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June 11, 2006

サッカーマンガ、今は昔

 最近なにやら、懐かしマンガブログみたいになってますが、本意ではありません。もっとアップトゥデートな話題が欲しいっ。というわけで、今、開催中のワールドカップにひっかけてサッカーネタを。と言いながら、やっぱり古いお話。

 サッカーマンガといいますと、オフサイド(1987年)だのJドリーム(1992年)だのフリーキック!(1989年)だのシュート!(1990年)だのリベロの武田(1991年)だの俺たちのフィールド(1992年)だのホイッスル!(1998年)だのファンタジスタ(1999年)だの、いまだに現役でサッカーやってるキャプテン翼(1981年)だのが挙げられるわけですが、みんなそれなりに集団スポーツのマンガ化に工夫があって面白い。しかし、さらにさかのぼると、どうか。

 石井いさみ「くたばれ!!涙くん」(週刊少年サンデー1969年~1970年)。サッカーマンガで有名なのは、まずこれでしょ。石井いさみは、「750ライダー」がほのぼの系だからってかんちがいしちゃいけません、熱血系・ケンカ系マンガの多いひと。

 も少し前になると、水島新司「下町のサムライ」(週刊少年キング1966年~1967年)というのがありました。水島新司の週刊連載としては三作目で、初の中ヒット作品です。

 しかし、いちばん知名度が高いのは、「赤き血のイレブン」(原作・梶原一騎、作画・園田光慶、週刊少年キング1970年~1971年)じゃないかな。なんせTVアニメ化されましたからねー。

 マンガの雑誌連載とほぼ同時に放映されたアニメ版(連載開始が1970年2号で、アニメ放映開始が1970年4月)は燃える展開で、なかなか見せる作品だったのですが、実は原作マンガのほうは、あんまりよく知りませんでした。キングだったし。

 で、後年になって読んでみたところ、これがあなた、どうにもこうにも。

 埼玉県に新設された県立新生高校のサッカー部が、日本一になるまでの物語。モデルは浦和南高校だそうです。

 お話は、赴任してきた元日本代表のゴールキーパー・松木監督と主人公の高校一年生・玉井真吾の出会いから始まります。

 サッカー部創部、師弟の対立と和解、ライバルの出現、魔球の開発、県大会優勝、主人公の出生の秘密、国体優勝、と来て、ちょっとスケールダウンして、対アメリカンスクール戦、が最後の試合。エピローグ的に主人公が高校サッカーの三冠を制し、「日本に今度できるプロサッカー」に参加するところでおしまい(もちろんJリーグの発足は1993年ね)。

 面白いかと言えば、はっきり、面白くありません。梶原一騎がやってることは、いつもと変わらないのですが、どうしてかなあ。あえて言うなら、主人公・玉井真吾が天真爛漫すぎるかな。梶原マンガの主人公は、もっとねちねちと悩まなきゃ。

 梶原一騎、サッカーを知りません。どうやら、直接フリーキックとペナルティーキックを混同してます。作品終盤になっても、監督が試合中、タイムっ、とか言ってフィールドで円陣組んでますし。

 当時、1968年のメキシコ・オリンピックで日本サッカーが活躍したあとでしたし、体育の授業でサッカーもありましたから、みんなそれなりにサッカー知ってたはずですから、この展開はないでしょ。もちろん、1970年に開催されたはずのワールドカップ・メキシコ大会についての言及は、なし(マンガのモデルになった浦和南の松本監督はメキシコに観戦に行ったそうですよ)。

 マンガでサッカーを描くのは難しい。この時代のスポーツマンガは一対一の対決を描いていました。集団スポーツを描くにはまだまだ力不足。ですから、やはり魔球がお話の中心です。フォーク・シュート、スクリュー・シュート、サブマリン・シュート、ブーメラン・シュート、あと、かみそりドリブルとか回転ひねりキックとかが登場します。

 こういうワンパターン展開の男の子向けスポ根マンガを読んでますと、女の子向けの「アタックNo.1」や「サインはV」のほうが人間関係を細かく描写するぶん、デキがいいなあと感じちゃいますね。

 園田光慶の絵は、キメのアクション・シーンはすばらしいのですが、なんせていねいな絵と荒れた絵の差が極端。次第に他人の手がはいることが多くなり、ついに分量で五分の一くらいを残して園田光慶は降板してしまい、別人(深大路昇介)の絵で連載が続きました。

 というわけで、この絵の混乱を見ているだけでも、物語には集中できず、完成度の低い作品になってしまいました。

 ただし、今回読み直してみてちょっとびっくりしたこと(わたしの持ってるのは1994年の再版ですが)。

 物語序盤、サッカーの試合を8mmカメラで撮影し、上映会をするシーンで、なんとコピーした絵が使われてます。

 マンガにおけるコピー技が有名になったのは、松本零士の宇宙船あたりからでしょうが、この1970年という時代にコピーがあったとは。それとも、コピーじゃなくて印刷物を利用したのかな。

 物語ラスト近くの数回、園田光慶以外の手で描かれた部分にも、園田の絵のコピーが貼りこまれてます。さらに、最終ページの最終コマ。ボールを蹴る主人公も、園田の絵のコピー。というわけで、最後のコマは園田光慶の絵で終わってるのでした。

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Comments

大昔にマンガ入門書で見たのですが、A3ぐらいの紙に、キャラクターの顔のりんかくや目、口などがたくさんプリントされていました。ひょっとすると、コピーではなく簡易オフセットなどだったかもしれませんが。

Posted by: とおる | June 14, 2006 11:44 PM

コメントありがとうございます。あ、そうでした。長谷邦夫「赤塚不二夫天才ニャロメ伝」に湿式のフジ・クイックコピーを購入したと書かれてました。でも湿式っていわゆる青焼きじゃないのかな。マンガ原稿に使えたのかしら。

Posted by: 漫棚通信 | June 14, 2006 10:02 AM

お久しぶりです。コピーとはやや異なりますが、赤塚不二夫はキャラクターのいろいろな表情をあらかじめ用意しておいて、原稿にはりつけていたそうですよ。

Posted by: とおる | June 14, 2006 12:33 AM

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