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August 30, 2006

フルカラーで読む「ぼくのそんごくう」

 本日買ったマンガは、谷口ジロー「シートン第3章サンドヒル・スタッグ」や、ついに刊行されたシンガポールの作家、FSc(フー・スウィ・チン)の「ナイトメア アンド フェアリーテイル」など、計6冊。でもそれは置いといて、どうもあんまり話題になってないような気がする、手塚治虫の「オールカラー版ぼくのそんごくう」についてであります。

 手塚マンガの復刻は、少女クラブカラー完全版と題した「リボンの騎士」がジェネオンエンタテインメントから2004年に発行。昨年2005年には講談社から、もう絶対読むことは不可能と思われていた「バンビ/ピノキオ」が発行されたわけですが、今回、ジェネオンエンタテインメントから、「オールカラー版ぼくのそんごくう」が刊行されました。

 3000部限定で6500円とたいへんお高い本ですが、600ページ近い大著ですし、なんせこの作品、ほとんどが四色カラーか三色カラーで描かれてますので、カラー率がこれまでの復刻よりずっと多くなっておりまして、お得感あります。ただし作品自体が「リボンの騎士」のようなビッグヒットじゃないから、あんまり話題になってないのかな。

 これまでわたしの持ってたのは講談社全集版の全8巻のやつ。もちろんモノクロ。先週末にカラーのこの本が配達されてから、両方を見比べながらぽつぽつと読んでいるのですが、いやー、カラーはいい。とくに手塚のカラーは、いい。

 「ぼくのそんごくう」は秋田書店「漫画王」1952年~1959年連載。わたしはこの時期の漫画王はまったく知りませんので、「ぼくのそんごくう」のカラー版は初めて見ました。

 同時期の少女クラブの「リボンの騎士」は、カラーでもなぜか主線が青で描かれていて奇妙に感じたものですが、「ぼくのそんごくう」はきちんと主線が黒。こっちのほうがよほど読みやすいですね。雑誌からの復刻ですが、きれいなものです。手塚はページごとに統一感のある色づかいを心がけているようです。

 ただし、「ぼくのそんごくう」は回によってカラー印刷の出来不出来の差がけっこうあります。色ずれもあたりまえにあって、時代ですなあ。あと後半になるにつれてべったりした原色が多くなって、わたしの知ってる「マンガの色つきページ」の印象に近くなります。「少年」の末期とか初期「少年ジャンプ」の巻頭カラーのハデハデな色です。もっと中間色が多いと美しいのに。印刷の問題なのかしら。

 「ぼくのそんごくう」は、指定着色でカラー化されていたそうです。当時はコピー機がないからモノクロで描かれた原稿を清刷に複製して、色鉛筆で着色して色指定がされています。この色指定原稿が一枚掲載されていますが、色鉛筆で色をぼかしたりする細かい指示もできたんですね。

 この作品、他人の手が何回かはいってるそうですが、「月兎姫の巻」はなんと関谷ひさしが代筆しています。こりゃ絵柄からいってちょっとムリがあるでしょ。しかも描きなぐり状態。いつもは読者に隠されるはずの代筆ですが、この回は絵がちがいすぎるからか、「今月号は、関谷ひさし先生におてつだいいただきました」とハシラにあります。さすがに講談社全集版には収録されていません。

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Comments

 ちょうどいま、杉並アニメーションミュージアムで開催中の「アトムと孫悟空展」を見て帰ってきたところです。自転車で往復したもので、汗グッショリ。

「ぼくのそんごくう」の原画(モノクロ)もありましたが、手塚先生の作品らしく、切り貼りがいっぱいでした。別冊フロク用らしい小さい判型の原稿でしたが、そのせいか、線も他の作品に比べて非常に細く、きれいでした。ちょっと、あとから別の人がトレスでもしたような印象がなきにしもあらず……というか。

