実験してます「アトモスフィア」
西島大介「アトモスフィア」1・2巻読みました。
自分のドッペルゲンガーが現れた、と思ったら、それが次々と世界規模で出現し始めるお話です。「凹村戦争」に続いて「ハヤカワSFシリーズJコレクション」というシリーズの一作。このシリーズ、西島大介以外はすべて小説です。
こういう形でマンガの書き下ろし作品が出版されるのは、雑誌連載とは違う何か新しいことができそうな気がしちゃいますね。
作品内の実験がふたつ。ひとつは絵が少ない。
なんと空白のコマがえんえんと続きます。そこにはカギカッコでかこまれた登場人物のセリフと、主人公の独白が書かれる。
絵が描いてあるコマは、だいたい60%でしょうか(数えてないけど)。フキダシだけがあって、あとはベタ、というコマも多いです。
印象としては、ネーム形式のシナリオを読んでる感じになりますが、主人公の独白の部分では、思考内容だけじゃなくて登場人物の行動や状況説明も書かれてるから、実はコマの中で一人称小説が進行しているのと同じです。西島大介のような絵のうまいひとがこれをやってる、というところがポイントですな。
もうひとつの実験は、「マンガのようなオチ」でして、この作品は確かにマンガなのですが、まあ長編マンガでは、メタふうに全部をぶっ壊してしまうこのオチはふつう描かないわ。
むしろSF小説で、この手のアッと驚くマンガみたいなオチをときどき見ます。つまり、「マンガの中ではあまり見ることのないマンガのようなオチをマンガで描いた」わけで(ゴメンナサイ意味不明かも)、ちょっと驚きました。
ハヤカワだから出版できた作品なのかな。実験は大歓迎。いずれ、大傑作が誕生するかも、という期待も高まりますし。
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