もりもと崇の新作
「難波鉦異本(なにわどらいほん)」で手塚治虫文化賞を受賞した、もりもと崇。これからの展開が注目された作品だったのですが、掲載誌の「斬鬼」が2004年10月号で休刊したのに伴ない、「難波鉦異本」も途絶。ちょっとアレな状態となってしまいました。連載マンガはこういうのがよくあるからなあ。みなもと太郎の連載も中断したっきりだし。
もりもと崇のようなオリジナルの時代物は、マンガとして量産できないし、すごく大変そうです。小説やTVと比べても、マンガは個人営業で、しかも絵に描かなきゃいけないことを考えると、考証が。
もりもと崇作品は、昨年から小池書院の「刃(ジン)」という月刊誌に読切がいくつか発表されていましたが、ついに、今発売中の2006年4月号から新連載が始まりました。待ッテマシタッ。
タイトルは「鳴渡雷神於新全伝(なりわたるらいじんおしんぜんでん)」。舞台は明治15年の神戸−大阪。自由民権論者・岸田俊子(湘煙、歴史上の有名人)と淀川新聞の探訪員・矢藤専三(おそらく架空の人物)の前に、悪のヒロイン「かみなりお新」が姿を現わします。
ヒーロー、ヒロイン、悪役、さらにねらわれてる(?)板垣退助がオープニングで一堂に会する、というのがなかなかの作劇です。
ヒロインの岸田俊子はご存知の方も多いでしょうが、京都生まれの自由民権論者。文久3年(1863)生まれですから明治15年(1882)には19歳。17歳のときに皇后に漢学を進講したというから相当な才女です。明治15年からの各地の遊説では、とんでもないファッションで人々を驚かせました。黒白赤の三枚重ね、文金高島田に緋縮緬の着物と黒縮緬の帯、だったらしくて、「妖艶」だったと言われてますが、そうか? 今残ってる写真を見ると、かなり顔の長い女性ですが。
これに対する「かみなりお新」も実在の人物で、全身に刺青をほどこした稀代の毒婦。土佐出身の女賊で、明治7年に収監。8年後のこの年、破獄したばかりという設定であります。
いやー、山田風太郎の明治モノみたいな感じですね。いやがうえにも期待は高まるのでありました。頼むから掲載誌が生き延びてくれますように。
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