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February 10, 2005

最大の努力で最小の結果を:ルーブ・ゴールドバーグ

 アニメ「トムとジェリー」のうち、名作というわけではないのですが、すごく大好きな作品がありまして、「失敗は成功のもと Designs on Jerry」というもの。

 トムがムチャ複雑なしくみのネズミ捕り機械を発明する話。トムが黒板にチョークでコマゴマと設計図を描いたあと、夜中にチョークで描かれたネズミがこっそりと黒板を抜け出して活躍。ただし、わたしが好きなところはなんといっても、玉突きのキューを使ったり、水面をオモチャのヨットが走ったりする、大掛かりで複雑なネズミ捕り機のしくみであります。

 これをコンピューター・ゲームにしてしまったのが「The Incredible Machine」というパズルゲームです。画面上にいろんな部品をうまく配置して、全てのボールをカゴに入れる、というような目的を達成させる。部品には、シーソーやベルトコンベアはもちろん、猫、ネズミ、トースター、掃除機、ダイナマイト、ロケットまでいろいろ。

 で、こういうトンデモ機械のことを、「ルーブ・ゴールドバーグふう」とか「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン」と言います。わたしが最初にこの言葉を読んだのは、アチラの人のエッセイだったと思いますが、アメリカ人なら注釈なしに理解できるコトバらしい。

 ルーブ・ゴールドバーグ Rube Goldberg(1883-1970)はアメリカのコミック・ストリップ草創期のビッグ・ネームのひとり。

 鉱山技術者をやめてサンフランシスコでマンガを描き始めたのが1904年。1907年にはニューヨークへ行き、「Foolish Questions」「Mike and Ike, They Look Alike」「I'm The Guy」「Lunatics I Have Met」などで人気を得たあと、描き始めたのが「Rube Goldberg Inventions」と呼ばれる一連のシリーズです。

 わたしの持っているルーブ・ゴールドバーグのポストカード型の小さな画集の表紙は、自動ナプキンという機械。スープをすするおっさんが、頭にアームが何本も突き出た、大きな仕掛けをかぶっています。

 おっさんがスープをすすると、ひもが引っ張られて大さじにはいってたクラッカーが空中に飛び出る。それをねらってオウムが飛び立つ。オウムの足もとはてこになってるので、そこに置かれた種が小さなバケツの中に。バケツが下にさがると、ひもが引っ張られてライターに火がつき、爆竹型小型ロケットの導火線に点火。ロケットが撃ち出される。一方、頭の上にある時計の振り子の部分にナプキンが装着されており、振り子は糸で固定されている。ロケットの下には大きな鎌がくっついているので、ロケットの発射と同時に糸が切れ、時計の振り子が動き出し、ナプキンが口を拭くというわけであります。

 「食事のあとでは、ナプキンをハーモニカに取り替えますと、お客様をおもてなしすることもできます」というオチがつきます。

 これがルーブ・ゴールドバーグ・マシンです。「最大の努力で最小の結果」を得るための機械。本来はムダな努力と発想の飛躍を楽しむナンセンスですが、転じて、ムダなシステムの風刺と読まれることが多いようです。ゴールドバーグのナンセンスは多くの後進のマンガ家に影響を与えました。

 ルーブ・ゴールドバーグ・マシン・コンテストというものもありまして、アメリカではなかなか盛況で楽しそうです。昨年、日本版を多摩大学でやってたみたい。

 ルーブ・ゴールドバーグの公式サイトはコチラ(英語です)。

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Comments

イギリスにはヒース・ロビンソン(1872-1944)という人もいましたね。植草甚一氏の『ぼくの大好きな外国の漫画家たち』(復刻版がもうすぐ出るんでしたっけ)でしか見たことがないんですが…。
きちんと調べたことはないですが、この系統のギャグはアニメに限らずサイレント時代からずっと映画界で愛されてきたようにも思います。大道具さんとかがつい挑戦したくなるようなネタですもんねえ。

Posted by: とんがりやま | February 11, 2005 at 12:15 AM

はじめまして。
いつもROMさせていただいております。
が、ルーブ・ゴールドバーグの話が出てきたので、
ついしゃしゃり出てしまいました。

すでにご存知かもしれませんが、
DVDで「THE WAY THINGS GO」という、
ルーブ・ゴールドバーグ・マシンの精髄ともいうべき、
名演を見ることができます。
ぼくはアメリカにいったとき空港でこれが試写されているのをみて、
いっぺんにとりこになってしまったのですが、
(日本でもアマゾンで買えます)
30分にわたって、緻密な「風が吹けば桶屋が儲かる」式世界が展開されます。
薬品を多用しつつ、動きの優美さに見蕩れます。

Posted by: 紙屋研究所 | February 11, 2005 at 04:10 AM

コメントありがとうございます。
>とんがりやまさま
書く前に、植草甚一ならゴールドバーグに言及してるかなとこの本も読んでたんですが、今ちゃんと読み直してみますとヒース・ロビンソンの「ネコを黙らせる機械」ってまさにゴールドバーグそのもの。ネットを見てたらロビンソンがゴールドバーグに影響を与えたと書いてるページも複数ありますね。そうとう有名なイラストレーターらしくて、
http://www.liverpoolmuseums.org.uk/walker/exhibitions/heathrobinson/
http://www.bpib.com/illustrat/whrobin.htm
このあたりのサイトでは絵も見られます。いや勉強になりました。
>紙屋研究所さま
はじめまして。こちらこそいつも読ませていただいております。面白そうなDVDですねー。いわゆるアートでしょうか。ゴールドバーグ的なものって日本じゃあまり見かけませんが、ナンセンスの歴史が違うのかも。

Posted by: 漫棚通信 | February 13, 2005 at 05:33 PM

 ゴールドバークは自分のことをアーティストではなく「芸人」だと考えていたらしいですね。
 これは『マンガ学』だったか続編の『Reinventing Comics』だったかに載ってた話ですが、作家主義者のウィル・アイスナーが「これからはコミックアーティストも作家としての権利を主張しなければ」って話をしにいったら「芸人がバカなことを考えるんじゃない」とゴールドバーグに怒られたそうです。竹熊さんが書いておられたマンガや映画、アニメが最初は舞台芸であったことがよくわかるエピソードで非常に強く印象に残っています。
 怒られた側のアイスナーのほうも1月に亡くなってしまわれたわけですが……

Posted by: boxman | February 14, 2005 at 12:12 PM

うーむ、木川かえるやマンガ太郎こそ、原初のマンガ家を今に残す存在だったとは。さらにはお笑いマンガ道場とか。

Posted by: 漫棚通信 | February 14, 2005 at 08:57 PM

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