「月館の殺人」を推理する
大阪朝日放送で「安楽椅子探偵」という不定期のドラマシリーズがあります。1999年から5作が放映されてまして、出題編で殺人事件がおこり、視聴者から推理を募集して、一週間後の解決編で種明かし。わたし、これに毎度応募してます。いつも犯人は当たるのですが、推理の根拠のツメが甘く、惜しいところで美しい回答にはならないんですけど。
この安楽椅子探偵シリーズを書いてるのが、綾辻行人と有栖川有栖でして、番組ではおもに消去法で推理されることが多いから、どちらかというと、有栖川有栖テイストでしょうか。トリックや推理のヒントを、文章じゃなくて映像で見せる工夫がなかなか面白くて、賞金付きということもあって、推理は燃えますよー。
綾辻行人と佐々木倫子が組んだミステリマンガが「月館の殺人」、まだ連載中ですが、上巻が発売されました。殺人が起こり、しかも密室で、容疑者は限られている。綾辻行人はマンガだからこそ可能なトリックやヒントを仕掛けているに違いない。
で、下巻が描かれる前に、推理してしまおうという、無謀なことをしてみます。8月25日になったら雑誌で続きが読めるのですから、以下から書くことが全部スカタンになっちゃうかもしれませんが。
■ 以下、おもいっきりネタバレします。未読のかたはご遠慮ください。
沖縄在住の高校生・空海(そらみ、♀)が、初めて祖父に会うため、北海道を訪れます。彼女が、稚瀬布(ちせっぷ)発月館(つきだて)行の豪華列車、蒸気機関車に引かれる幻夜号に乗り込むと、それは貸しきりで乗客が空海以外に6人。しかも全員が鉄道オタク。その他に乗務員が6人。発車時間は夜。外は吹雪。翌朝、乗客のひとりが起きてきません。個室のドアを開けるとそこには刺殺死体。密室殺人だ。警察に連絡するために列車のドアを開けると、走り続けていると思われた幻夜号は、豪邸の前に停車しているではありませんか。(上巻終わり)
(1)幻夜号はホントに走っていたのかどうか。
上巻で最大の謎は、上巻ラスト。走っていたはずの幻夜号が、なぜか停車しているシーン。幻夜号はホントに走っていたのか。
機関車は、ボエーッとかボッボッとか音を出して走ってるシーンがあるから、確かに走ってるんでしょうが、客車のほうはどうなのか。機関車が客車を引いて走ってるシーンも、第2話や第3話に登場しますが、引いてるのは、ホントに空海達が乗ってる客車なのか。別の客車じゃないのか。
幻夜号は稚瀬布発月館行。12月25日20時40分発で翌日7時着。時速60kmで10時間20分。距離にして620km。北海道突き抜けちゃうぞ。
鉄道オタクたちの目的は、空海の祖父にお宝を見せてもらうことらしいのですが、もし月館で門前払いにされたら、「稚瀬布で駅寝」しなきゃいけないらしい。ということは、月館と稚瀬布はごく近い位置関係にあるはずです。
空海の乗ってる列車は上巻のあいだ、ずっとカタンカタンと音がしてるので、走ってる(ように思われる)。夜で吹雪なので、車窓からの景色が不明なのですが、イナビカリのときには一瞬だけ外が見えます。
(2)イナビカリのときの景色
どんな景色が見えたのでしょう。
・第2話:食堂車:木と電柱
・第2話:食堂車:木と電柱
・第3話:プルマン車:不明
・第4話:ピアノバー車:不明
・第6話:食堂車:木と電柱
・第6話:プルマン車:駅
食堂車から見える景色が、あまりに同じすぎる。列車が実は停止しているというヒントなのかしら。
(3)主人公はなぜ沖縄生まれなのか。
主人公は、母親が鉄道嫌いだったため、生まれてから一度も列車に乗ったことが無いという設定です。沖縄県人なら、他県の人間と違って鉄道を利用したことが無くても、ありえなくはない。このための沖縄設定に違いない。
フツーの人なら、列車に乗れば、動いているのか止まっているのかわかるはず。しかし、主人公は列車に乗ったことが無いから、列車が走っているのか止まっているのかが、体感ではわからなかったのです(←オイッ)。
というわけで、わたしの推理としましては、機関車は別のところを走っており、主人公が乗っている客車は最初から、止まったままであったというものであります。カタンカタンという音は効果音ね。稚瀬布駅と、空海の祖父が住む月館は同じ敷地内にある。
他にも、グラスのジュースがまったく揺れてないのも補強的な材料。「乗下車の旅 月館本線」という本をみんなが持ってますが、駅名が難しくてフリガナふってるというのも、鉄道オタクとしてはどうか。架空の駅だから覚えてないのじゃないかしら。さらに、列車の窓からアライグマを餌付けしている乗務員がいますが、これも列車が停止しているからこそ。
(4)殺人現場は密室なのか。
列車が停止していて、客室の窓が開いていたのですから、密室は成立しません。ただし、吹雪の中を列車まで殺しにやってくる物好きもいないでしょうから、犯人は、列車内、あるいは屋敷の人物に限られるはずですが。
(4)なぜ、列車が走っているように思わせたのか。
現在のところわかりません。空海以外の乗客、乗務員は列車が停止していたのを知ってたみたいです。空海をミスディレクションするためか。単なるシャレなのか。
鉄道オタクたちが見たいお宝を持ってるというのですから、空海の祖父も相当のテツに違いない。そして、第二の殺人はいつおこるのか。犯人は誰か。
以上、わたしの推理です。全部デタラメの可能性も大。でもいろいろ推理するのは楽しいなあ。
■追記:「月館の殺人」下巻を読んでの感想はコチラ。
Comments
たびたびコメントします。
日置があの冒頭の子供ということは
間違いないような気がしますが、
読み返すうちに日置の自作自演というのも
違う気がしてきました。
彼は父親のことをお祖父さんに確かめるためにやってきて、殺された。
死体は窓から運ばれた。
そしたら犯人は…お祖父さん?!
