マンガ「姿三四郎」
マンガとは無関係の本のつもりで読んでたらマンガの話も出てきて、ちょっと得した気分。
よしだまさし「姿三四郎と富田常雄」という本が出版されてます。1942年から1945年という戦争中に書かれ、大ヒットした「姿三四郎」の作者、富田常雄の評伝です。
誰もが知ってるはずの「姿三四郎」ですが、さて、小説版をホントに読んだことのある人がどれくらいいるのか。クロサワ映画で知ってたり、TVやマンガで知ってたり。あるいは、姿三四郎から影響を受けたいろんな作品を見て、読んだつもりになってたり。実はわたしも、最初の姿三四郎体験は竹脇無我主演のTVドラマ(1970年)で、原作読んでません。
誰もが知ってて実は知らない作品と作者を教えてくれる好著です。黒澤明は「姿三四郎」の内容も読まず、広告だけで映画化を決めた、とか、富田常雄の後年の作品に、三四郎がいつも特別出演してた、とか、けっこう意外。
で、この本にちょっとだけ出てくる「姿三四郎」のマンガ化作品の話。
(1)富永一朗:きんらん社1954年−1955年、タイトルは「少年姿三四郎」、少なくとも5巻発行。
作者が富永一朗というのに腰が抜けますが、1954年東映での映画化作品「少年姿三四郎」とのタイアップらしい。
(2)奥田邦夫:少年画報1970年4号−8号連載
竹脇無我主演TVドラマとのタイアップ企画。この時期は少年画報としては末期で、月刊じゃなくて隔週刊になってます。
(3)みなもと太郎:週刊少年マガジン1972年連載
三四郎はホモホモ7キャラらしいです。
(4)本宮ひろ志:週刊少年マガジン1976年−1977年連載
姿三四郎は本宮ひろ志で知ってる、というひとも多いらしい。
(5)真船一雄:週刊少年マガジン2002年連載、タイトルは「風の柔士」。
主人公は三四郎の師匠の矢野正五郎。短期で連載終了しましたから、もし人気があって続いていれば、本宮版と同じようにあとから三四郎が登場する予定だったのでしょう。
姿三四郎は少年マガジンと相性がいいみたいです。姿三四郎って、もちろん柔道家なんですが、空手家、ボクサー、レスラー、相撲取り、忍者などを相手につぎつぎと異種格闘技戦を繰り広げていたらしい。まるで梶原一騎みたい。
かくして、三四郎の闘いは、まるで「少年ジャンプ」の週刊連載マンガのように、どんどんテンションをあげていく。そしてついには、半人半獣の化け物、妖怪のような蜘蛛男まで登場して三四郎の前に立ちふさがるのだ。まるで、夢枕獏の描く伝奇格闘小説のような世界が、この時点ですでに描かれていたのである。
これは面白そう、読んでみたくなるなあ。
Comments
コメントありがとうございます。実は今、「姿三四郎」読んでる最中なんです。で、頭の中がすっかり明治。古沢日出夫はわたしはほとんど読んでないと思います。ユリイカ2006年1月号で漫画少年連載の「冒険ゴット」がレビューされてましたね。
Posted by: 漫棚通信 | March 24, 2006 07:11 PM
「姿三四郎」の原作読みました。黒澤明の映画にはないエピソードに、鹿鳴館での大立ち回りがあります。ここに華族の令嬢などもでてくるのですが、作者の描く女性がさっぱり魅力がなく、おもしろくありません。村井半助の娘さんはおとなしいので、比較的ぼろがでないのです。女が出てこないほうがおもしろい。警視庁の柔術対柔道の試合のエピソードはおとこばっかりなんでおもしろい。桧垣源之助は、映画の月形竜之介のほうがすごいように思います。
まんがでは、わたしは「こがた三四郎」古沢日出夫を読みました。昭和28、9年ころ。これは漫画王の付録で、黒澤の映画そのもののまんが化でした。
Posted by: しんご | March 23, 2006 10:07 PM
まず昭和17年の「姿三四郎」と昭和19年の「姿三四郎(続編)」。その前日譚として矢野正五郎を主人公とした、昭和19年大阪新聞連載の「明治武魂」(単行本時に「明治の風雪」と改題)。ほぼ同時に東京新聞に「姿三四郎(続編)」の続編である「柔」の連載。昭和20年8月から「続・柔」の連載を開始して、終戦をはさんで完結、との経過だそうです。
ところが後の作品のあちこちに三四郎がちらちら顔を出すのが面白いところ。やっぱ大スターだからですね。
Posted by: 漫棚通信 | March 16, 2006 09:10 PM
「姿三四郎」以外にも同一世界を舞台にした「柔」や「明治の風雪」等の三四郎ではない別の主人公の作品もあって一大サーガを形成しているようですね。
Posted by: 流転 | March 15, 2006 10:25 PM