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October 25, 2005

石森章太郎の「少年」版「少年同盟」

 「ガロ」1995年1月号に「心に残る漫画特集」というのがありまして、いしいひさいちが描いた古城武司「ノックアウト勇」のパロディというような珍品も載ってました。ここに夏目房之介が「少年同盟の疑惑」という一文を寄せていました。

 「少年同盟」は石森章太郎の作品です。夏目の文章によると、

・ふつうの少年(多分小学生)が、ある日突然何の前触れもなく(当然必然性もなく)ロボットに拉致されて、悪の組織と対決する少年同盟という組織に入ることになってしまうという、じつに唐突なマンガであった。

・早い話が、子どもたちのてっとり早い超人願望を地続きの等身大で満足させようという話で、そういうところ当時の石森はホントにうまかった。

 この作品、虫プロの虫コミックスが刊行開始された1968年に、全3巻で刊行されています。「朝日小学生新聞」に1967年から1年間連載されたもの。

 ところが、夏目房之介の文章では、「少年同盟」は「少年」に連載されてたはずで、しかも自分の記憶にある、主人公とガールフレンドの胸キュンのいいシーンがないっ、いったいあれは自分が捏造した記憶だったのかっ、という「疑惑」が書かれてました。

 実は、この虫コミックス版「少年同盟」って、ずいぶんな作品でして、ストーリーはともかく、絵がムチャ荒れてて描きなぐり状態。石森章太郎のもっとも悪い部分が出た作品でした。まあそれでも読ませてしまうのが石森でもあるのですが。

 しかもクライマックス、3巻ラストの10ページは、こりゃなんだ、石森の絵じゃないっ。単行本制作時に、もとの原稿をなくしたのか。それとも新聞の締め切りに間に合わなくて誰かが代筆したのか。コレを「小学生新聞」に載せたとしたらオドロキです。まるきり小学生の絵みたいなの。こんなのでした。あるいはこんなの。せめて単行本にするとき、修正してくれよー。

 で、今回復刊された、「少年」1962年4月号に、「少年」版「少年同盟」の連載第1回が掲載されてます。「小学生新聞」版からさかのぼること5年。石森がまだトキワ荘に住んでたころの作品です。1962年の4月号から12月号までの連載でした。

 これがなんとまた、えらくいい作品で。絵はていねいでキャラクターには色気がある。女の子もかわいいぞ。コマも横長だったり縦長だったりずいぶん工夫してます。のちの作品はトレスや再構成じゃなくて、まったくの描き直しだったのね。だったら「少年」版には、夏目房之介の記憶にあるシーンもあったかもしれない。

 かつて曙出版から刊行されたことがあり、石森ファンクラブでも復刻版を出したそうです。

 全集には、「小学生新聞」版よりも、「少年」版のほうをぜひ収録してね。

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Comments

初めて書き込ませていただきます。
私も記憶だけで書きますので間違っていたらご容赦いただきたいのですが、小学生新聞版の「少年同盟」の最後の2Pは本当に小学生の描いた(少なくともそれにもとずいたもの)です。たしかクライマックス直前(敵の首領のマスクが取れるところ)で石森氏の連載はおわり
「皆さん、この続きを考えてマンガにして送ってください、最優秀作品は正式な最終回として掲載します」との発表があり、その「最優秀作」が最後の2Pのはずです。

Posted by: 流転 | October 26, 2005 12:04 AM

『少年同盟』は記憶がないのですが、同じ虫プロから出た『怪傑ハリマオ』は、ぼくも頼まれてトレスしています。土山よしき、ひおあきら、細井ゆうじ、そしとぼくの4人でしたが、ひおあきらあたりは、けっこう個性が出てしまっておりました。

 そもそもトレスの元になったのが、講談社の資料室にあった「少年マガジン」の合本(数冊を1冊にまとめて閉じ、堅い表紙をつけてある)で、「広辞苑」みたいに厚くなっているのを開いて、『ハリマオ』のページを写真に撮り、印画紙に焼いたものでした。厚い合本を無理に開いているので、当然、写真になったものは、ちょうど、ここで見本になっているように、どうしても歪んでしまいます。

 グニャリと枠線がカーブしているのを直線にして、人物なども歪んでいるのを、できるだけ元どおりに近い形に修正する……という作業をするわけですが、元が大幅に曲がり、歪んでいるんですから、それを元通りにするのは不可能というものです。

 ちなみに「少年」版の『少年同盟』もリアルタイムで読んでましたよ。「少年」では『幽霊船』『秘境三千キロ』につづく作品でした。

 ぼくは、この頃、「少年ブック」を買っていました。『ジョージ・ジョージ』の頃です。小学生は、1冊だけ購読し、近所の友達が買っている別の雑誌と交換して回し読みする……というのが普通でした。

 1963年に中学生になると、「少年サンデー」「少年マガジン」に転向するのですが……。あ、ほかに「ボーイズライフ」があったな。

Posted by: すがやみつる | October 26, 2005 01:24 AM

コメントありがとうございます。
>流転さま
おお、あれってホントの小学生の絵でしたか。絵がつたなくなってから、少年同盟はどういう展開をするかというと、
悪のボスが核爆弾のスイッチを押そうとする→人質の博士は実は同志の変装で(伏線なしなの?)、ボスからリモコンを取り上げる→ボスがリモコンを取り戻し、スイッチを押すが何も起こらない→実はさっき落としたとき、リモコンは壊れていた(おいおい)→ボスを倒す→その後驚愕のラストが→すべてのことは少年同盟を試すためのお芝居であった(おーい)。
絵だけじゃなくてストーリーも小学生の作と言われて納得しました。

