復刊というお仕事
復刊ドットコム/ブッキングのサイトはときどき覗いてましたが、実は、何をしてる会社なのかよくわかっておりませんでした。自分の知ってる印刷会社情報などは提供したことあったんですけど。
左田野渉「復刊ドットコム奮戦記」が刊行されました。表紙のイラストが藤子不二雄A、オビの推薦文がみなもと太郎。造本で驚いたのが、オビで著者の名前が隠れちゃってること。こういうオビは珍しい。著者はブッキング成立時からの中心人物で、多くの復刊交渉を自身でされています。これを読んで、やっとわかりました。復刊ドットコムって、基本的には、ネット書店だったのね。
復刊リクエストをもとに、出版社と復刊の交渉する。復刊されたらその本を自分のサイトで販売し、ネット書店としての利益を得る。じゃあ、復刊された本を復刊ドットコムで買ってあげなきゃ、利益は出ない。ごめんなさい、復刊ドットコムが扱った本はいっぱい買ってるんですが、書店としては1回も利用したことがありませんでした。
最初に復刊交渉して成功したのが三原順の絵本「かくれちゃったのだぁれだ」。以来、最近のものでは、あのイギリスのアチャラカSF「銀河ヒッチハイク」シリーズまで多数の作品を復刊しています。最近マンガ方面では、マンガショップ/パンローリングから、桑田次郎とか園田光慶の作品がいっぱい復刊されており、いや、お世話になってます。
現在では、出版事業も開始、出版社との交渉で復刊できなかった書籍を自分のところで出版しています。この方面の代表作が「ダルタニャン物語」と「藤子不二雄Aランド」。
現代の日本では、著者・出版社・流通・読者の求める理想は、まったくの同床異夢です。その中で橋渡しをしようとする著者の行動は、それぞれから非難の対象になったりして、苦労ばかり。しかし、理想を追い求める著者の行動は経済的な成功を得、その意味ではこの本、ビジネス書でもあります。
紙に印刷された形の「本」が、今後いつまで存在するのかはわかりません。ただし、所有欲があるかぎり、いくら図書館があっても、ネットにデータがあっても、本は生き残るのじゃないかしら。それは、とり・みきの「ダイホンヤ」「ラスト・ブックマン」に描かれたように美術品やコレクターズアイテムの形であるのかもしれませんが。
企業人でもある著者は、もちろん電子書籍も視野に入れていますが、どうも心の底では「本」というパッケージから離れられそうもないと見たがどうか。実はわたしもそうなのです。
著者は本が大好きで仕事に誇りを持っている。こういう人の文章はいいなあ。書物を愛し、出版を考える人、みんなの必読の書であります。
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