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March 10, 2005

「20世紀少年」をきっちり読み直す(その3)

 前回からの続きです。思いっきりネタバレします。未読のかたはご遠慮ください。

(3)1970年、小学5年生:首吊り坂事件

 このあと、1969年夏の事件として、ヤン坊マー坊の秘密基地破壊と、それに続くケンヂたちとの戦いがありました(4巻4話、5巻1話)。これで秘密基地ごっこは終わりかと思えばさにあらず、秘密基地は再建されて、1970年にも続きます。

 1970年夏。ケンヂたちは小学5年生になっています。この年の大きなイベントは、大阪万博でした。かれらも秘密基地で万博の話題でもりあがっています(7巻4話)。

 そして、1970年夏の大きな事件は、首吊り坂屋敷の事件です。

 首吊り坂屋敷事件についての詳細は、ともだちランドのヴァーチャルアトラクションでの小泉響子の体験と、16巻で描かれる“ともだち”の夢(=回想)でしか明かされません。ですから、その内容が真実であるかどうか、不明です。しかしここでは、その二者とも、ある程度真実であろうということにして、話をすすめますね。

 1970年1学期、サダキヨが転校してきました。サダキヨは1969年からずっと、ナショナルキッドのお面をかぶっていることになってます。物持ちいいなあ。

 この夏、フクベエは自分が万博に行ったことにして、自宅でこもっていました。そこへサダキヨがやってきて、ふたりで首吊り坂屋敷のいたずらを始めます。大きなテルテル坊主を吊るしたのです(16巻3話)。

 この夏、“ともだち”グループにはヤマネ君は参加していません。彼はこのときフクベエから絶交中(16巻5話)、そしてこの夏は8月31日まで万博に行っていました(12巻7話)。

 そして、1970年8月28日(小泉のヴァーチャル体験では、1971年ですが、ここは1970年のこととして考えていきます)。ケンヂたちが首吊り坂屋敷探検に行こうということになります(8巻9話)。

 メンバーを誰にするか。ケンヂはフクベエの名をあげ(8巻9話)、実際に誘いに行きます(16巻4話)。小学生時代、唯一、ケンヂグループからフクベエの名が呼ばれたのは、この時でした。

 フクベエは、サダキヨから取り上げたナショナルキッドのお面をかぶって、首吊り坂屋敷に先回りしようとしますが、ケンヂにつかまって、探検の仲間にされてしまいます。このとき、集まったのは8人。ケンヂ、オッチョ、モンちゃん、ヨシツネ、コンチ(ヘルメットをかぶった、水木しげる描くところの長井勝一ふう少年)と、フクベエ、その他2人。これは8巻10話、16巻4話も同じです。なんと、“ともだち”の正体がわかっていなかった8巻10話の段階で、子供時代のフクベエの顔が登場していたのです(8巻182ページ2コマめ、183ページ1コマめ)。

 このとき読者にとって彼は単なる名無しの少年で、フクベエとはわからず、ましてや“ともだち”とわかるはずもありません。このさりげない登場のさせ方はお見事。

 この後、首吊り坂屋敷で、テルテル坊主の陰でフクベエとサダキヨがしゃべっているとき、その足もとをヨシツネが(ヴァーチャルアトラクション内では小泉響子もいっしょに)目撃します。

 おっと、ヨシツネくん。キミ、13巻1話で、フクベエのことを「あいつは僕達の子供の頃の記憶の中にはどこにもいない!!」なんて言ってますけど、ちゃんと首吊り坂屋敷のとき、一緒だったじゃないですか。記憶にないのは、単にキミが忘れっぽいだけ?

 新学期になって、サダキヨが突然転校してしまったことがわかり、学校では万博のことは話題にならず、ケンヂたちのオバケ騒動が一番の話題。フクベエの心の傷となります。


(4)1970年秋、小学5年生:秘密基地の終わり

 1970年秋になって、フクベエと万丈目の初めて出会い(16巻5話)。このときフクベエがスプーン曲げを見せます(16巻6話)。そしてヤマネ君が“ともだち”グループに復帰。

 さて同じ頃、秘密基地の原っぱがボウリング場建設予定地になり、ケンヂたちはタイムカプセルを埋めることになります。落ち葉が舞い散ってますから(1巻9話)、秋といいたいところですが、正月ピンク映画のポスターが張ってあるので、季節はビミョー。

