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March 11, 2005

「20世紀少年」をきっちり読み直す(その4)

■ 本日の新聞に小学館の広告として、小学館漫画賞審査委員特別賞の、さいとう・たかをと秋本治の対談の一部が掲載されてました。ここにゴルゴと両さんの握手のカットが載ってましたが、ゴルゴって両さんと握手するときも左手なんだなあ。プロだなあ。


■ 以下、「20世紀少年」について、前回からの続きです。思いっきりネタバレします。未読のかたはご遠慮ください。

(5)1971年、小学6年生:理科室事件

 1971年、ケンヂたちは小学6年生です。すでに秘密基地の原っぱはボウリング場になり、夏休みだからといって、集まって何かをするわけではありません。何かをしていたのは、ケンヂグループではなく、“ともだち”グループのほうでした。

 1971年8月31日夏休み最後の日。理科室事件は、1巻5話でモンちゃんの話として、12巻でヤマネ君の話として、14巻でヴァーチャルアトラクションとして、16巻で“ともだち”の夢として、4ヵ所で語られます。ただし、この事件はまだまだ謎が多い。

 理科室当番のモンちゃんは水槽のスイッチを入れ忘れ、夜中に理科室へむかいます。総勢は1巻5話の108ページでは5人、その後のページや14巻6話では4人になってて混乱してます。モンちゃん、ケロヨン、コンチ、ドンキー。実際に理科室へ行ったのはドンキーだけ。

 そこでドンキーは、フクベエと、ヤマネ君、サダキヨの3人に会います。フクベエは首を吊っていますが、生き返りました。

 おっと、サダキヨ。キミは小学5年生の夏にもう転校しちゃったはずだろ。なぜここに登場する(これも16巻で説明があります。後述します)。

 理科室事件の謎はいろいろ残っています。

 フクベエたち3人が理科室にドンキーが来ると知っていたわけはありません。ならば、彼らは、自分たちだけで何をしていたのでしょう。

「かれはいちどしんでよみがえるだろう」(16巻6話)

 フクベエが「しんよげんの書」にしたがって奇跡をおこすのを、ヤマネ君、サダキヨに見せていました。そのとき、予定外にドンキーが闖入したことになります。でも、首吊りの仕掛けってフクベエひとりでできるものなのか? 誰か手伝わないと無理じゃない? だったら、ヤマネ君、サダキヨにもトリックとわかってたんじゃないのか。

 そして、2015年元旦、理科室でのヤマネ君の言葉。

「“ともだち”はこの理科室で生まれた」
「いや死んだというべきか」(12巻7話)

 死んだってのは、「いちどしんで」という意味でしょうが、生まれたというのは何だ。ヤマネ君がフクベエのトリックによるよみがえりを信じていたとは思えませんから、何か別のものの比喩か。

 ヴァーチャルアトラクション内、1971年8月31日の万丈目も、謎の言葉を。

「やはりあの日だ」
「1971年のあの日」
「俺の人生が変わった日」
「そしてこの日、“ともだち”の人生も……」(14巻6話)

 人生を左右するほどの事件があったはず。

 この後ヴァーチャルアトラクション内では、背広に覆面の“ともだち”が登場し、首を吊っているフクベエの足をひっぱって殺そうとする(14巻10話)。“ともだち”の夢の中では、首吊りの仕掛けがはずれて、フクベエの首が絞まる(16巻6話)。

 いずれもフクベエが死にそうになってます。

 このあとの展開は、いずれ語られることになるのでしょう。


(6)小学4年生から6年生まで

 小学生時代に大きな事件が3つありました。1969年4年生、秘密基地の「よげんの書」のとき、フクベエとサダキヨ。1970年5年生、首吊り坂事件のとき、フクベエとサダキヨ。1971年6年生、理科室事件のとき、フクベエとサダキヨとヤマネ君。

 3年にわたっての3つの事件と設定してしまったため、いろいろ矛盾が出てきてしまいました。まず1970年の大阪万博が、1969年につくった「よげんの書」に登場する。

 これについては、16巻2話で、1969年の春にフクベエが万博のことを作文に書き、クラスに広めたことになってます。でも、それにしても、1969年夏にはケンヂが太陽の塔の形を知っていたことになり、無理があるよなあ。

 そして、5年生の1学期しかいなかったはずのサダキヨが、3年間にわたって登場を続けてしまう。

 これについても16巻で一応説明されます。フクベエとサダキヨが初めて会話したのは、秘密基地で「よげんの書」を見ているとき。このふたり、まだ4年生で別の学校のはずなんですが、お互いに名前を知ってました(16巻1話)。

 5年生の1学期でサダキヨが転校してきたのは、「隣の学校で」「イジメに」あったから(16巻2話)。だから、もともとご近所で知り合いだったのね。

 サダキヨが引っ越して5年生の2学期に転校したあと、1971年4月、6年生の1学期にサダキヨがフクベエとヤマネ君のいる理科室に帰ってきます。転校先でもイジメられたため、この後“ともだち”グループに復帰しました。

 なぜこんな複雑な設定にしたのでしょう。短期間しか同級生じゃなかった、という人物をどうしても作りたかったのか。ただ、あまりに複雑な展開なので、作者も忘れちゃってました。

 10巻9話のサダキヨの回想シーンでは、1970年1学期の遠足→1970年1学期のイジメ→関口先生に声をかけられる→1969年夏の秘密基地でのフクベエとの出会い→1970年夏休みおわりの引越し、の順で語られます。1970年のお話の中に突然、1969年夏のシーンが出てくることになり、すっごく、変なことになってます。

 もうちょっと続きます。

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