書庫はあなたをシアワセにはしない
自分の家を持つ以前、「書庫」「書斎」という言葉を見かけるたび、「いいなあ…」と遠い目をしていたあのころ。
かつて転勤をくりかえしていて社宅生活が長かったので、蔵書(ほとんどマンガ)は全部貸しコンテナのトランクルームに押し込んでました。そして今、それなりの広さの書庫があるわけですが、これが素敵な生活とは言いがたい。書庫はあなたをシアワセにはしてくれません。
書庫は整理されていてこそ書庫となるのです。一度ゆかに本を置き始めると、もうダメです。これでは単なる物置。上下に伸び続ける雑多な本の山々から、求めるものを探すのがいかにタイヘンか。
居間のソファにちょっと置いてた本が、帰宅してみると同居人の手で書庫に放り込まれている。勝手に移動させるなよ、ひとが来たからしょうがないでしょ、どこに置いたんだよ、あのあたりよ、と掘ってみても出てこない。あんなふうに書庫のゆかに置いたらわかんなくなっちゃうじゃないかよ、だったら居間のあちこちにアリヅカみたいに本を置くなっ、と家庭不和の原因にもなります。
さらに書庫には冷暖房をまったく装備しなかったおかげで、夏暑く、冬寒い。整理のために部屋にはいるるのもなかなか苦痛です。整理といっても、すでに蔵書量が書棚のスペースをこえているのがわかっているので、右のものを左に移動させるだけで、整理といっても限界があります。
そして恐ろしいのが地震。もし書庫にはいってたときに地震がくれば、これはもう確実に死の危険が。
書庫をお考えのかたがたに申し上げておきますが、蔵書は増えます。それこそ無限に増えます。そして書庫のスペースは有限。あなたが京極夏彦でもない限り、いかに書庫が広くとも、蔵書というのは「必ず」収納能力をこえて存在するものなのです。
知り合いに、本は読み終われば「すべて」ブックオフに売るという剛の者がおりますが、このイサギヨサがうらやましい。いつも家の中はすっきり。物欲を捨ててこそ、快適な生活が。
こんな本、おそらく二度と読むこともないだろう、いっそ思いきって捨てたり売ったりしようかしら。ああでも、あれもこれももしかするともう一回読むかもしれないし(そんなことは決してないのですが)。
ときどき本に埋もれて生活しておられる蔵書家のかたの住居が紹介されることがありますが、さすがにあそこまでの根性はありません。ならばいずれ本を捨てなきゃいけない日が来るのは明らか。でも捨てられない=たんに優柔不断なのですねえ。
Comments
図書館はけっこう使うほうです。利用者としては、図書館側に望むことより(1)図書を盗むヤツがいる、2)図書を切り取るヤツがいることが一番ハラダタシイ。「完璧な図書館」というものが存在すれば収集に意味はなくなるかもしれないのですが、マンガ・エロ本・雑誌は国会図書館以外じゃ集めてくれませんから、個人でコレクションするしかないわけですね。
Posted by: 漫棚通信 | April 17, 2006 09:52 PM
図書館に寄付したいと思って、以前友達の家に遊びに行ったおり、
そいつの近くにある図書館に行ったことがあります。
で、そこで聞いたところ図書館では寄付を受け付けてないとのこと。
以前住んでいた街では本を買う金が無かったためか引っ越しの際、
漫画から小説から専門書からなんでも寄付歓迎だったのに何でと聞くと寄付する人間が余りにも膨大な蔵書を出すため、
整理することすら出来ない。スペースもない。
だから以前は受け付けていたが、今はそんなことは出来ない。
非常に素晴らしい品揃えと美しい館内レイアウトが特徴の図書館でしたが、下手に文化的だと(屋内に会議場やホールも併設した建物の一角にあるとはと思えないくらい)返って本が集まりすぎるのかもしれません。
しかし、地方における図書購入費はどんどん下がっている。
まともに本を集めることもままならない図書館も珍しくない。
しかし、市中に本はあふれかえっている。
そもそも図書館自体が公共の書庫という歴史性もあるんだから、
このギャップを埋める潮流があれば、もしかすると本を抱える人達は近くに巨大な書庫をもてて保存もそこがしてくれる。
その上自分の本がその地域の人たちに役立てることができて似たような収集家からの珍しいセレクトも期待出来る。
その上一利用者として、いつでも必要な時に自分が寄付した本を利用できる。
図書館にベストセラーをと叫ぶ人々を別とすれば、WINWINの関係は本読みと図書館の間に築けるんじゃないか。
ここ数年考えていることです。
問題点もいっぱいあるけど、作家にとっても出版社にとっても、
本読みにとっても、図書館、ひいては良質の人材に期待する昨今の地域社会にとっても、図書館と本読みの共助関係を築いて本の流環(環流とは少し違う意味合いで)を地域構造の中に組み込べば、みんなにとっての利益になるような。
今の本って何から何までミスマッチの産物ですから、それを転じてよい関係を本(作家、出版社含む)と地域社会と本読みの間で作ることができたらなあ。
以前から考えていたことですが、今回の記事を読んで思い出し、
つい書いてしまいました。
ちなみのその図書館はエロ本、雑誌以外ならなんでも受付けて、
漫画は千冊分ぐらいありましたが、大半は多分今でもそこの利用者に読まれていると思います。
Posted by: ぎろろ | April 17, 2006 09:22 AM
諸星大二郎「栞と紙魚子」シリーズの一篇を思い起こします。
ふと振り返ると、オレの部屋も!
あああああ!
Posted by: トロ~ロ | April 16, 2006 05:11 PM
わたしには紀田順一郎「古本屋探偵の事件簿」に出てくる古書マニアたちの生態が恐ろしくて恐ろしくて。横田順彌「古書狩り」もコワいです。たしか「崩れる」話もあったような。
Posted by: 漫棚通信 | April 16, 2006 02:01 PM
文春新書『本が崩れる』(草森紳一)の写真!
買おうと手に取ったが、恐ろしいので買わずに
帰宅。
詩人の清水哲男さんが、ある掲示板で
面白いです!と書いている…
で、結局買いました。笑えます!
Posted by: 長谷邦夫 | April 15, 2006 07:26 PM