悪罵毒舌無頼の日記
かつて1996年に、塩山芳明『嫌われ者の記 エロ漫画業界凶悪編集者血闘ファイル』という本が出版されました。
エロマンガ編集プロダクションの代表であるところの著者の日々をつづったもので、いろんな雑誌を渡り歩いた連載をまとめた一冊。
何にぶっ飛んだかと言いますと、口がねー、悪いんですよねー。歯に衣着せぬ毒舌。公開を前提とした日記なのに、実名出して罵詈雑言の嵐。
で、この本が『出版業界最底辺日記 エロ漫画編集者「嫌われ者の記」』のタイトルでちくま文庫から刊行されました。原著のほうの表紙カバーは複数のマンガ家による美少女集合イラストで、ページを開けば中にもエロいカットがけっこうあるもんだから、まず電車の中で読めるようなものではありませんでした(今も食卓の上に出してたら、同居人から冷たい視線)。でも、ちくま文庫なら、もう安心。
とは言いながら、原著に収録されたのが1988年から1996年まで、今回の文庫ではその部分はかなりの抄録。1996年以降、2005年末までの部分が主ですから、実質上の続編となります。2冊まとめて読めば、エロマンガ業界、18年間の記録ですね。
それだけじゃなくて、ときどきの社会状況も。1989年4月に幼女連続誘拐事件についての雑談をして、1989年8月にM君の報道が始まってマスコミ襲来、1996年5月にはフロムAへの広告で「オタク」「マニア」は差別語だからと修正させられる。こういう記述は日記だからこそです。将来、役に立つかな。
エロマンガ誌の下請け編集者である著者には、ともかく敵がいっぱい。作品や印刷の出来を左右するマンガ家や印刷会社だけじゃなくて、成年マーク、売り場規制、ビニール綴じ、都の不健全図書指定、さらに警視庁などなど。さらに読んだ本の作者、仕事のできないアルバイト、居酒屋の店員、騒音公害をまき散らす市役所、電車でケータイ使うやつまで、ことごとく著者にどなられまくってます。
歯に衣着せぬとはこのこと、というくらいの毒舌ですが、読んでいてやーな気持ちになるかというとそうでもなく、このかた、基本的に正義の士です。怒ってる対象がいちいちごもっともで、むしろ共感することが多い。当然ながら同意できない部分もあちこちにありますが(なきゃヘンでしょ)。
ただし、今回原著のほうも読み返してみましたが、はっきり言って密度が濃いぶん、文庫よりおもしろいです。文庫化でかなり薄まってますね、もったいない。
ずっと読んでると、この文体、中毒になりますな。口調とか考え方が影響されて、ちょっと乱暴な気分になるのが難点。福田和也による解説は中学生の読書感想文かよ、まったく内容なし。とかね。
Comments
わが家でも西尾維新のデスノート、ホリック両方買いました。わたしまだ読んでませんが。ウチの中学生(ホリックファン)に言わせると、どっちももうひとつだけど、デスノートのほうができがいいそうですよ。
Posted by: 漫棚通信 | August 29, 2006 06:23 PM
宇都宮の八重洲ブックセンターには有りませんでした。
bk1、最近使ってなかったので、忘れていました。
登録はしてある。早速注文しました。
ありがとう御座います。
ついでに西尾維新のデスノート・小説版も(笑)
ホリックなんかも書いてるんですね。
小学館も参入とかで、このテが増えるんでしょうか。
Posted by: 長谷邦夫 | August 29, 2006 01:21 AM
あらら、売れてるんでしょうか。bk1のほうは在庫あるみたいですね。
Posted by: 漫棚通信 | August 26, 2006 08:50 PM
文庫、アマゾンでみましたら、品切れ中でした。
Posted by: 長谷邦夫 | August 26, 2006 07:41 PM