お祖父さんの壮大なるお芝居。
なんか妄想の域に入ってきたので、
このへんにします。
Posted by: 通りすがり | September 20, 2005 09:21 PM
通りすがりさんの推理に拍手します。
日置さんも母子家庭でした。
冒頭で女の子と思わせ、空海ちゃんのお父さんと思わせるのは赤ニシンですね。
獣医さんは寝てたと言ってたのにベッドが「戦利品」で埋まっていたので共犯者だと思います。
ぽちぴーさんの時計云々、読み返してやっと気付きました。確かに犯行時間は・・・。
犯行に気付かせるように発言したのも獣医さんでした。
でも、カード発見したのはノリ鉄だし、ひょっとしてみんな共犯でオリエント急行殺人事件に移行する?
漫棚通信さん、別場所でエライ事になってますが、おっしゃってることは間違ってないと思います。
これからもブログ更新、頑張って下さいね。
Posted by: ありのみ | September 15, 2005 08:55 AM
あの子供、空海ちゃんに見えました。
お父さんの葬式の場面で出てきた子供とそっくりなんだけど、どうかな~?
それから、逆Sの形も冒頭の汽車が走って行く線路の形なのでは・・・。
謎は解けないけど、男性が突き落とされてその後に、突き落とした3人組の間でなにかがあって、それが関係しているとか・・・?
Posted by: ぽちぴー | September 14, 2005 01:23 PM
後半の推理は有力な正解候補ですね。ただしそれなら、獣医の今福が共犯になるので、犯人当てクイズとしてはちょっと美しくないかなあ。
Posted by: 漫棚通信 | September 08, 2005 09:10 PM
通りすがりですが、コメントさせてください。
あのSの反対のカードは、月館本線の路線の
形なのではないでしょうか。
(ガイドブックを落としたシーンで出てた)
月館に憎悪を抱く者の犯行ということで。
最初に出てくる男の人を突き飛ばしたテツのメインの人、帽子かぶってる人はお祖父さんではないかと。
あの子供は乗客の誰か。
なんとなく日置じゃないかと思うんですが。
殺されたのは自作自演で。
日置は母親が死んで苦労したと言ってたけど、父親の話題は出てなかったし。
Posted by: 通りすがり | September 07, 2005 09:50 PM
コメントありがとうございます。実は本日イッキの10月号買ってきちゃいまして、あらまあ、衝撃の展開じゃないですか。さて、「そして誰もいなくなった」タイプか、「伯母殺人事件」タイプか。
Posted by: 漫棚通信 | August 25, 2005 09:34 PM
初めまして。
私も気になっていることがあるので、書き込みさせてもらいました~。
殺された日置さんの死亡推定時刻、正しい時間はわからないですよね~?
だって、腕時計の針が・・・。
それも、事件解決の関係するんだろうか・・・?
あと、この事件の探偵役は誰?
空海ちゃん?
彼女にわかるんだろうか・・・?
