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March 12, 2005

「20世紀少年」をきっちり読み直す(その5)

 前回からの続きです。思いっきりネタバレします。未読のかたはご遠慮ください。

(7)その他のことなど

 曲がったスプーンは「20世紀少年」の小道具としてずっと登場しています。

 フクベエと万丈目の初めての出会いは1970年、5年生の秋。フクベエがスプーン曲げを見せることで始まります(16巻5話)。

 クラス内で給食のスプーン曲げ事件が起こったのが6年生のとき(12巻10話)。その後のシーンで桜が散ってますから(16巻5話)、これは1971年4月の事件です。

 1971年8月31日、フクベエと万丈目の2回目の出会い。同日、喫茶店で、今度は万丈目がスプーンを曲げています(14巻6話)。

 1972年、中学生になったフクベエと万丈目が組んで、TV番組に出演しますが、このときのネタがスプーン曲げ。トリックがばれ、非難の対象になりました(18巻10話)。

 1997年、万丈目と市原節子弁護士が会談したときも、万丈目がスプーンを曲げてました(2巻1話)。

 2000年、子供時代のカンナがスプーン曲げ(10巻11話)。

 2014年、歌舞伎町教会でカンナがマフィア相手にスプーン曲げを見せています(9巻8話)。

 このようにスプーン曲げは、超能力の象徴としていっぱい描かれていますが、マンガ内ではもっと早くスプーン曲げが登場しています。10巻11話、11巻7話で、屋上のケンヂがスプーンを曲げようとしているシーンがあり、サダキヨと話しています。これは1970年5年生の1学期です。

 ケンヂが言うには、小学校の頃、すでに流行ってた、誰かが海外ニュースか何かで、(ユリ・ゲラーの)情報を仕入れたんだろうと。はて、こんなことがありうるのか。

 ユリ・ゲラーが来日して、日本でスプーン曲げブームが起こったのは、1974年のことでした。アメリカやイギリスでテレビ出演を始めたのが1973年。それ以前にアメリカで超能力テストを受けたのが1972年のこと。

 ユリ・ゲラー登場以前の日本には、何かを曲げるにしても、スプーンを曲げようという発想がありませんでした。うーむ、どう考えても、ケンヂの小学生時代、1970年にスプーン曲げがはやってたとは思えませんが。


 さて、その後のケンヂの生活は。

 日付が類推できるのは1971年10月2日。その前日、ゴールデン洋画劇場で「大脱走」が放映され、小学6年生のケンヂたちが話題にしています(6巻10話)。

 1972年、中学1年生。ケンヂは公立の小学校から公立の第四中学校へ。ギターに目覚め、同級生の山口さん(のちの三浦さん)に恋心を抱いたりしてます(1巻3話)。

 1973年、中学2年には放送室を占拠して、T・レックスの「20th Century Boy」を流しましたが、誰も反応してくれませんでした(1巻1話、7巻11話)。


 そして「しんよげんの書」。

 「しんよげんの書」については、まだ全貌が明らかにされていません。

 つくったのは、“ともだち”グループ。「よげんの書」に対抗して1969年に制作されました(12巻4話)が、前述したように、「よげんの書」完成後にフクベエが見たあとに書かれたものか、「よげんの書」制作中、オッチョがヤマネ君に細菌兵器のアイデアをもらう前に書かれたものか、制作時期は混乱しています。

 内容は、わかっているうちでは、以下のようなものです。

・2014ねん、しんじゅくのきょうかいでしゅうかいがひらかれ、そしてまたあくむのようなせかいがはじまるだろう。
・しゅうかいで、きゅうせいしゅはせいぎのためたちあがるが、あんさつされてしまうだろう。
・ばんぱくばんざい。ばんぱくばんざい。じんるいのしんぽとちょうわ。そして、せかいだいとうりょうがたんじょうするだろう。(9巻7話)
・せいぼがこうりんするとき、てんごくかじごくのどちらかをたずさえてくるだろう。(9巻11話)
・2015年西暦が終わるだろう。(15巻4話)
・東方で法王は倒れ。(15巻1話)
・せーるすまんが登場するらしい(15巻12話)
・りんりんとでんわがなってすべてのじゅんびがととのうだろう。(15巻12話)
・かれはいちどしんでよみがえるだろう。(16巻6話)

 特に最後の予言は、1971年の理科室事件と、2015年万博会場の“ともだち”復活のダブルミーニングですね。
 

 最後に、マンガマニアとしてのトリビア。10巻10話、サダキヨが語ります。

「あれは中学二年の時だ」
「『COM』って漫画雑誌があってね」
「どうしても読みたかったんだ。『火の鳥』の新章が始まるんでね」

 サダキヨが中学2年といえば、1973年4月から1974年3月まで。虫プロ「COM」は1971年12月号が最終号。1972年1月からは「COMコミックス」と名前を変え4冊発売、別の雑誌となってしまいました。そして1973年8月に1冊だけ「COM」復刊号が発売され、手塚治虫「火の鳥」第9部乱世編第1回が掲載されました。サダキヨが探してたのはこの本ですね。

 あと1回だけ続きます。

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Tracked on February 16, 2006 02:07 AM

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