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December 30, 2005

平田弘史の年でした

 2004年には平田弘史の本が5冊も発行されて、うっひゃーと驚いたわけですが、なんのなんの、2005年はなんと、月刊・平田弘史状態、計12冊も発行されてしまいました。

 これはもう、2005年の十大ニュースに選ばなきゃ。2005年は平田弘史の年でありました。

 本年12月は、青林工藝舎から「無名の人々 異色列伝」、リイド社からは「怪力の母」1巻。ともにかつて講談社ミスターマガジンに異色列伝のシリーズとして連載されたものですから、別々の出版社からの発行とはいえ、これは計画的に違いない。

 「怪力の母」は、1巻ではまだ豪傑女性のエピソードだけですが、来年発売されるはずの2・3巻で息子の代の話になりますと、食前食後にオナニーする三男とか、エーマイナーで歌う長男とか、スターキャラクター首代引受人のゲスト出演とか、ムチャぶっとんだオハナシが展開します。著者は描きたい絵やストーリーがあると、全体よりも細部を追っちゃうんだよなあ。ストーリーの整合性はともかく面白いっ。

 そして、本年最後が「弓道士魂」完全版の発行であります。三十三間堂の通し矢を素材にした名作です。少年キング連載後、大都社で単行本化されたときに未収録となった約70ページを掲載した完全版となってます。

 で、これを読んで考えちゃいました。今回の完全版は430ページ超のぶ厚い本ですから、かつての大都社版などの短縮版は、おそらくページ数の問題でページをカットしたものなのでしょう。

 未収録部分は、まず、主人公が幻想の中で那羅延堅固という仁王さまみたいなオバケに会うシーン。主人公の首がはねられ宙に飛び、身体から流れた血が寺の庭を血の海に変え、そこへ天空から首がおちてくるという絢爛かつ血まみれのイメージが展開して、読者を驚かせます。もう一箇所は、ラスト近く、主人公の後輩が、弓の修行で主人公と同じような苦しみを味わうシーン。

 これらのシーンをカットした短縮版と完全版を読み比べてみますと、はっきり申し上げて、短縮版のほうが冗漫さがなくなってて、いいんですよ。

 カットされた幻想シーンは、斬られた主人公の首がどアップでこっちに飛んで来たりして、確かに面白いんですが、バランスを失して長い。主人公の後輩のエピソードは、主人公が通し矢に成功したあとの話ですから、ラストに向かうテンポをじゃましてるとも言えます。

 わたし、実はこれまで、雑誌連載時のものを全部収録した完全版こそ、ベストであると考えておりました(HUNTER×HUNTERとかは別にして)。手塚治虫なんか、いつも自作をいじってましたが、あれは改悪としか思えなかった。ところが今回、「弓道士魂」の完全版と短縮版を比べてみて、再編集というのも、悪くないんだなと考え直した次第であります。

 さらに、ページ単位で構成されるマンガは、映画のフィルムを切るようには再編集できないのですが、もし将来、紙じゃなくてモニター上で読むマンガが主流になることがあるなら、こういう再編集がどんどんできるようになるでしょう。そうなると、いくらでも無限に修正できちゃうから、「完全版」なんてものはなくなっちゃうのでしょうね。

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Comments

ああ! あの三十三間堂の通し矢の時代劇漫画は平田先生だったのですか! いやー、子供のころに中途半端に読んで記憶に残っていました。また買いたい本が♪

「再編集」の良さは大学生時代に「アンドロメダ病原体」という映画を自主上映して気がつきました。
TVで見たときはスリル&サスペンスで、ドキドキハラハラだったのに、本編ノーカット版はストーリーが冗長で盛り上がりに欠けて、撮影テクニック的にもパンとズームしか使わないので、画面的にも非常につまらん映画でした。
上映会を共同企画した漫研の会長さんも「パンとズームしかない。クローズアップすら無い。この時代に驚いたよ。」と言ってました。

Posted by: トロ~ロ | December 30, 2005 06:30 PM

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