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November 26, 2005

キャラの描き分け

 それぞれの作家で、人間の顔というのは、何人まで描き分けることが可能なのでしょうか。登場人物が多い作品は大変。手塚治虫のスター・システムってのは多数の登場人物の交通整理に、かなり有効な手段だったのかもしれません。

 ひぐちアサ「おおきく振りかぶって」の単行本を買うたびに、こいつ誰だっけと思うわけでして、以下にメモしときます。 

 主役・キャッチャー阿部がタレ目の黒髪。ピッチャー三橋が白髪でカッパの口。キャプテン花井が丸坊主。四番・田島が黒髪で鼻にソバカス。このあたりは主要登場人物だから間違えない。

 黒髪で頬にソバカスなのが泉。トーン髪の短いほうが栄口。トーン髪の長いほうが水谷。みんな同じ顔で大変わかりにくい。

 あと、目が小さくて丸坊主が巣山。沖はもうひとつ顔が一定してませんが、鼻が丸くて黒髪。補欠・西広は地味顔の頬骨の張った黒髪。

 さあ、これでアナタも完璧に人物の見分けができるように。たとえば「おお振り」5巻で、2回表で花井君がヒットを打ったとき、ベンチで「ナイバッチー!」と言ってる3人は、奥から、水谷、三橋、栄口だっ。

 ひぐちアサは、けっして多種類の顔のパターンを持ってる人じゃなさそうですが、ま、野球マンガで登場人物多いしね。相手チームや応援団までいれると、百人以上登場することになりそうですし。

 じゃ、幸村誠「ヴィンランド・サガ」はどうかというと。

 1巻冒頭で、傭兵のボス、性格が悪く、目つきの悪いアシェラッドという白髪のオッサンが登場します。そして主人公の過去の回想になって、アイスランドの小さな村に性格の悪い、目つきの悪いハーフダンという黒髪のオッサンが登場。

 に、にている。わたしゃてっきり、アシェラッドとハーフダンは血縁じゃないかと思ってたんですが、2巻を読んでみると、あれれ、どうも何の関係もないみたい。生き別れのお兄さん?

 さらに、かわぐちかいじ「ジパング」。

 これも登場人物多いのですが、自衛艦「みらい」の梅津艦長は、つぶらな瞳に大きな鼻。そして「みらい」の尾栗航海長もまるで親子のごとく同じ顔。

 さらに核兵器を作る倉田万作さんも、まるきり同系等の顔でして、20巻では、倉田さんと梅津艦長が直接対決。このシーン、やっぱりちょっと変でした。

 日本の、キャラ描き分けチャンピオンは誰か。やなせたかし、みなもと太郎、手塚治虫、浦沢直樹、という番付でどうでしょうか。

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Comments

ダメじゃないです、それは面白そうです
ただその場合、問題は文章の枕に当たるこの部分で

>それぞれの作家で、人間の顔というのは、何人まで描き分けることが可能なのでしょうか。

漫画家の画家サイドのみをクローズアップしているように読めてしまう点です
漫画家が人物をクリエイトするという「総合的な行為を指す」と明確に書いて頂ければ、おそらく素直に意味は伝わるでしょう

絵画的な表現そのものは、当然そのスタイルや選択される手法によって制限や自由が大きく違います
それぞれの漫画家によって正に千差万別でしょう
だからこそ個性があり、作家に対して間口が広く、マンガという表現は豊かで面白いのだとも思います
ですから最初からその事を明確にした方が、誰それは上手いor下手だという、あまりにも主観に囚われた幼い観方に堕さず
結果的には実りのある考察を重ねることが出来ると思うというわけです

楽しみにしております
この稿、無理をせずにお続け下さい

Posted by: たにぞこ | November 27, 2005 03:44 PM

やなせたかしと浦沢直樹の比較、ダメかなあ。線で描かれたマンガ内人物という意味では同じなんですが…… キャラクターについて考えるのはおもしろくなりそうなので、また書いてみます。

Posted by: 漫棚通信 | November 27, 2005 03:15 PM

やなせ、みなもと両氏の描き分けはデザイナーとしての技量に拠るものでしょう
この分野でならば故・杉浦茂さんが横綱ではないでしょうか
対して浦沢さんは画家としてのスキルを問われるスタイルだと思いますが
この分野でならば先ず谷口ジローさんが思い浮かびます
また欧亜を問わず、海外のコミックスならばもっと描き分けられるアーティストはごまんと居ますね
こちらは画力=描き分けヴァリエーションのスタイルなのでしょう
そしてその中間、非常に日本マンガ的な志向のスタイルが故・手塚であり、同様に石ノ森章太郎なのだと思います

それぞれのスタイル・志向で、それぞれ求められているものは違うのではないでしょうか?

いずれにしてもいささか乱暴な番付だと感じました

Posted by: たにぞこ | November 27, 2005 12:24 PM

こちらでは初めましてです>長谷さん

「おそ松くん」は六つ子で同じ顔なので、セリフだけで判断して読んでいました。六人の役割にそんなに違いがなかったように思うので、あまり「キャラクター的」には気にしていませんでした。
むしろ私自身が一卵性双生児なので、非常に単純に喜んで読んでいました。ホント、昔は読者もスレてなかったなぁ(笑)

確かに「キャラ」的には「ちび太」の方が面白くて使いやすいですよね。そういえば、以前にコンビニ・チェーンで「ちび太のおでん」を売っていました。

ヴィンランド・サガ、2巻出てるんですか!
買わなくちゃ!

浦澤さんの「日本人の可愛い女の子」と「ヒロインに片思いなドジ男」は、顔がみんな同じなんですけどね(苦笑) YAWARA、HAPPY、マスター・キートンとか。
最近の評判作ではどうなんでしょう、読んでいないので何とも。でも、PLUTOでも外国人のサブ・キャラなんかどこかで見たような顔がしょっちゅう出てきます。
「絵も見せ方も上手いし、そつが無いし、ストーリー運びも上手。でも、絵自体にあまり深みは無い。あくまで記号的な上手さ。」という印象です。

Posted by: トロ~ロ | November 27, 2005 03:39 AM

『おそ松くん』も現在の感覚で連載
したら、6人がソックリだが、よく見ると
誰かが特定できるレベルでかき分け
ないと面白くないかも知れませんね。
昔は楽だったなあ~。

Posted by: 長谷邦夫 | November 26, 2005 10:49 PM

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Tracked on December 14, 2005 12:26 AM

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