>すがやさま
ハリマオの虫コミックス版、トレスでしたか。貸本用の原稿は基本的に買取。雑誌連載作品の原稿も、出版社、著者ともに意識が低かったみたいですね。白土三平・長井勝一対談を読み直してますと、白土三平が「サスケ」の原稿を光文社からきっちり返してもらってた、という話が出てきます。ということは、他の人は鷹揚だったということでしょうか。新書版ブーム以前は、みんな単行本用の二次使用なんか考えてなかったのかな。

Posted by: 漫棚通信 | October 26, 2005 02:07 PM

 赤目プロの作品は、必ず最後に原稿が完成した日(?)の日付が入っていましたが、あれも、原稿管理の手段のひとつだったとか。つい先日も、すでに定年で出版社をやめた元少年雑誌の編集者と話したとき、そんなエピソードをたくさん教えてもらいました。

 石ノ森先生は、ぼくが出入りしはじめた頃には、原稿管理がきっちりしていましたが、コミックスのなかった時代は、やはり鷹揚だったみたいですよ。『二級天使』の原稿だって、はさみで切って、ファンに分けてあげたりしていたみたいですから。ぼくは、切られた原稿の実物を見たことがあります。

Posted by: すがやみつる | October 27, 2005 02:14 AM

赤塚不二夫のアッコちゃんなども
コマごとに切ってファンに送っていました。
サービスです。たしか横山孝雄の案だったか…。


このやりかたは、貸本時代のやりかたと
まったく同じです。当時はそんな感覚だった。
横山は、単行本整理ではおそ松くんの
紛失原稿のトレスなど、その他、ずいぶん
自分の手でやっています。
曙出版本に多いはずですね。

Posted by: 長谷邦夫 | October 28, 2005 01:49 AM

なるほど。となると、当時の人気マンガ家のところでは、単行本出版のためにあっちでもこっちでも自作のトレスをしてたわけですか。全集も、オリジナル原稿はもうないし、雑誌からの復刻は難しいから、やっぱりトレス原稿をもとにすることになりそうですね。

Posted by: 漫棚通信 | October 28, 2005 07:13 PM

作画グループ代表、ばばよしあき氏から聞いた話。
彼が高校生の頃、曙出版をたずねた所、ちょうどハードカバーの「少年同盟」が出たばかりで、印刷所から原稿の束がデンと戻されておりました。
それを嬉しげに一枚一枚みていたばば君に、当時の編集長が「ああそれ、もうイラナクなったからアゲルよ、持ってってイイよ」と言ったそうです。
「もらっときゃよかったよなー、そしたら今、返却するなり何なり、どうにでも出来たんだよなー」と、ばば君は何度も述懐しています(今も)
「どうしてもらって来なかったのさ」
「やっぱ高校生だったんだよなー、恐かったような気がする、アレを全部なんてさ。恐る恐る、一枚か二枚抜いて,{じゃ、これだけ戴いて行きます}つって帰った。残ったのはどうせ捨てられちゃうのは判ってるのになー、今ならモラうよ。だけどあん時きゃできなかったよなー」
…まあ、そういう時代だったんですね。

Posted by: みなもと太郎 | October 28, 2005 08:50 PM

石森氏側としては、曙出版の原稿は返却してもらうつもりだったのでしょうね。原稿もらってきちゃった場合、所有権は善意の第三者であるところのばば氏に行くのかしら。話を現代と混同してはいけませんが、どうしてもまんだらけ事件を連想してしまいます。

Posted by: 漫棚通信 | October 29, 2005 09:28 PM

石森氏の「少年同盟」について思いついた事があって書かせていただきます。
少年版、小学生新聞版の双方に登場してくる主人公のサポート役のアンドロイド「イライザ」はもともとは女性タイプのとして想定されていたのではないでしょうか?
その「イライザ」という名前から連想されるものはミュージカル「マイフェアレディー」やそのプロトタイプ「ピグマリオン」のヒロインです、石森氏は最初のアメリカ旅行でブロードウェイで「マイフェアレディー」を見て大変感銘をうけた旨がその著書「世界まんが歩記」にかかれています。
そこから石森氏は「マイフェアレディー」とは逆に主人公の少年を教え導く存在として母性的な女性アンドロイドを考えていたのではないでしょうか?(後の「ロボット刑事」のKとマザーの関係を連想させます)ただこれは当時の少年マンガの規格に合わずやむなく「中性的」な少年のアンドロイドになったのでは?などと「妄想」をたくましくしています。(「鉄腕アトム」でもアトムはもともと「女の子」のロボットとして考えていたとの手塚治虫氏の発言もあり、もしかすると、と思っております)

Posted by: 流転 | November 02, 2005 11:05 PM

なるほど、そういえばイライザは、なんとはなしに中性的。男装の麗人であると考えながら読むと、ずいぶん感じが変わりますね。

Posted by: 漫棚通信 | November 03, 2005 05:36 PM

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Tracked on October 29, 2005 10:00 PM

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