 ここに集まったのは8人。うち顔がわかるのは、ケンヂ、マルオ、ヨシツネ、モンちゃん、コンチ。あとの3人は不明です。あとからドンキーが参加しました。

 このタイムカプセルから出てきたのは、“ともだち”マークの旗、レーザー銃の絵、鉄人28号型巨大ロボットの絵です(1巻9話)。

 このエピソードは「20世紀少年」の中でとりつくろうことのできない矛盾で、最近のお話の流れでは「なかったこと」にされております。レーザー銃の絵は、10巻9話、16巻1話に登場するフクベエが見る「よげんの書」の中にまるきり同じ絵がありますから、これから破りとったものと考えられます。でも、鉄人28号型巨大ロボットの絵は?

 この絵はケンヂが「よげんの書」であるところのスケッチブックに描き(8巻2話)、後にもそこに存在するものです(5巻4話)。「よげんの書」の絵をコピーしたかのようにまったく同じ絵が(いやまあ、実際にコピーした絵なんですが)、なぜタイムカプセルから出てきたのか。

 完全に同じ絵が2枚あることになり、こりゃおかしいわ。合理的な説明はつかない。というわけで、「よげんの書」が登場してからは、このタイムカプセルのエピソードは封印されてしまいました。

 以下次回。

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Comments

最近20世紀少年を読みました。
私も疑問に思ったんですが、
おっと、ヨシツネくん。キミ、13巻1話で、フクベエのことを「あいつは僕達の子供の頃の記憶の中にはどこにもいない!!」なんて言ってますけど、ちゃんと首吊り坂屋敷のとき、一緒だったじゃないですか。記憶にないのは、単にキミが忘れっぽいだけ?…

あそこにいたのはフクベエではなく、カツマタなのかも。
ケンジはお面を取った子はサダキヨと思わず普通に流してました。お面を被っていたコは2人居ましたよね?
だからあの時点であの顔だから双子なのかも…。
推測でしかありませんが。

Posted by: k | September 13, 2009 03:08 PM

コメントありがとうございます。靴の色とは、まったく気づきませんでした。雑誌ではいよいよラストが迫ってるみたいで、再度大きな盛り上がりを見せてくれるか、注目ですね。

Posted by: 漫棚通信 | November 21, 2005 10:32 PM

「「20世紀少年」をきっちり読み直す」、興味深く読ませていただいております。そこで批判というものではないのですが、ちょっと疑問に思ったのでコメントさせていただきます。
「おっと、ヨシツネくん。キミ、13巻1話で、フクベエのことを「あいつは僕達の子供の頃の記憶の中にはどこにもいない!!」なんて言ってますけど、ちゃんと首吊り坂屋敷のとき、一緒だったじゃないですか。記憶にないのは、単にキミが忘れっぽいだけ?」
と、漫棚通信さんはおっしゃっておりますが、8巻10話の首吊り坂のエピソードは回想シーンではなく、小泉響子が体験していたバーチャルアトラクションの世界の中での出来事なので、単に「ともだち」が当時の自分の姿をケンジのグループ内に割り込ませた、と考えてもおかしくはないのでしょうか?私の疑問はむしろ、フクベエらしき少年の靴にあります。8巻188ページ3コマ目のフクベエの靴は、白っぽい紐靴です。しかし、204から207ページにかけて、シーツの裏でサダキヨらしき少年を脅している、フクベエらしき少年の靴は濃い色で、紐靴ではない運動靴です。そして16巻になるとさらに矛盾が深まります。2話でサダキヨのお面をかぶり出歩くフクベエと、3話でサダキヨと一緒に首吊り坂の家のなかにいるフクベエの靴は白っぽい紐靴です。しかし4話68ページ目でサダキヨのお面をかぶって家を出るフクベエは濃い色の運動靴なのです。そのすぐ後にケンジに「お面をとれ」といわれて、フクベエはお面をはずすのですが、73ページ1コマ目でまたフクベエの靴は白っぽい紐靴に...そして77ページ3コマ目でサダキヨの引きずるフクベエの靴はまた再度、濃い色の運動靴になっているのです。
これもすべて単なるミスなのでしょうか?

Posted by: Wussy | November 21, 2005 08:36 AM

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