ホームドラマとマンガ
高橋留美子の新短編集「赤い花束」は、テーマというか読者層というか、かなり年齢層が上の作品集になりましたですな。
このビッグコミックオリジナルに年1回ずつ掲載される短編シリーズも、3冊目なわけですが、「Pの悲劇」「専務の犬」と続くうちに、登場人物の年令がじわじわ上がってる気がします。
著者も1957年生まれですから、もうすぐ48歳。今後もずっと少年誌のトップランナーをつとめられるとは考えていないでしょうから、自身の将来の方向性について、いろいろと模索しているにちがいない。やはりねらい目は、高齢者向けマンガか。今回の短編集の登場人物は、高齢者というにはまだリタイアしてませんが。
収録の全作品とも、中年夫婦の、夫か妻、どちらかが主人公。以前は若奥様が主人公になるのが多かったのに、今回の作品集では、さえない中年の夫が物語の中心です。もちろん年令や主人公の設定は掲載誌によって規定されているのですが、著者にとっても必然の変化じゃないでしょうか。
夫が妻以外の女性によろめくのが2作。
親子断絶が1作。
妻が姑と旅行するのが1作。
老父の介護が1作。
急死した夫の幽霊が主人公なのが1作。
基本的には、家庭の危機→お笑い+ハートウォーミング系でまとめるパターン。すべて家族の再生がテーマです。
高齢者向けマンガがテーマにすべきなのは、仕事の成功か、性愛か、趣味か、あるいは世界国家を語るべきか。家族・家庭に回帰するというのは、いかにもありそうで大きなテーマになりそう。
ホームドラマというのは、日本マンガではしばらく忘れられていました。家族関係を描くマンガは、「巨人の星」とか「美味しんぼ」とか父子の対立パターンが主。かつて少女マンガが描いた家族は、中心に必ず少女がいましたが、今後のホームドラマでは初老の夫婦が中心になってくるんじゃないかな。めざせ「渡る世間は鬼ばかり」。
Comments
高橋留美子、さすがうる星とらんまを長期描いてただけあって、短編うまいです。犬夜叉終了後は青年誌に移ってもいいんじゃないかしら。
Posted by: 漫棚通信 | July 11, 2005 10:00 PM
大活躍したあと寡作短編作家となり
そのペースを保つというのは新しいパターン
かもしれません。
Posted by: 砂野 | July 09, 2005 09:47 PM