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August 08, 2006

本を愛でてみる

 「月館の殺人」の記事をおめあてに「ダ・ヴィンチ」2006年9月号を買ったところ、「天才・祖父江慎 嫌われブックデザイナーの一生」という特集がありました。これは楽しい、そして驚いた。

 祖父江慎の装丁した本の紹介もあるのですが、いやー、こんなところまで凝ってますか。気づいてなかったなあ。というわけで、手持ちの祖父江慎装丁の本をもっぺん眺めてみました。

■喜国雅彦「傷だらけの天使たち」

 おなつかしや、キクニの初単行本です、1988年発行。表紙カバーは赤と青のはでな地にヘビメタ男の顔のアップ。鼻たらしてますけど。「HEARTBREAK ANGELS」と光沢のある文字、さわると盛り上がってます。ともかくハデ。

 カバーをはずすとカバーの裏におまけマンガあり。一色でインクはピンク。表紙もテカってて、紫にオレンジででかでかと「HEARTBREAK ANGELS」。ともかくハデ。

 扉も光沢のある紙で、天使の後ろ姿。本文は全部二色。

 この本は四コマ作品集なのですが、1ページに四コマを二本ならべる定型的な掲載もありますが、

1コマ目:見開き2ページ
2コマ目:見開き2ページ
3コマ目:見開き2ページ
4コマ目:1ページ1コマ

などというとんでもない載せ方もある。しかも作品がシモネタ全開の下品このうえないものばかりですから、いやー、ハデな本でした。

■吉田戦車「伝染るんです。」1巻

 有名なこの本が1990年発行。

 まずオビが長方形じゃない。広げると台形の紙で、不安定なこと。文章の印刷はかたよってるし、折りかえしの面積も表と裏では違います。コピーは「'75年は吉田のものだ!!」 しつこいようですが1990年発行です。

 カバーも広げると長方形じゃなくて、ソデの部分をわざわざ一部切りとってあります。しかも表と裏でソデの面積が違います。

 中を開けると、「伝染るんです。」というタイトルがない。いきなりマンガから始まります。それでも普通、数ページめくるとタイトルがばーんと出てくるはずですが、いつまでたっても出てこない。結局タイトルが現れるのは、奥付のさらにあとです。

 この本もオール二色ですが、なぜか1ページだけが四色。意味がない。そして、なぜかノンブルだけの空白の見開き2ページがはさまっています。

 ノンブルの場所はページの上下に移動するし、マンガのコマの大きさは一定しないし、コマが傾くことも。

 著者あとがきは、文章の途中から始まり途中で終わってる。奥付のあとにタイトルがあって、そのあともノンブルだけは続き、ついに表3にもノンブルが書いてあります。意味がないなー。

■佐々木倫子/綾辻行人「月館の殺人」上下巻

 カバーは型押しで絵が浮き上がってて、でこぼこしてます。さわって気持ちいい。下巻の裏カバーには浮き上がった主人公の絵が。

 カバーをめくると、上巻は黒、下巻は白の表1。地模様のごとく「つきだてほんせん」「TSUKIDATE」がデザインされた繰り返し模様が描いてあります。とくに上巻は黒に近いグレーに赤と緑で印刷してあるものだから、模様が見にくいったら。上巻の表紙絵は冬の原野を走る幻夜号ですが、こんなシーンはマンガにはないはずで、これもミスディレクションかしら。

 上巻の表2と見返しは真っ黒。でもよく見ると「つきだてほんせん」の繰り返し模様が。ところが表3と裏の見返しは黒でも模様なしなのね。

 下巻のほうの表2と見返しは、いきなり上巻の最終ページから始まります。見返しの端っこに「月館の殺人」とタイトルの一部がうっすら見えているという趣向。これをめくると、右側のページにはまた「つきだて」の繰り返し模様(すごく見えにくいですが)。左ページがトビラでタイトルがどーん。ただし、タイトルから血が流れ出ていまして、うーむ、ミステリっぽい。

 そして前にも書きましたが、謎解き部分になると紙がグレーに。カラーページもグレーに統一されてて、暗ーい気分が続きます。

 表3と裏の見返しには黒い紙に黒インクで、原作者あとがき。読みにくいぞっ。というか、まるで隠しコマンドです。その前のページには黒い紙に黒インクで主人公の絵。幽霊のようであります。

■楳図かずお「恐怖」1巻

 カバーのソデやカバーの裏、さらに小口に、こわーい絵が描いてあるのはともかく、表2に点描のごとくうっすらと、こわーい顔が浮き上がるのは許せんっ。気づいてました?

 さらにこの巻、一部にやたらに悪い紙を使っていてそこだけインクがにじんでるものだから、乱丁じゃないのかなんて不安になって、書店に他の本を確認に行ってしまいましたよー。

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Comments

紹介していただいたこの雑誌、書店で立ち読みですまそうと思ってたら、あまりのおもしろさに購入してまいました。とくに「猫目小僧」のデザインに詳しく触れられてて、こんなところで言うのもなんですが、楳図ファン必見です。どうもありがとうございました。

Posted by: 漫棚通信 | August 09, 2006 06:38 PM

 デザイン系の雑誌なら、必ず一度は祖父江さんの特集を組んでいるような気がしますねぇ。今発売中の『デザインノート』誌(2006.No.8/誠文堂新光社刊)では、巻頭に祖父江慎×吉田戦車の対談が載っています。こちらも面白いですよ。

Posted by: とんがりやま | August 09, 2006 12:23 AM

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