く、くだらんっ
NHKBS2で、「マンガノゲンバ」という番組をやってます。2006年7月18日は、山川直人「コーヒーもう一杯」が取り上げられてました。これをビデオに撮って見てたわけですが。
「かわいい女」という短編が紹介されていまして、主人公のカオリ(♀)が、つきあいだしたばかりの男の部屋でコーヒーを淹れてもらいながら、過去の男(←フリンだったらしい)を回想する話です。
でもって、番組ではナレーションが以下のように流れます。
この作品に目をつけたのが絵画の魅力を脳の仕組みから分析している布施英利さん。
『東京芸術大学美術解剖学助教授 布施英利』
布施さんは、作者が人間の脳の働きを計算して、主人公カオリの、揺れ動く心情を見事に表現していると指摘します。
その理由としてあげたのが、全編にわたって統一されている左右のページの描き分け方。右のページには、現在つきあっている彼とのやりとり。左のページには、前につきあっていた男との思い出が描かれています。
さらに左のページは、輪郭をはっきりさせる輪郭線をあえて描かず、ぼんやりした絵にすることで差別化しています。
はい、ここからが布施英利氏の語りの部分です。これを聞いててあきれてしまった。
この右ページと左ページを交互に描きわけてるっていうこの描き方っていうのは、ヒトの脳には右脳と左脳ですね、右脳と左脳がありますけども、これと何かすごく実は呼応してるんじゃないかっていう気がします。左の脳は、論理的な、あるいは言葉、そういったものを扱っている、で、それに対して右側の脳は、直感的、あるいは叙情的、感情的なものを扱っている、というふうに言われてます。
脳の中で視神経が交差してまして、反対側に行くんですね。でつまり、右目で見たものは左の左脳でこう情報が分析される。で、それに対して、左目で見たものは右の方に情報が行くと。
脳の働きの右左にあてはめてこのマンガを見ると、まさにそれをこう計算して、もうなんて言うかな、ぴったり描いたんじゃないかと思えるような、描き分けがされてるんですね。つまり、左目で見た世界はまさに叙情的な世界であって、右目で見た世界はですね、しっかりと細かいところまで観察して、こう論理的にこう現実の世界をとらえている。
この女の子が、脳の中の世界、なわけですね、つまりその目の前にいる今つきあってる男の子、で、この人とこれからずっとつきあっていくんだ、という非常に大切な男の子なんですけども、もうひとつが、かつてつきあっていた人の思い出、その間をこう揺れ動いているわけなんですね。
おおっ、イマドキ、右脳左脳でもって世界を見ている人がまだいるとは。こりゃまったくの疑似科学じゃなかったのか。こういうもっともらしい分析をすると何やらわかったような気になるかもしれませんが、実際のところそれが世界やマンガの理解に役立つとはまったく思えません。
しかもお前さんはなにかい、右のページは右目で見て、左のページは左で見るのか。わたしゃどっちのページも両目で見るぞ。さらに、どっちかの目を失明してるひとはどうなるんだよっ。このマンガを片方の目で読み続けると、意味が変わってくるのか、そうか?
このマンガは日本マンガだから右開きだけど、左右反転して左開きに英訳したとすると、左ページに現在、右ページに回想がくることになります。そうなるとこのマンガの価値が下がるのか?
このかたの過去の業績とかはよく知らないのですが、少なくとも今年、見聞した中で、最低のマンガ批評でした。将来、ウチのコドモは絶対、東京芸大には進学させない。って、はいれませんけどね。
Comments
マンガノゲンバは、前半がマンガ作品をひとつ紹介、後半はひとりのマンガ家インタビューとお宅訪問、という二部構成になってます。はっきり言って、おもしろい番組ではないので、視聴率はきっとすごく低いはず。でも後半には興味がありますし、わたしが見てあげなきゃ誰も見てないんじゃないか、という気がして、ボランティア的に毎回見てます。
Posted by: 漫棚通信 | July 20, 2006 11:59 PM
NHKのもっともダメな部分がモロ出ましたね。
困るんですよね。
信じたりする人が出てしまう。
Posted by: 長谷邦夫 | July 20, 2006 09:38 PM
マンガのゲンバはくだらないので、見るのをやめてました。見なくてよかったなあ。お察しします。
ところで山川直人さんの新作は?心待ちにしている作家の1人です。
話は変わりますが、生命の木「奇談」のDVD買いました。「おらといっしょに、ぱらいそさ いくだ」の声だけをタッチのあの人が吹き替え・・・映画としての作品の内容はともかく
諸星先生のインタビューは超貴重。
Posted by: not a second time | July 20, 2006 07:52 PM