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July 01, 2005

居候するバケモノたち

 今回の「武蔵対七人の侍」事件はいろいろ考えさせられます。NHK「武蔵」が黒澤明「七人の侍」を盗作したシーンがあるとして裁判になったものです。ここで争われたのが著作権の問題。

・著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

 法律上は、アイデアは模倣してもいいけど、表現はマネしちゃダメ、とされます。ここの線引きが難しいのですが、今回の判決では、雨中の合戦、とか、地面に刀を刺しておき合戦の途中で交換する、とかは表現じゃなくてアイデアであるとされました。だからマネしてもいい。

 まあ今回は誰がどう見てもパクリなんですが、むしろ、積極的に模倣が行なわれることで表現の進歩があるから、法律はこれを許しているのでしょう。

 よく言われることですが、初めてタイムマシンを小説に書いたのはH・G・ウェルズ。なんというすばらしいアイデア。でも、その後に2番目・3番目とマネするやつが出てきたからこそ、時間旅行モノというジャンルができたわけですし、タイム・パラドックスなんて思考実験もされるようになりました。最初とその次にマネしたヤツ、きっと白い目で見られたでしょうが、あんたたちの功績はでかいぞ。

 タイムマシンのようなアイデアだけじゃなくて、ストーリーと絵さえ似ていなければ、設定や構成なら、いくらマネしてもいいのかな。

 藤子不二雄が得意とした「人外のバケモノ居候」ジャンルがあります。「オバケのQ太郎」(1964年週刊少年サンデー)から「ドラえもん」までの例のヤツ。

 平凡な少年のところにオバケがやってきて、居候する。個性の異なる主人公をふたり置くことができ、そのふたりに漫才をさせることができる偉大な設定です。

 オバQ以前にも当然居候は存在してまして、おそらくは益子かつみ「快球Xあらわる!!」(1959年週刊少年サンデー)あたりがそのルーツか。野球ボール型の宇宙人が、のび太くんに似たナサケナイ少年を助ける話。オバQは、この設定を模倣したと言えます。

 藤子不二雄Aは「オバケのQ太郎」の成功後、同じ1964年に同タイプの居候マンガ「忍者ハットリくん」(少年)を開始しています。おそらく藤子の名でこのパターンを続けたことが、ジャンルを完成させたのじゃないかしら。

 オバQ後は、昔の怪獣やら宇宙人やらは、たいてい居候してました。長谷邦夫「しびれのスカタン」(1965年少年画報)とか、板井れんたろう「おらぁグズラだど」(1967年週刊少年サンデー)とかね。もちろん藤子不二雄ブランドの居候マンガは次々と続きました。

 このジャンルは「ドラえもん」という大ヒットの後、「うる星やつら」を経て「ケロロ軍曹」にまで至ります。さらには、「ヒカルの碁」も「デスノート」もこのパターン。わたしには、佐為もリュークもドラえもんに見えてしょうがない。

 こうして模倣が重ねられ、居候マンガは子供マンガの王道となりました。

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Comments

「雨中の合戦」「地面に刀」
って職業的に頭しぼったら誰でも
出るような気が・・・。

水木しげる世界の妖怪は居候的なのが
かなりありますね。もっともこれは
家に憑いており外出しませんが。
つげ義春の李さん一家はバケモノでは
ないけど家主とのやりとりはシュールな
漫才風ですね。


Posted by: 砂野 | July 02, 2005 01:10 AM

水木しげるの居候型妖怪の代表格は、少年マガジン版「悪魔くん」のメフィストでしょうが、こいつは地中に住んでるから一応自立してるみたいですね。最近のマンガで思いうかんだのは、「ラブやん」は押し入れに住んでるし、「鉄腕バーディー」はQちゃんなみの大食いだし。

Posted by: 漫棚通信 | July 02, 2005 09:41 PM

こんにちは。
いわゆる「デスノコラ」でも、藤子マンガをベースにしたものはたくさん作られていますね。
そこでも、リューク=居候キャラという相似が見て取られているのでしょう。
それから「コラ」ではありませんが、こんな傑作なパロディも作られています。
題して「藤子・F・不二雄 SF短編集『死神手帳』」
http://asame2.web.infoseek.co.jp/dnote.html

「藤子調リューク」が絶品です。

Posted by: 伊藤 剛 | July 04, 2005 02:46 PM

藤子タッチなら、FでもAでもデスノートが描けるんですねー。これは笑った。

Posted by: 漫棚通信 | July 04, 2005 06:50 PM

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Tracked on July 21, 2005 02:56 AM

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