「もやしもん」大学マンガは学習マンガ
で、前回からの続きになりますが、大学マンガが読者にとって未知の世界を紹介するのなら、これは学習マンガにほかならない。うんちくマンガと言ってもいいのですが、石川雅之「もやしもん」あたりになると、読者に示すのは、へぇと言わせるような雑学じゃありません。ある分野の知識を積極的に教えたい、という欲望がうかがえる。
このマンガでは、発酵についての知識や細菌学について、教科書なみにきちんと伝えようとしています。とくに第9話で展開される、どぶろくの造り方。
コメとコウジと空気中の酵母。さらにオニギリにくっついていた乳酸菌。これらからいかにして、雑菌を繁殖させずにどぶろくを造るのか。このマンガでは、擬人化された細菌たちがわあわあ騒ぎながら、どぶろくができあがっていくのが描写されます。
これを学習マンガと言わず何と言う。主人公は、菌を擬人化して見ることができる能力を持っています。しかも、菌の種類によって、こいつらの顔がそれぞれ違うんだよー。まさにこのマンガ的超能力のせいで、楽しい学習マンガができました。戦前戦後、子供マンガが目指した、古典的な「面白くてためになる」マンガとは、こういうものではなかったか。
ただ、学習マンガだからこそ、ひとことだけ。
第7話で、樹教授が顕微鏡をのぞいただけで、O-157を断言してますが、これはムリでしょ。教授がのぞいているのは光学顕微鏡ですから、もし菌が見えても、大腸菌の鞭毛は特殊な染色をしない限り見えず、桿菌であることがわかるだけ。神のごとき目を持っていないと大腸菌とは判定できません。さらに、O-157てのは血清型による大腸菌の分類です。酸に強いことを考慮しても、O-157とは断定できないはず。
Comments
おー、ネタモトにこんなに有名な東京農大の先生がいらっしゃいましたか。著作も面白そう。
Posted by: 漫棚通信 | June 30, 2005 03:19 PM
ある友人から
「樹教授のモデルは農大の研究者・小泉武夫ではないか」
といわれましたが、どうなんでしょうかね。
http://www.bookreview.ne.jp/book.asp?isbn=4901998129
Posted by: 紙屋研究所 | June 30, 2005 09:05 AM