全方向オヤヂ「マンガ道、波瀾万丈」
桐山秀樹「マンガ道、波瀾万丈」はインタビュー集。インタビュイーは以下のとおり。弘兼憲史、本宮ひろ志、小林よしのり、小山ゆう、ちばてつや、政岡としや、モンキー・パンチ、藤子不二雄A、さいとう・たかを、松本零士、水木しげる、楳図かずお、古谷三敏、細野不二彦、吉沢やすみ。マンガ家は全員男性でオヤヂばっかり。
ゆるい、スカスカのインタビュー集ですが、これも当然。弘兼憲史がトップに登場することからわかるように、「週刊アサヒ芸能」に連載されたものなんだからですねー。読者もオヤヂです。インタビュアーのライターは別にマンガにくわしいわけでもなんでもありません。しゃべってる内容も人生論あり、妄想あり。ま、オヤヂ週刊誌ですしね。
インタビュアー(1954年生まれ、オヤヂですな)の立場は、全肯定、全ヨイショ。資料的にも、もうひとつ。成功した人に人生訓を聞く、というスタンスの本だからしょうがないか。わたしがこの本に期待してたのは、あまりインタビューされない、モンキー・パンチや政岡としやなんですが、意外と読ませた回が、吉沢やすみ。一発屋としての「ど根性ガエル」のあと、デパートのガードマンをしていたとは。
オヤヂ週刊誌にはそれなりの読ませどころがあるんだ。泣ける話やねえ。
わたしの知りたいことは、あまり聞いてくれない。たとえば、最近はモンキー・パンチ=加藤一彦ですが、以前は弟・加藤輝彦もモンキー・パンチとしてクレジットされることが多かった(虫プロ「COM」1968年8月号「道産っ子まんが家大いに語る」など)。兄弟の役割分担がどんなものだったか、聞いてみたいなあ。でもそれはない。ま、オヤヂ週刊誌ですしね。
この本って、しゃべる人、聞く人、読む人、すべてオヤヂなんだよ。しかもその三者のうち、オタクらしき人は誰もいない(あえて言うなら取材される側の細野不二彦ぐらいか)。
かつてこういう本は、少なくとも読者にオタク(あるいはマニア)を想定してたはずだと思うんだけど、最近はそういうことはないのね。ウスい人がウスい人に向けてつくるマンガに関する本、というのが存在しうるようになった。アニメ「鉄腕アトム」が放映開始されたのが1963年。その時小学生だったとしても、今50歳前後。今のオヤヂは全員、子供時代からTVアニメを見て育った世代なんだよなあ。濃い人もウスい人もみんな成長してオヤヂになっちゃったんだね。
これに対して、濃い人が濃い人に向けて書いた本が、竹熊健太郎「ゴルゴ13はいつ終わるのか?」。オタクのオヤヂが、オタク読者だけを相手にしているわけで、これはイサギヨイぞっ。感想は次回。
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