« 豪華な同人誌「手塚治虫と6人」 | Main | 山川惣治と空飛ぶ円盤(その2) »

November 11, 2005

山川惣治と空飛ぶ円盤(その1)

 前回のエントリで書いた「手塚治虫と6人」に登場する7人の中で、いちばん記述が少なかった人物は、山川惣治でした。

 山川惣治こそ絵物語界の巨人であり、小松崎茂よりも、永松健夫や福島鉄次よりも、ナンバーワンでありました。そのわりにきちんとした評伝とかないんだよなあ。

 戦後、1947年に手塚治虫「新宝島」が発行され戦後マンガの歴史が始まったのですが、同じ年、山川惣治「少年王者」、永松健夫「黄金バット」も発行され大ヒット。絵物語ブームの先駆となります。

 山川惣治の有名作品といえば、「少年王者」「少年ケニヤ」「ノックアウトQ」など。「少年ケニヤ」はご存じ日本少年版ターザンが活躍するビッグヒット。「少年王者」はその原型。わたしは「王者」のほうが好きです。コッチの絵の細かさは、「ケニヤ」と比べ物にならないくらいすばらしい。

 「ノックアウトQ」は漫画少年に連載された作者の自伝的な作品で、「あしたのジョー」がこの作品に影響を受けてるというのは有名な話です。つまり山川惣治は空想科学物語的な作風でありながら、戦後マンガの流れでいうと、手塚治虫系じゃなくて梶原一騎系の源流みたいな立場のヒトでした。

 山川惣治の魅力は、まずなんといっても美少年の造形です。目はパッチリと大きく、それまでの伊藤彦造タイプの切れ長の目の美少年と違い、西洋っぽい。身体能力は、きゃしゃなカラダなのに超人的にチカラモチ。

 そしてしっかりした人物デッサンで繰り広げられる、息もつかせぬアクション、アクション、アクションの連続(後期の作品の格闘場面にはちょっと腰がすわってなくてバランス悪いところもありますが。ま、これは今の目から見ると、ということで)。山川惣治は人物を描くときも顔から描かずに、肩の線から描いたり、ときには影から先に描いちゃう、というのは小松崎茂の証言です。ふつうできませんよ。

 さらに動物の絵はすばらしく、おそらく彼以上に動物を正確に、かついきいきと描いた作家は、現代まで範囲を広げても、存在しません。

 少年向け月刊誌で大流行した絵物語ですが、そのピークは短く、1950年代後半から急激に退潮に向かい、1965年ごろにはほぼ姿を消します。マンガのコマ構成・フキダシ・擬音の進歩は、絵物語以上に物語ることを可能にし、絵物語を駆逐してしまいました。山川惣治は自身で雑誌「ワイルド」を短期間発行しますが、1968年には引退生活に入りました。

 1971年から少年ジャンプに連載された川崎のぼるの「荒野の少年イサム」は原作・山川惣治。わたしの大好きなマンガですが、これは山川惣治が文章で原作書いてたわけじゃなくて、1952年おもしろブックに連載された山川惣治の絵物語「荒野の少年」のマンガ版リメイクです。

 1984年角川で「少年ケニヤ」がアニメ化されるにあたって、いつもの角川商法のように「少年ケニヤ」が文庫化されたのですが、1983年創刊された「月刊小説王」という雑誌に山川惣治ひさびさの作品、「十三妹」(シーサンメイと読みます。13人の妹じゃありません)が連載されました。

 これが山川惣治の最後の作品となりました。1992年没、享年84歳。

 さて、山川惣治と空飛ぶ円盤の関係は何かというと。

 高垣眸「豹(ジャガー)の眼」という戦前の少年小説を読んでおりましたら、これがインカの秘宝をめぐってのお話。そう言えば、山川惣治にもインカが出てきた作品があったなあ。

 「太陽の子 サンナイン」というタイトルで、集英社コンパクト・コミックスから1967年に全3巻で発行されたものです。第1巻インカの秘宝(1.宇宙からきた男、2.アマゾンの忍者部落、3.大蛇の木の下を掘れ)、第2巻死の水爆要塞編(1.黒い暗殺者、2.空飛ぶマグネチックカー、3.宇宙大母船)、第3巻ブラックシンジケート編(1.死の暗殺団きたる、2.ゆうれい部落のバット族、3.すすめ地底ロケット)。

 いつ、どこの雑誌に連載されたものか、あるいは書き下ろしなのか、初出が記載されてないのでわかりません。登場人物のセリフに「このあいだオリンピック見物に日本へいった」とありますから、1964年以降の作品であることは間違いないようです。

 情報を求めてネットで検索していたら、岩本道人氏が書かれたこのようなページがありました。

 ここに、宇宙友好協会(CBA)という1957年に結成された円盤運動団体が、テレパシーに導かれて宇宙人とのコンタクトに成功。地軸が傾き大災害が起こることを予言して大騒ぎ(1960年)。さらには、新興宗教化して北海道にピラミッドを建設(1967年)。という顛末が語れていますが、この団体に山川惣治は心酔していたらしい。ほほう。

 で、山川惣治のエピソードが出てくる、平野威馬雄「空飛ぶ円盤のすべて」(1969年高文社)を読んでみました。

 以下次回。

|

« 豪華な同人誌「手塚治虫と6人」 | Main | 山川惣治と空飛ぶ円盤(その2) »

Comments

TBさせて頂きました。「少年ドラマ、怪傑黒頭巾」DVDは、本日発売です。原作は、高垣眸さんです。

Posted by: 広報担当 | November 25, 2005 11:22 AM

「サンナイン」は中日新聞に連載・・・ではなかったでしょうか。

Posted by: しんご | December 08, 2005 12:06 AM

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 山川惣治と空飛ぶ円盤(その1):

» 怪傑黒頭巾、報告4!(1) いよいよ25日発売! [~goo goo g'joobな散文日記~]
? コチラでは、“Special Features”フォト・ギャラリーに無い、超貴重写真を掲載します。 今回は、杉田&水野です。! 発売日:2005/11/25 製作年 : 1976製作 国 : 日本 演出 : 安江進 原作 : 高垣眸 脚本 : 大薮郁子 音楽 : クニ河内 制作 : 黛... [Read More]

Tracked on November 25, 2005 11:23 AM

« 豪華な同人誌「手塚治虫と6人」 | Main | 山川惣治と空飛ぶ円盤(その2) »