 企画展示という割りにはこぢんまりしていましたが、それでもナマの原稿が見られて(アトム、リボンの騎士、ジャングル大帝、そんごくう、メルモなど)、眼福眼福でした。

 あの、昆虫の細密画を描いた手帳も展示されていました。係の女性が、「拝んでいってください」というので、手を合わせてきました(^_^;)。

Posted by: すがやみつる | August 30, 2006 07:43 PM

今回の本によりますと「ぼくのそんごくう」の別冊付録は4冊で、A5が1冊、B6が3冊。付録はすべてモノクロで本誌はカラーですが、清刷を使用して着色されたと。B5雑誌の4段3列を1953年秋田書店単行本角版3段3列にするとき、原稿の切り貼りがされたそうです。その後さらに1960年光文社全集A5版にするときもっぺん切り貼り。というわけで、原画は切り切られまくってるそうです。

Posted by: 漫棚通信 | August 30, 2006 09:22 PM

清刷の色指定4色は、ぼくが曙出版でB6版128Pものを
描いていたころもそうでした。
ただ、その製版方法については、版元から説明されません
でしたので、素人同然のぼくは、どうして塗った色と違って
印刷されるのか、不思議でしたね。

ペン線がブルーの印刷は3色印刷というやつでしょう。
黒(墨版を省略)が無い。
3色掛け合わせて黒っぽく見せる。
でも、線をそうすると、版ズレでヘンになってしまう
のでブルーにしておく~というやつです。

雑誌では、早い時期にだんだん無くなっていきましたが、
パッケージのラベル印刷では、コストを安くしたい
メーカーのために、地方の印刷会社などが、かなり
凝った3色印刷の技術を工夫していたようです。
これは、ぼくの友人がパッケージデザインをやっていて
そこで知ったんですが。

Posted by: 長谷邦夫 | September 01, 2006 01:33 AM

長谷邦夫さん、ご無沙汰しています。
二階堂黎人のホームページで「カラー版」のことを知り、さきほど眺め終わりました。いやあ、これがほしかったのです。連載を読んでいたときの気分がようやくもどってきました。

どこかで「朱房の小天狗」うしおそうじ と
「スポーツマン佐助」寺田ヒロオを
復刻してくれないかなあ?

Posted by: 三田皓司 | September 01, 2006 10:09 AM

>三田皓司さん!!!
お久しぶりですねえ~~~っ!!!
ここでお会いするなんて。
ネットならではですね。

うしお先生の復刻、ありそうな気がします。
ここまで復刻の流れが盛り上がっていますからね。

先生の記録や、それに関する取材を小学館文庫に
在籍した大西さんという方と、丸山昭さんが
まとめをやっておられたはずなんですが…。
文庫からは無理だったのか、いまや大西さんは
定年退職されています。
その後、どうなったのかなあ…。
これも世に出したい資料です。

Posted by: 長谷邦夫 | September 01, 2006 06:26 PM

三色かけあわせで黒。そうでありましたねー。わたしの子どものころの絵本とかがそれで印刷されてたような気がします。少女クラブのリボンの騎士もそうだったのですね。うしおそうじ氏のマンガ家時代のお話は太田出版「スペクトルマンvsライオン丸」(1999年)のインタビューでかなりくわしく語られてます。

Posted by: 漫棚通信 | September 01, 2006 08:14 PM

 小学館にいらした大西さんでしたら、定年退職後、復刻マンガを多数刊行している小学館クリエイティブに再就職(?)されて、復刻マンガの編集などを担当されているはずです。もっとも最後にお会いしたのは、昨年の春ですが。

Posted by: すがやみつる | September 01, 2006 08:18 PM

>再就職(?)
そうなんですか。辞めた直後、今後は自分の趣味で
何か書くようなハガキをもらった記憶があります。
文庫編集時代に、うしお先生が書かれていたとかいう
映画時代の回想記があるんで~といった話しを
お聞きしたんですよ。
ちょっと、それだけでは本にしにくいので、丸山さんに
マンガ系の話しを聴いてもらう、とかの企画をしていた
様子なのです。

Posted by: 長谷邦夫 | September 02, 2006 01:31 AM

「ぼくのそんごくう」のはじめのほう、日本の化け猫のでるころまでリアルタイムで読みました。

別冊付録「火炎山のたたかい」はモノクロでした。

Posted by: しんご | September 08, 2006 01:03 AM

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