もうひとつのポーの一族「バルバラ異界」
新刊を買うたびに、前巻を読み直さなきゃ展開がよくわからないという作品がありまして、もちろん「陰陽師」がその代表ですが、萩尾望都「バルバラ異界」もそんな感じ。今回、4巻でめでたく完結して、1巻からイッキ読みだー。
前作「残酷な神が支配する」は、かんべんしてくれよいつ終わんだよというくらい長い作品でしたが、「バルバラ異界」は、4巻できっちり終わってよかった。久しぶりのSFであります。
複数かつ多数のプロットが入り混じっております。(1)エズラ=ヨハネの一生の物語。付随して、彼と関係した女たち、菜々美、明美の物語。(2)エズラ=ヨハネが属する火星人の一族の物語。太古の火星から現在のアフリカの一族、さらに火星に移住した地球人にまで何やら影響を及ぼしたらしい。(3)夢で未来のバルバラを救う青羽の物語。繰り返し悲劇を経験したあと、ラストではハッピーエンドを迎えます。(4)トキオとキリヤの親子の愛の物語。実は親子じゃなかったけど、BLと読み変えるのはちょっとまずいかな。(5)そして全編のオチは、夢による過去の改変です。
さらに枝葉はいっぱいあって、登場人物は膨大。ああ、複雑。
夢については、(3)までは納得してたけど、(5)に至って、夢にそこまでのチカラを与えちゃったか、と唖然としちゃいました。極限的な夢オチですな。これが通れば何でもあり。萩尾望都スゲエ。
そして、火星人の一族。彼らは不死を求めているが短命。しかし心臓を食べることで他人の記憶を受け継ぎます。個体を越えて記憶を継承することで不死を得ているともいえます。つまり、心臓=血、記憶=不死なわけでして、おお、ポーの一族じゃないか。アフリカでこっそり自分たちだけの伝統を守ってるというのもそれっぽいぞ。エドガーの血族はそんなところにいたのか。
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