号ですから、少年クラブ末期を飾った人気連載でした。少年クラブの最後のころの連載作品といえば、山根赤鬼「よたろうくん」(のち「ぼくら」に移籍)とか手塚治虫「ふしぎな少年」ですね。

 ロボット三等兵がのらくろと大きく異なるのは、彼が所属するのが日本陸軍であるところです。前谷惟光は北中国戦線からビルマ戦線にまわされ、まさに死線をさまよった経験の持ち主。登場人物が怒ってどなります。

「こんな作戦をたてたのはどこのどいつだ」

 これは著者自身の叫びでしょう。

 この作品、学習マンガの側面もありまして、実は戦史のお勉強にもなる。ハッキリ言いまして、わたし、まずこのマンガで第二次大戦史の基本的知識を得ましたね。かつてマンガにはこういう効能もあったわけです。銀輪部隊と呼ばれてマレー半島を走った日本の自転車部隊なんて、このマンガで初めて知りました。

 水木しげるの戦記物でもなく、「0戦はやと」「紫電改のタカ」などの戦記物でもない、戦記マンガ。ロボット三等兵を忘れちゃいけません。

 わたしは、ロボット三等兵が好きで好きでたまらない。

「すごいのがきたね」「ちょいとこんなもんです」「おこりだしたよ」「そうおこるなよ」

など、のんびりしたツッコミ。国境線を30センチとったとらないで始まる戦争のばかばかしさ。悲惨な戦争も笑い飛ばすエネルギー。今もじゅうぶん再読に耐えます。

 ところが、わたしが持ってるのは虫コミックス版(1968年~)全五巻のうち2冊だけ。旧講談社文庫版(1976年~)全三巻のうち1冊だけ。アース出版局版(1995年)全三巻全部。すべて発売当時買ったもので、なんでこんな買い方になったかというと、今ではさっぱりわかりません。きっと書店で目についたものだけ買ってたからですね。

 アース出版局版は貸本単行本の再編集。講談社文庫版は少年クラブ連載に準拠。そして虫コミックス版はかなり改稿されてるらしいので、どうやらバージョンが三つはあるらしい。

 で、このロボット三等兵をきちんと読んでみたいのですが、現在、古書価格がやたらと高価になってますのでたいへんつらい。復刻ブームですし名作だし、どっかで復刻してくんないかなあ。

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Comments

 生まれて初めて買ってもらったマンガの単行本が、『ロボット三等兵』と『ごくらく紳士』の2冊セットでした。幼稚園のときなので、1960年か61年くらいですね。

 国鉄(当時)身延線富士宮駅構内の売店に、セロファンに包まれ、リボンがたすきにかけられ、「おみやげ」という小さなシールが貼られた状態で、吊されて売られていたものです。出版社名などは記憶にありませんが、時期的には寿出版のものでしょうかね。

 このあたりでマンガに目覚め、以後、幼児雑誌ではなく、マンガ雑誌を買ってもらうようになりました。

Posted by: すがやみつる | September 06, 2006 02:45 AM

あれ、すがや先生、1950年生まれじゃなかったでしょうか。計算間違えてらっしゃいませんか?

Posted by: 漫棚通信 | September 06, 2006 05:25 PM

 昭和30~31年と混乱しました。1950~51年ですね(^_^;)。

 それから駅で買ってもらったのは『ごくらく紳士』ではなく『火星の八ちゃん』だったかもしれません。『ごくらく紳士』の本もあったのは確かなんですが。

Posted by: すがやみつる | September 07, 2006 12:49 AM

前谷惟光のお父さんは、「子供の科学」の原田三夫ですね。

Posted by: momotarou | September 07, 2006 05:23 PM

父君は「子供の科学」や「少年科学」の編集者で、戦後帰国した前谷惟光を科学雑誌の挿絵画家にしようとしてたそうです。「子供の科学」ってよく知らないのですが、今も刊行が続いてるそうですね。

