続・シートンいろいろ「死神小僧キム」
しつこく、シートン。
シートンがマンガのキャラクターとして登場する作品がありました。白土三平「死神小僧キム」です。
「死神小僧キム」は「ぼくら」1962年10月号から1963年4月号まで連載。「シートン動物記」とほぼ同時期の作品で、白土三平のシートンへの傾倒がよくわかります。1963年に東邦図書出版社から2巻に単行本化され、1971年、筑摩書房「少年漫画劇場」8巻に再録されてます。わたしの持ってるのはこれ。
「死神小僧キム」は、西部劇です。主人公キムは、西部を放浪する少年で、彼が現れるとなぜか街が全滅してしまうので、死神小僧と呼ばれ恐れられている。
キムの造形は、白土三平おなじみのキャラクターでして、影丸やワタリと同じような、横に流れる髪型で、お茶の水博士タイプの鼻の少年(と言って、わかってもらえるかどうか)。白土三平の「忍者旋風」「真田剣流」「風魔」などでは、ハンサムな風魔小太郎が変装した姿としてくり返し登場します。
この少年、西部を放浪してるんですが、身体能力は、まるきり忍者です。彼が探しているのが、「アタタカイ闇ノオフクロ」と呼ばれる黒いピウマ。この謎の少年キム、死んだはずなのに突然生き返り、実は双子の兄弟がいた、なんていつもの白土三平パターン。そしてこの作品も、いつもの白土作品と同じように、未完であります。
で、このキムを追っかけてるのが、シートンです。総髪にメガネ、ヒゲをはやした痩せ型の人物。カメラで撮影し、スケッチをして、キムを観察する。彼によると、キムはクロマニヨン人で、生きた化石人類であると。学会に発表して、センセーションをまきおこしたいという野望を持っています。
キムを追うシートンは、物語の狂言回しで、コメディリリーフでもあります。長井勝一の「三平さんとシートン」によると、白土三平は「シートンの著作だけでなく、シートンという人物をすごく尊敬していた」「シートンは、様々な事物を観察し、分析するときのしつこさみたいな面で超人的な忍者に近いものがあったとうけとっているようだ」
動物を観察し、スケッチし、絵に描く。カメラの趣味もある。白土三平は自分とシートンに多くの共通点があると考えていたようです。
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