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September 18, 2005

イラン人少女の物語「ペルセポリス」

 炎上してるブログはオモロイわー、と人の傷口に塩をすりこむようなことを言う同居人から、しばらくネットすることならじ、と厳命されまして、謹慎しておりました。

 とは言え、仕事の合間にこっそりとコメント欄を見ながらなんとか収拾したいとは考えておりましたが、どうもいい手が見つからず。とりあえず、みなさまのご批判に対しましては、前回までに書いたことがわたしの最終意見とお考えください。ご不満なかたがいらっしゃるのは承知しておりますが。


 一応、今回は通常業務とさせていただきます。


 イランのマンガ状況がどのようなものか、まったく知らないのですが、序文に「イラン初の漫画」と書かれてある作品があります。マルジャン・サトラピ「ペルセポリス」。原著は2000年から2003年にかけてフランスで発行されました。第1巻の副題が「イランの少女マルジ」、第2巻が「マルジ、故郷に帰る」。これが涙なくしては読めないマンガでありました。

 「ペルセポリス」とは、学校で習いましたっけ、アレキサンダー大王に破壊された古代ペルシャの王都です。この本は副題からもわからるように、著者の自伝。著者は、1969年生まれ、テヘラン育ちの女性です。両親はインテリで、彼女はイランのフランス語学校で教育を受けました。そこへ1979年のイスラム革命。

 特に第1巻は、著者が10歳から14歳までのお話。突然に政治体制が変わり、10歳の少女たちは急にヴェールをかぶるように指導されますが、ヴェールをいろんな遊びに使うだけ。これがオープニング・シーンです。

 パーレビ国王が亡命し革命がなされたはずなのに、国家はイスラム原理主義に。父親の友人たちは死亡や亡命。革命家のおじは逮捕、処刑されて少女の心は千々に乱れます。さらには1980年に始まったイラン・イラク戦争。テヘランの爆撃。多数の死者。激動の少女時代です。

 絵はモノクロのコントラストを強くしたタッチで線は太め、フランスのバンド・デシネというより、スピーゲルマンの「マウス」を思わせます。暗いお話なのに、モノローグや絵はユーモアを忘れていません。

 子供時代の彼女は、ペルシャ語の「弁証法的唯物論」というマンガ(←こういうのがあったんですなあ)を読んだりしてますから、イランにマンガがまったく存在しなかったわけではなさそうです。その本の作者がイラン人かどうかはわかりませんが。

 この時代イランでは、少女が少女のままでいることはできなかったようです。彼女は神と会話するのをやめること、タバコを吸い始めることで、少女時代に別れを告げます。

 第2巻になると、著者は14歳、ひとりでオーストリアに留学します。パンクで、マリファナで、失恋で、の生活を送り、このあたり、1巻より青春彷徨という意味で日本人読者にとって普遍性が高いかもしれません。

 18歳でイランに帰国。革命防衛隊が跋扈する恐怖政治の中、絵画の勉強を通じて自立してゆくまでが描かれます。ヴェールの微妙なかぶり方や、隠れたパーティで反抗の意思を表明するような生活でした。

 これはイランの現代史を描いたマンガですが、家族の愛の物語であり、女性の自我形成の物語であります。イランとイラン人についての知識を得られるだけでなく、この現代の地球上で、人間がいかに生くべきかを模索した感動の書。傑作です。

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Comments

>>12
いや、あれ全部あなたに向けて言ったわけじゃないけどもー。どうもね、管理人擁護もちょっと行きすぎな気がすんのねー。
まあ、あなたがそこまで管理人に全面賛成してるわけじゃないって言うのと同じく、自分も管理人に全面反対なわけじゃないんでー。その立場の自分でも、ちょっと今回の管理人の対応どうよ?って思ったりすんのに管理人にごちゃごちゃえらそーなこというな!ていうコメントつけるの見ると、(あなただけのこと言ってんじゃないよ)ちょっと擁護過剰のように思えるのねー。

えらそうですかね?っていってるけどーw、偉そうだって言い出したのはそっち。こっちを偉そうだと思うくらいなら、あんたも偉そうな範疇に入るでしょ、ってことを言ってるんであって、はじめからあなたは偉そう!ってこっちが怒鳴ってるわけじゃないんでー。それに、最初のあなたのコメントは十分偉そうだと思うけど?

