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December 05, 2005

「このマンガがすごい!」は、まだまだすごくない

 宝島社「このミステリーがすごい!」は、反・権威からスタートして、いつのまにやら自ら権威になっちゃったというコースをたどりました。さて、今発売されてる「このマンガがすごい!」はどうなるかしら。

 ミステリーとマンガは、発行点数が膨大すぎて、すでに個人ですべてを読むことは不可能、という意味では似ているのですが、マンガは1点ごとの発行量が多い=すなわちそれぞれの作品のファンの絶対数が多いわけです。さらにファン層がすでにミステリー以上に細分化されている。そういう状況で、オトコ版63人、オンナ版45人によるアンケート結果から権威にまでたどりつくのはなかなか難しいかな。

 とりあえずは、新しい賞ができたと考え、年末のひとつの趣向として読むべきでしょう。映画でいうなら、キネ旬ベストテンに対抗する、昔の映画芸術ベストテン、今なら映画秘宝ベストテンぐらいの位置に立てれば、面白いものになるのでしょうけど。

 今年のアンケートの結果、オトコ版のベスト5が、(1)PLUTO、(2)DEATH NOTE、(3)失踪日記、(4)働きマン、(5)鋼の錬金術師、てのは、それなりに納得できちゃいますね。そのぶん、オドロキはありません。

 オンナ版にいたっては、ベスト3が、(1)ハチクロ、(2)のだめ、(3)NANA、と誰が考えてもこの三つだろってな結果ですからねえ。

 ただし、そのあとに続く(4)バルバラ異界、(5)プライド、ってのは、ファンとしてうれしい。

 この手のものは、なぜこの作品がっ、というのが面白いのですが、今年はオンナ版の20位、三条友美「犬になりたい」に笑った。かつてのエロの巨匠がこの位置に来るとは。だれが投票したかというと、掟ポルシェと大西祥平だ。わはは。

 いずれにしてもこういう本は、わたしの知らない傑作マンガをいろいろ教えてくれるわけで、ありがたいことでございます。

 ちなみに、わたしの本年度ベストは、五十嵐大介「リトル・フォレスト」(「魔女」よりこちらを取りたい)と、マルジャン・サトラピ「ペルセポリス」(日本マンガじゃないけど)です。

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Comments

「このマンガがすごい!」では、投票段階でその年のマンガがリストアップされてたのですか。これは驚きました。膨大な量でしょうから、本当にきちんとしたリストだとすると、良い資料になるでしょう。

Posted by: 漫棚通信 | December 11, 2005 05:17 PM

最初送られてきたリストには
『陰陽師』が、男性側にありました。
問い合わせたら、編集部で討議され
やはり女性側ということになった。

Posted by: 長谷邦夫 | December 11, 2005 12:29 AM

最近は少女マンガがヒットをとばしていたから、分けたくなる気持ちも解らなくも無いですが、だからこそ男女一緒くたに「マンガ」という括りでやるべきだったかもですね。
はなっから分けられてしまうと、普段あまり少女漫画を読まない私なんかは一生名作に出会えない可能性もあるわけで。

でも、その副産物として三条友美のランクインというのもありますが。

Posted by: FOO | December 10, 2005 11:44 PM

『リトル・フォレスト』『魔女』両方描ける
なんて!ほんとにすごいですよね。

Posted by: 長谷邦夫 | December 09, 2005 05:44 PM

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