以上が私の謎。でした。
Posted by: ぽちぴー | August 25, 2005 01:25 PM
タイトルの意味を考えますと、月館が地名にしても館の名にしても、列車内の殺人が敷地内でおこったことのヒントじゃないかと。列車内殺人がなかったとすると、これから第二の事件が館内でおこるのかしら。
Posted by: 漫棚通信 | August 23, 2005 09:18 AM
昨日読み終えまして、遅ればせながら、参加させて下さい。
佐々木倫子だから、悲劇的結末にはならないんじゃないか、という希望的観測(初期のスパイものには殺人事件があったか)、
佐々木倫子だから、主人公の恋は決して実らない、って悲観的観測。
ラストのコマはこれも綾辻行人の「館」シリーズだったって、上巻の「オチ」なんじゃないですかね、豪華列車付き「館」。
厨房員兼ピアニストさんは駅で切符を切っていたと思う。横顔を強調してるから多分。
冒頭のSLを巡るいさかい場面は、空海の回想かなぁと思いましたが、
空海が父とお別れする場面は半袖を着ているので季節が合いません。
作中のセリフに現れる山口のSLでの死亡事故のように思われますが。
「館」シリーズだとするとこれから連続殺人に発展して「中巻」、「下巻」が解決編。
ベンツに乗らない(「メルセデス」と呼ぶところも何とも)弁護士さんも「テツ」なんでしょうか?
結局、何の推理もしてませんねぇ。お騒がせ致しました。
Posted by: ありのみ | August 22, 2005 09:16 PM
コメントありがとうございます。あれもこれも作者のヒッカケかと思い出すとキリがないんですよねー。このマンガ、もしかすると、下巻の最後に「読者への挑戦」が挿入されて、解決編は雑誌で、なんてことになるんじゃないかとちょっと心配。
Posted by: 漫棚通信 | August 18, 2005 08:08 PM
私もちょうどこのマンガを買って読んだところなので、コメントします。流し読みですので、読後作者の罠にはまっていると感じました。
ある鉄道マニアの父親の死が挿入されています。そして、その事故原因の鉄道マニアへの復讐を連想させる。ここで、犯人の記憶なのか。主人公の母の記憶なのか。ここでミスディレクションを作者は狙っています。
前巻の最後のシーンは途中で予測出来ました。綾辻流の奇想です。そして、その列車の停止型がメッセージのようにであったと。だから、どうなんだ。訳わからんぞ。ああーここでも作者の罠にはまっている。予測は出来たのに推理は構築できてない。
主人公が乗務員の若い男を記憶している。あやしいな。また、作者の罠にはまっている。
・この鉄道と列車が祖父の遺産?
・かなり早い時点で屋敷についていた。(これはタヌキの餌付けがポイントであると思います。)
・この旅行の目的は私には推理できませんでした。この殺人事件自体がお芝居の一つとも考えられる。(あの探偵さんの死体は偽物で若い乗務員が探偵さんの変装とか)
・殺人動機も推理できません。普通に考えると連続殺人の一つか遺産がらみなんですけど。
解決編楽しみにしています。
結局私は、作者の罠にはまって、推理の袋小路にはいっているだけでした。
Posted by: ラッキーゲラン | August 18, 2005 10:53 AM
>Hugoさま
そのとおりでございました。アタシはこういうところのツメが甘い。
空海の母は、重度の鉄道オタクの父親に反発して鉄道嫌いになり、飛行機オタクの男と結婚した上、夫の死後鉄道の無い沖縄に引越しました。娘に流れる呪われたテツの血を恐れ、娘を列車に乗せないようにしてきたというのでどうか。
>-denさま
今回の旅は、孫をテツの道に目覚めさせるための祖父の計画か。本文では省きましたが、首都圏連続殺人事件がからんできてて、現場には連続殺人犯のカードが落ちていました。カードの話題を持ち出したのが被害者とカード発見者で、いかにも殺人は茶番のようにも見えるんですけどね。
Posted by: 漫棚通信 | August 13, 2005 08:38 AM
はじめまして、どうも。
このエントリーを読んだだけですが、面白そうなので参加します。
殺人は本当にあったのか?
おじいさまのコレクションの後継者を決めるための試験というか試練というかゲームというか。
遺産でもいいんだけど金銭ではなくてあくまで重要なのはコレクション。
参加者は実の孫、盟主たり得るか?
邪心を持つオタク及び乗務員も参加者、協力者、資格者である。
殺人はあった、シナリオ無視の。
邪魔なオタク排除アリで孫エンドの大まかなシナリオはあった。参加者の書換えで邪魔じゃないオタク排除のイベント発生。
犯人はおじいさんとオタクの意図せざる複数犯。
オリジナルテキストを読まないで、結末のエントリーを楽しみにしています。
Posted by: -den | August 13, 2005 08:23 AM
沖縄生まれではなく、沖縄に引っ越したのではないでしょうか?(母親が電車が嫌いで電車のない沖縄に越した?)
Posted by: Hugo | August 13, 2005 01:48 AM