宮西計三復活
別冊新評が「石井隆の世界」に続いて、「三流劇画の世界」を特集したのが1979年4月。このときは「三流」に「エロ」とルビをふってありました。
今では「三流劇画」じゃ意味不明ですから、「三流エロ劇画」のほうがとおりが良い。三流とはひどいネーミングですが、おそらくは外部からじゃなくて、実際にエロマンガ雑誌を作っていた編集者が、韜晦の意味をこめて「三流」と自称し始めたのでしょう。
代表作家は石井隆と考えられていますが、実際のところ石井隆が活躍した雑誌は、いわゆる三流エロ劇画誌じゃなくてヤングコミックとかだったし、石井自身はこの「三流劇画」という呼称を嫌っていたようです。
それはともかく、確かにこの自販機で発売されるようなエロマンガ雑誌がやたらと面白い時代がありました。「エロトピア」を先駆として、御三家が「漫画大快楽」「漫画エロジェニカ」「劇画アリス」。わたし自身は「ガロ」からの流れで、ひさうちみちおを追っかけて「大快楽」買ってました。
「三流エロ劇画」ブームの歴史的意義については、また別の機会に。
別冊新評「三流劇画の世界」で、「ダーティ・コミックス15人」として取り上げられたのは、あがた有為、飯田耕一郎、井上英樹、いかづち悠、小多魔若史、清水おさむ、ダーティ・松本、中島史雄、能條純一、羽中ルイ、福原秀美、宮西計三、村祖俊一、やまもと孝二、吉田英一。
彼らのうち、ダントツの絵の密度を誇っていたのが、宮西計三です。
細い精緻な線で描きこまれた斜線、汗、涙、血管、血液が、奇妙にデフォルメされた肉体を彩ります。わたしが持ってるもっとも古いのが、ああ、自販機本なんで発行日も価格も書いてないや、「増刊劇画アリス 宮西計三/つか絵夢子の世界」というB5の雑誌で、おそらく1978年の発行。1979年にはブロンズ社から、第一作品集「ピッピュ」が発売されました。ひさうちみちおの第一作品集「ラビリンス」と同時発売でしたから、そういう立場の作家だったとわかってくださいな。
宮西計三は長らくマンガの仕事を休止しており、最近は道出版のみやわき心太郎の本で、編集者みたいなことしてました。でもやっと、松文館の「ほんえろ」(一応雑誌かな)で、32ページの作品「エレベーション Sa・Yo・Na・Ra」を発表してます。
以前の作品より、ストーリー性が高まってますが、相変わらずの過剰なイメージと絵がストーリーの展開をじゃましており、そのアンバランスさがたまらん。宮西計三作品にストーリーはいらんのですよ。イメージの奔流があれば十分。もっともっと崩れた作品を描き続けていただきたいものです。
Comments
コメントありがとうございます。真崎・守はわたしにとって心の師でありまして、ということは宮西計三は兄弟弟子?と勝手に思っております。
Posted by: 漫棚通信 | August 08, 2005 09:47 PM
宮西と、「聖マッスル」のふくしま正美は
真崎・守のアシスタントでした。
真崎の元からは、はみだし野郎が巣立つのでしょうか。
Posted by: 砂野 | August 08, 2005 02:12 PM
コメントありがとうございます。点描で線を描き、その集まりで人体の立体を表現するという、宮西以外誰もやらないであろう超絶技法ですが、今回の作品には使われてないみたいです。
Posted by: 漫棚通信 | August 07, 2005 10:19 PM
「点描」を点ではなく“円”で打つという方ですね
なつかし~な~
Posted by: たにぞこ | August 07, 2005 10:41 AM