Posted by: 漫棚通信 | September 07, 2006 10:25 PM

こんにちは。

>「子供の科学」ってよく知らないのですが、今も刊行が続いてるそうですね。

・・・は、ちょっと失礼でしょう。Amazonで引けば、すぐ確認できるし、おとなになっても、図書館の児童室でときどきページをめくってみるひともいます。

ロボット三等兵について。わたしたちの子供のころは、男の子の話題としては、旧日本軍の兵器がどれだけお粗末だったか、自衛隊の武器が米軍のお古であること、アメリカの兵器がどれだけ優秀であるか、などが主でした。おとなも子供も日本のことを自嘲的に話していた。(「鉄人28号」で、自衛隊の陣地が敵の恐竜ロボットにやられると、あちゃー中古を買うからだと隊員がぼやく。)

少年週刊誌で、戦記ブームがおこるころから、風向きがかわってきました。ゼロ戦が礼賛されるようになりました。

「ロボット三等兵」は月刊誌の時代で、池田内閣の所得倍増計画の前、「自嘲時代」の最後期でしょう。

いまの子供たちは、マクドナルドで何を食べるとうまい、というようなことを話題にしています。トヨタのハイブリッド車のことを情熱的に話すよーなガキはクスリにしたくもいません。

前谷唯光さんは「ロボット三等兵」がダントツにオリジナリティがあり、ほかの作品は古い映画のギャグのパクリで月並みのように思いますが。

Posted by: しんご | September 08, 2006 01:41 AM

「0戦太郎」が1961年、「大空のちかい」が1962年、「紫電界のタカ」「0戦はやと」が1963年。たしかにロボット三等兵がずいぶん先行してますね。わたしなどは戦記ブーム以後にゼロ戦スゴイ、を刷り込まれてましたから、かえってロボット三等兵に惹かれたのかも知れません。
よく知らないというのは、読んだことないという意味でした。失礼しました。

Posted by: 漫棚通信 | September 08, 2006 02:33 PM

 こんにちわ。コメントは、久しぶりです。
 虫コミックスを話題にしていらしたので、思わずトラバしてしまいました。が、こちらの内容の「ロボット三等兵」には、あまり関係ない内容で、申し訳ありません。
 いつも楽しく読ませていただいています。取り急ぎ、トラバのご挨拶のみにて、失礼します。

Posted by: トミー。猫とマンガとゴルフ~の管理人 | September 15, 2006 01:15 PM

あれ? トラバ……来てないみたいですけど。

Posted by: 漫棚通信 | September 15, 2006 08:19 PM

 すみません。15日に2度、トラバしてみたのですが、来ていませんでした。もう一度、ただ今やってみましたが、付いていませんね。私のやり方がおかしいのでしょう。
 ご迷惑おかけして、申しわけありません。トラバしようとしていたのは、拙ブログ9月15日付けの、「石森 章太郎(当時)二級天使」 という題名の文章です。
 くれぐれも、お詫び申し上げます。

Posted by: トミー。猫とマンガとゴルフ~の管理人 | September 19, 2006 05:09 PM

はじめまして。
私は80年代生まれですけどロボット三等兵が大好
きです。
たまたま古本屋さんで講談社版の文庫3冊を手に入
れて読んだのが始めです。ペップ出版版、そして
マンガショップで復刻された前谷先生のシリーズ
を読みました。ロボット君の出生&出征のいき
きさつが、貸本版ではちょっと違うのには驚きま
した。
ロボット三等兵に出てくる動物たちも大好きで
す。インパール作戦で「ジンギスカン方式」で家
畜を村々から奪い、それに荷物を載せて、食料が
なくなったら食べる。実際にそんな作戦だったそ
うですが、牛や馬が「散々こき使いやがって」
といいながら逃げていく。そんなところが好きです。
虫プロ版も読みたいけど、高くて手が出ません。

Posted by: umiz | August 02, 2008 05:29 PM

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