受賞作を買いますか
週末はずっと、大森望/豊崎由美「文学賞メッタ斬り!リターンズ」を読んでけらけらと。芥川賞、直木賞などの文学賞の権威を(選んだほうも選ばれたほうも)嗤うという本。言っちゃアレですが悪口は楽しいなあ。ネタにされたかたは、むちゃ怒ってるでしょうけど。
マンガの賞には、まだまだそれほどの権威がない。だもんで、「メッタ斬り」みたいに権威にケンカ売るような企画は立てられませんね。
小説などの文芸で賞が重視されるのは、それが商売につながるから。芥川賞、直木賞だけじゃなくて、新人公募の賞でも乱歩賞などは新聞記事になりますし売れるみたい。
映画でも、各製作会社がアカデミー賞をめざして工作するのは、それが大きな商売になるからでしょ。アメリカで公開が終わってても、アカデミー賞受賞の看板があるとないでは、海外での収益が相当ちがうと聞いたことがあります。
ところがテレビドラマあたりになると、少なくとも日本では賞を取ったときには放映が終わってるのがほとんどだから、あんまり商売としては意味がないのじゃないかな。視聴者も、受賞したから見てみようか、なんて行動はしないでしょ。
無料に近い(と感じさせる)テレビ放映のうち、どの番組を選ぶかは、視聴者のカンとクチコミにまかされているわけです。しかし、けっこうなお金を払う映画や小説の場合は当然ちがった選び方になります。しかも、映画ならくだらなくても2時間をムダにすればすみますが、小説ならへたすると、オレの数日間を返せー、てなことになっちゃいますし。
金と時間がからむと、消費者は慎重になります。限られた資金と時間の中でできるだけ満足を得るためにまず選ばれるのが、
(1)すでに人気があるもの
(2)ブランド
セカチュー、はやってるから読んでみようか。はやりものには目を通しとかなきゃ。ゲド、見てみようか。やっぱジブリだし。
結果、売れてるものはますます売れます。過去の作品で信用されてるブランドも強い。
次に来るのが、
(3)賞
かな。このミス1位なら読んでみよう、アカデミー賞なら見てみよう、という行動をとることはよくあります。
そのあとが、
(4)新聞、雑誌、ネット上の作品評
ですか。ところが、新聞や雑誌の批評は、どうも何らかの利害関係があって書かれてるんじゃないかという疑いを捨てきれない。なんせヨイショ記事多いっすから。ポピュリズムと言われながらも、作品と利害関係がない(と思われる)ネット上の批評に目がいっちゃうのも、ごもっともな傾向でしょう。
で、マンガの話になりますが、マンガの賞って商売として機能してるのでしょうか。
マンガは、映画や小説より比較的安価。費やす時間もそれほどでない。しかも立ち読みで無料サンプルを見ることが可能。だから消費行動としては、小説・映画と、テレビの中間に位置する形になるのかな。
わたしに限って言いますと、オルタナティブ系が賞をとったなら、おおっと思って買うでしょうが、もともとメジャー系の作品は、賞をとる以前に取捨選択が終わってるような気がします。だから、好みじゃないメジャー系マンガが賞を取っても、あえて買わない。講談社や小学館のマンガ賞は、もともとかなりのヒット作品に与えられますが、あれって受賞で新規の読者が開拓されてるのかしら。
小説や映画が、上記(1)(2)(3)(4)の順で選ばれるとするなら、マンガ購入の選択を決定する要素としては、そうですね、(2)(4)(1)(3)かな。
いつも買い続けてる作家は買いますし、その次はネットや雑誌のレビューを参考にします。賞はあまり重要視しないなあ。
Comments
コメントありがとうございます。たしかにおっしゃるとおり、賞にはマンガ紹介の側面もありますね。知らないことっていっぱいありますし。わたしも過去の手塚治虫文化賞を調べてて、これって誰、と思うこと多かったです。
Posted by: 漫棚通信 | August 30, 2006 06:27 PM
こんばんは。初コメントですが、いつも楽しみに読ませていただいてます。
漫画も賞がいっぱいあって、「(出版社名)漫画賞」なんていうのはほとんど既に有名な作品が受賞しているから、あまり気にしませんよね。
でも、漫棚さんほど博識でない自分としましては、特定の賞で「知った」作品・作家というのもあるんですよね。文化庁メディア芸術祭がなかったら多分こうの史代さんは知らなかったかなあと思います。若輩者なので花輪和一さんの存在も手塚賞で知ったり…。
いずれにせよ、漫画賞って一般向けっていうより、漫画好きの人へのアピールの方が大きい気がします。
Posted by: fukiya | August 29, 2006 07:26 PM