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April 23, 2005

永劫回帰のココチヨサ「ハチミツとクローバー」

 羽海野チカ「ハチミツとクローバー」を楽しく読んでいるんですが、このマンガのどこが人をひきつけるのか。もちろん絵はかわいいし、コメディ的展開にニコニコできるし、「ギャグ」といえるまで突き抜けてて爆笑できる部分も多い。

 でも、ココチヨサのいちばんの理由は、このマンガ、いつまでも同じ所をぐるぐるまわってるからです。

 最初は、美大生の恋愛と成長の物語と思ってました。でも、卒業シーズンになっても、メンバーが去らない、変化がない。登場人物は、美大教授・花本の家に集まる学生5人。♀が、はぐ(1年生)、山田(4年生)。♂が、竹本(2年生)、真山(4年生)と、留年をくりかえしている森田(6年生)。

 最初の年、「お別れの日が」「近付いているのだ」(2巻12話)と前フリがあって、山田と真山が卒業、森田がまた留年。で、この関係がくずれるかと思ったら、山田は大学院へ。真山は就職したけど、アパート(というか、下宿ね)を引っ越さず、みんなとつるんだまま。おいおい、変わらんじゃん。

 2年目、「皆で過ごすクリスマスは」「これが最後なのだと感じた……」(3巻17話)と、前フッといて、森田がまた留年。変わってません。

 3年目、竹本が留年。森田が8年生でやっと卒業したと思ったら、日本画科3年に編入。変わらんっ。

 この5巻でやっとわかりました。作者はオハナシを終わらせるつもりがない。

 人間関係のほうはどうかというと。これが何の進展もない。みんなそれぞれが片想いのまま。キスのひとつもございません。

 ハチクロは表面的には、成長物語や恋愛物語のふりをしながら、すでにその展開を放棄しています。最新7巻で、竹本が自分探しの旅をして、ちょっと成長したような展開ですが、もうだまされんぞっ。

 まったく変化しないシチュエーションと成長しない登場人物の設定は、古典的ラブコメのそれです。高橋留美子「めぞん一刻」の、まったく進展しない恋愛ドタバタは1980年から1987年まで、なんと7年間続きました。さらにさかのぼると、トムとジェリーの永遠の追っかけっこ。ハチクロはそれらの正しい子孫です。

 永遠の学生時代、永遠の片想い、永遠のモラトリアム。でも、今度の卒業シーズンこそ、きっと別れがあるに違いない(とか言っといて、また留年したりして)。ハチクロの物語が終わるとき、登場人物も読者も、幸せなエデンの園を失うことになるのでしょう。

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