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January 23, 2006

ラショーモンスタイル

 週末はひさしぶりにレンタルでミステリ映画ばかり見てましたが、しかし何ですな、ミステリってのは映画にすると、文法というかシバリがゆるいですなあ。

 ミステリ小説なら、フェアだのアンフェアだのの議論がキビシクて、地の文で「山田が殺した」とあれば、間違いなく犯人は「山田」だし、「殺人」はおこなわれたことになります。だから「彼が刺した」てなふうにぼかした記述になります。

 とくに回想シーンは、「犯人かもしれない登場人物」の一人称ですから、そうわかるように書くし、読者としてもとくにそこにはウソやごまかしがあるに違いないと注意しながら読むわけです。

 ところが映画になると、回想も映像化されるものだから、これはホンマなのやらウソなのやら。観客の頭の上には「?」が浮かびながら映画を見ることになります。この手法を積極的に利用した映画は、クロサワの「羅生門」以来、「ラショーモンスタイル」と呼ばれるらしい。

 今では、一人称視点の映像が複数組み合わされ、全体を構成する、ぐらいの意味でしょうか。

 どうも映画の世界では、回想シーンの映像は、何でもあり、信用しちゃダメよ、ということになってて、これはアンフェアではないらしい。回想シーンに登場するそこにいる人物はいなかったかもしれないし、そんな言葉はしゃべられなかったかもしれないし、事件そのものもなかったかもしれない(もちろん真実かもしれない)。

 さらに観客が、これは地の文に相当す部分だよなー、と真実だと思って見てた展開が、実は長い長い回想シーンでしたと、あとから明かされた日にゃアナタ、どうせいっちゅうの。

 これは謎を解こうと思いながら見る観客のつぶやきですが、それでもだまされる快感はあります。つくる側からすると、ミステリ映画のこのゆるさは、ラストのどんでん返しの連続、とかつくりやすいような気がしますね。

 で、マンガの話になりますが、マンガにこういう「ラショーモンスタイル」を使ったマンガってあったっけ。すぐ思い浮かぶのが手塚治虫の名作短篇「落盤」ですが、金田一少年以後ミステリマンガもいっぱいあるんですから、壮大な記述トリックみたいなのはないかしら。読んでみたいなあ。

 ないものねだりをしてもしょうがないのですが、いやね、最近、コナン読んでたら、謎の人物を、真っ黒けのつるりんとした人形みたいに描写してるのを見て(以前に金田一少年でいっつも使ってた手ですね)、いまだにこれかよ、と思ったもので。この謎の人物を黒人形で描く手法、たしかにマンガ特有のものでありますが、ちょっと安直にすぎないかい。

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