「萌えるアメリカ」 歴史書ですよ
マンガはカルチャーかビジネスか。
別に対立する概念じゃなくてその両面を持つのですが、大衆文化てのはこの二者が、いんぐりもんぐりしながら発展していくものなのでしょう。そのことを強く考えさせられたのが、この本。
○堀淵清治「萌えるアメリカ 米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか」
著書は、1986年ビズ・コミュニケーションズが設立されて以来、その中心となってアメリカで日本マンガを出版し続けてきた人物です。この本、発行が日経BP社ですからアメリカでの成功を書いたビジネス書なんだろう、とあまり期待してなかったのですが、とんでもない、これはまじめな歴史の本でありました。
日本マンガがいかにアメリカで出版され、受け入れられていったかを、著者の経験に基づき経年的につづったものです。
かつて1980年代、アメコミ・バブルと言われるコミック・ブームがありました。コレクターが投機目的にコミックスを買っていた時代。ビズはバブルの絶頂期に小学館の100%子会社として設立され、日本マンガのアメリカでの出版を始めます。
以後、バブル崩壊でコミック不況。流通の見直し。ポケモンブームで息を吹き返す。集英社の資本参加で「SHONEN JUMP」の創刊。「SHOJO BEAT」の創刊。
先日コミックファウストで、「SHONEN JUMP」初代編集長、成田兵衛のインタビューを読みましたが、わかってるつもりでもちゃんと歴史を知ってるかどうかで理解が異なるものですね。いやー、今回勉強させていただきました。知らないことばっかり。とくにアメリカでの本の流通がこんなに複雑だとは。
日本マンガをどういう形式で英訳するか、雑誌にするか、本にするか、流通をどうするか。日本のものを持って行って、ぽんとそこに置くだけで読んでもらえるわけではありません。著者たちが形式を整えることで、現在のMANGAが成立しました。
成功者の自伝というより、現在進行形のビジネスの話。「SHONEN JUMP」が創刊されてまだ四年、今後どう転ぶか誰もわからない。あくまでビズという会社から見た日本マンガ輸出の歴史ですが、現場の証言として貴重だと思います。
基礎知識を得るのに最適。好著です。
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