まあ、でももう管理人も実際少しの責任どころかなーんにも気にしてなさそうだし、そんな人にこれ以上気にかけるのも不毛かなー。

Posted by: 69 | September 20, 2005 04:10 PM

 まだ引きずってるな、
もう管理人さんは「とりあえずの最終意見宣言」をして別の話題に移ってるんだから、
続きは2chにでもスレ立ててやった方がいいよ。
あっちの方が、気兼ねなく議論できるだろうし。

Posted by: マ | September 19, 2005 04:55 AM

> どうもいい手が見つからず。

いい歳こいて、謝り方の一つも知らんのか。

Posted by: 奈々氏 | September 19, 2005 03:21 AM

題名書き間違えました。
×「ベルセポリス」
○「ペルセポリス」Persepolis
目が悪くてごめんなさい。

Posted by: 匿名きぼんぬ | September 19, 2005 02:13 AM

TAMさん
>管理人はエマなぞ読まなければいい
コレは、ちょっと違う。管理人さんは、エマを読んでものを言いたかったわけですから。エマ読むのも「自分の」サイトで何を言うのも自由。もちろん、それでサイトが炎上することがあっても文句は言えない。ブログだし。

もちろん皆さんがなにを書こうと自由なわけですが、建設的な議論になりそうもないし、腹立つなら読むのをやめたら?って言いたかっただけ。

>貴方はコメント欄なぞ読まなければいい
いや、これはまったくその通り。そもそもこんなコメントも書くべきでないので、これで終わりにします。

Posted by: 12 | September 19, 2005 01:35 AM

12さん
横レスですが、「嫌悪感をもつなら来なければいい」という理屈はおかしいですね。
その理屈が通るならば、貴方はコメント欄なぞ読まなければいいし、
管理人はエマなぞ読まなければいい、という理屈が通りますから。

Posted by: TAM | September 19, 2005 12:16 AM

69さんにひとことだけ。
私はべつに管理人さんの意見や対応をよしとしているわけではありません。エマについては特に思い入れはありませんが、管理人さんに対して全面的にに信頼を置いているわけでもない。

ただブログやその管理人に対して嫌悪感を持つなら来なければいいと言っているだけです。このブログは読んでない漫画を紹介してくれるという意味で、私にとって有用であるので、これからもよろしくと、いう立場であります。

これってエラそうですかね。

Posted by: 12 | September 18, 2005 11:35 PM

「ベルセポリス」の2巻の最後の方、作者はイランでイラストレーターの仕事を始めるのですが、宗教的に問題のあるイラストを描いた人が連行された後に消息不明になったり、連行された同僚の男性が顔にアザをはらして釈放されたのを作者が見舞いに行くエピソードがあります。作者はフランスに住んでこの漫画を描いていますが、母国でもしこういう内容の漫画を描いたら、政治状況が作品当時と変わっていなければ、大変なことになっていただろうと想像します。

海外では、国によっては漫画ひとつで命を落とす人が実際にいるのですが、そういう人達に対して、果たして安易に「脇が甘い」とか言えるだろうか。確かにそれは「プラグマティック」なのかも知れませんが。

前回のエントリにかこつけて飛躍したことを書いていると思う方も大勢いらっしゃるかと思いますが、私が前回怒っていたのは、安易に(ユダヤ人の立場を何ら代弁せずにユダヤ差別と言う)、そして高圧的に(『マルコポーロ』の事例を持ち出す)、描かれたものに対してNGを出す、その姿勢についてでした。でも、こうして声を上げても、そういうのを面白がって眺めている同居人さんの姿が目に浮かんで、徒労感もわいてきました。このブログを愛読してきたと前回書きましたが、その時間を拭き掃除にでも費やした方が良かったなと、今は後悔しています。

