« 梶原一騎の原作作法(その3) | Main | オヤヂが語るオタク史「ゴルゴ13はいつ終わるのか?」 »

March 25, 2005

全方向オヤヂ「マンガ道、波瀾万丈」

 桐山秀樹「マンガ道、波瀾万丈」はインタビュー集。インタビュイーは以下のとおり。弘兼憲史、本宮ひろ志、小林よしのり、小山ゆう、ちばてつや、政岡としや、モンキー・パンチ、藤子不二雄A、さいとう・たかを、松本零士、水木しげる、楳図かずお、古谷三敏、細野不二彦、吉沢やすみ。マンガ家は全員男性でオヤヂばっかり。

 ゆるい、スカスカのインタビュー集ですが、これも当然。弘兼憲史がトップに登場することからわかるように、「週刊アサヒ芸能」に連載されたものなんだからですねー。読者もオヤヂです。インタビュアーのライターは別にマンガにくわしいわけでもなんでもありません。しゃべってる内容も人生論あり、妄想あり。ま、オヤヂ週刊誌ですしね。

 インタビュアー(1954年生まれ、オヤヂですな)の立場は、全肯定、全ヨイショ。資料的にも、もうひとつ。成功した人に人生訓を聞く、というスタンスの本だからしょうがないか。わたしがこの本に期待してたのは、あまりインタビューされない、モンキー・パンチや政岡としやなんですが、意外と読ませた回が、吉沢やすみ。一発屋としての「ど根性ガエル」のあと、デパートのガードマンをしていたとは。

 オヤヂ週刊誌にはそれなりの読ませどころがあるんだ。泣ける話やねえ。

 わたしの知りたいことは、あまり聞いてくれない。たとえば、最近はモンキー・パンチ=加藤一彦ですが、以前は弟・加藤輝彦もモンキー・パンチとしてクレジットされることが多かった(虫プロ「COM」1968年8月号「道産っ子まんが家大いに語る」など)。兄弟の役割分担がどんなものだったか、聞いてみたいなあ。でもそれはない。ま、オヤヂ週刊誌ですしね。

 この本って、しゃべる人、聞く人、読む人、すべてオヤヂなんだよ。しかもその三者のうち、オタクらしき人は誰もいない(あえて言うなら取材される側の細野不二彦ぐらいか)。

 かつてこういう本は、少なくとも読者にオタク(あるいはマニア)を想定してたはずだと思うんだけど、最近はそういうことはないのね。ウスい人がウスい人に向けてつくるマンガに関する本、というのが存在しうるようになった。アニメ「鉄腕アトム」が放映開始されたのが1963年。その時小学生だったとしても、今50歳前後。今のオヤヂは全員、子供時代からTVアニメを見て育った世代なんだよなあ。濃い人もウスい人もみんな成長してオヤヂになっちゃったんだね。

 これに対して、濃い人が濃い人に向けて書いた本が、竹熊健太郎「ゴルゴ13はいつ終わるのか?」。オタクのオヤヂが、オタク読者だけを相手にしているわけで、これはイサギヨイぞっ。感想は次回。

|

« 梶原一騎の原作作法(その3) | Main | オヤヂが語るオタク史「ゴルゴ13はいつ終わるのか?」 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)


Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.



TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 全方向オヤヂ「マンガ道、波瀾万丈」:

« 梶原一騎の原作作法(その3) | Main | オヤヂが語るオタク史「ゴルゴ13はいつ終わるのか?」 »