マンガ家・みうらじゅん
みうらじゅんといえば活動が多彩で、マンガ家とは思われていないかもしれません。イラストも描くエッセイストとか。1958年生まれ、デビューは「ガロ」1980年10月号「ウシの日」です。このころのガロの実質的編集長は渡辺和博。
マンガ家としての代表作は「アイデン&ティティ」でしょう。もしこれがなかったら、みうらじゅんのマンガはウシとカエル(と大島渚の似顔)だけになったかも。
シリーズは現在までに3作。「アイデン&ティティ」(ガロ連載)1992年青林堂刊。「マリッジ」(月刊カドカワ連載)1996年角川書店刊。「アイデン&ティティ 32」(アックス連載)2004年青林工藝舎刊。前2作は「アイデン&ティティ 24歳/27歳」として角川文庫になってます。これからわかるように最新作の「アイデン&ティティ 32」とは32歳の意味。
バンドブームにのっかって、みうらじゅんが「大島渚」を結成したのはシャレだと思ってました。30歳過ぎてたし。ところが「アイデン&ティティ」で主人公をかなり年下に設定して熱くロックを語らせるのを読んで、驚いたものです。
今回読み直してみて、やはりその主張はイノセントで熱く、ストレートど真ん中。バンドブームが終焉をむかえる中、主人公は商業主義とロックの魂の間で悩みます。クライマックスは、TV放送中に放送禁止語を歌詞の中で連呼するシーンです。映画「アイデン&ティティ」はこの第1作の映画化。
「マリッジ」はバンドの2回目のメジャーデビューの話。テーマはやはり反・商業主義。「アイデン&ティティ 32」は、商業主義に徹した友人・岩本がガンで死ぬ話。年令設定と現実の時間の流れがかなりズレてきてます。岩本のモデルと思われる池田貴族が亡くなった1999年という設定としても、ズレてますが、ロックを語るのは32歳までってことはないでしょ。
テーマにぶれはなく、お話も起伏にとみ、ディランやジョンとヨーコが登場したりしてたいへん面白いのですが、わたしはどうしてものれませんでした。その理由は、このマンガ読んでる最中ずっと、これ、マンガじゃなくてもいいよなあ、と考え続けていたから。著者もそのつもりで描いてる気がしてしょうがない。映画とか、いやTVの連続ドラマこそ、このお話にふさわしいんじゃないかしら。音楽使えるし、人間関係こまかく描けて盛り上げられるし。
みうらじゅんは何でもできるからマンガも描いてますが、その視点の面白さを表現するには、やはり文章や語りのほうが本領なのでしょう。
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