Posted by: 匿名きぼんぬ | September 18, 2005 11:30 PM

妄想を根拠にした流言に、説明を求められても困るもんね。
ケツまくって逃げるしかないよな。
ま、予想したとおりの結末です。

しっかし、信者までついてる管理人さんなら、
『前言撤回』か『徹底抗戦』かどっちか選択して欲しいもんだ。

反論は出来ないけど、私の言うことは正しいんですよ~、じゃ、ただのガキだ。

Posted by: TAM | September 18, 2005 11:22 PM

んーそんな変な事言ってるかなぁ?
どうも、管理人さんを異様に擁護する人たちってそうでない人がちょっと言ったことを「責任取れ」とか「ブログやめろ」とかいう風に大げさにとって、その上でえらそうなこと言うんじゃねーて言いますが…。そこまで言ってませんし。えらそうだというなら、12さんも十分偉そうですね。たぶん、12さんみたいな人は、管理人さんが好きだから、管理人さんにちょっとでもぎゃーすか言うとむかつくんでしょうけどー。んー。

最初っから全てが程度問題な気がする。管理人さん、それじゃちょっと無責任すぎではーって言ってるだけだし(責任とれやぁ!とまで言ってるわけじゃないんだけどー、もうちょっと何かあってもいいんじゃない?てのは責任とれや!ってことになるんでしょーかねぇ…極端だ~)もうちょっと何かないのかなぁ。私も十分アレだけど、管理人さんを異常に擁護してる人も相当キモイよ…エマファンてこんな程度なんですね、とかいってる管理人擁護派、それって自分のこといってんじゃない?いや、マジで。ま、エマファンもちょっとアレだけどねー。

Posted by: 69 | September 18, 2005 11:13 PM

ここに匿名で書き込んでいる人間は、責任取れとかブログをやめろというのは勝手だけどそれを強制させることは出来ないわけで、そもそもそんなエラそうなことを言うなら名を名乗れって感じ。嫌なら来なければいいんですわ。

私は「砂野」さんとは意見が違いますが、その意味で「砂野」さんのやり方が一番正しいっす。さようなら「砂野」さん。

私としては、エマの件はもうどうでもいいので、これからも面白い漫画紹介してください。 イラン人少女の物語「ペルセポリス」、買ってみるっす。

Posted by: 12 | September 18, 2005 10:41 PM

>とは言え、仕事の合間にこっそりとコメント欄を見ながらなんとか収拾したいとは考えておりましたが、どうもいい手が見つからず。とりあえず、みなさまのご批判に対しましては、前回までに書いたことがわたしの最終意見とお考えください。

って、嘘wマジ?
あんた結局都合のいい、反論できる意見にだけ反論しただけじゃんw他にも意見出してた人いたと思うんだが。ていうか、マジで責任とか全然考えてないんだ……別にさー管理人さんが全部悪い!とは思わないけどちょっとそれはどうなのよー?「たまたま荒らしにあっちゃいました」程度の意識じゃない?なんだかなー管理人さん、もうちょっとしっかりした人だと思ってたけど。うーん、がっかりだわ。被害者意識丸出しだねぇ。収拾つける方法わかんない、でも続ける、てそれはなぁー。収拾つける奥の手としてブログやめるって手もあったのに、そこまではしたくなかったわけでー。結局収拾つける気なんて本気であったわけじゃないんじゃん。あーあ。つける気ないならないで一言謝るくらいあってもよさそうなもんだけどー。本当がっかりだわー

Posted by: 69 | September 18, 2005 10:14 PM

「前回までに書いたことがわたしの最終意見とお考えください。ご不満なかたがいらっしゃるのは承知しておりますが。」
それは反論できないのに間違いを認めないということで、ダダをこねてるだけです。
幼稚園でも叱られますよ。
これで収拾するわけがありません。
ようするにあなたは自分の機嫌をよくする材料として深刻な問題をオモチャにしただけです。
さようなら。
リンクも切ります。

Posted by: 砂野 | September 18, 2005 08:48 PM

はじめまして
更新されてないので心配してました

中東の文化って 日本人には
縁が無い ガゆえに 興味ありますね

いかに 西洋と折り合っていくのか
イラク戦争が 良くも悪くも
中東を変えていく気がします

個人的には 明治時代
西洋人が 日本に思ったみたいに
固有の文化を守ったまま
変わって欲しくないという思いと
変わって男尊女卑 人権
を望む人々が それを手に入れて欲しい
と言う思いが
ぶつかり合います

地球がひとつの価値観を
共有することがいいのか悪いのか

がんばってください

Posted by: カントナ | September 18, 2005 03:18 PM

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