少女マンガと戦争:女性作家その2:里中満智子
里中満智子は1948年生まれで、24年組とほぼ同年代なんですが、同時に語られることはほとんどありません。古典的少女マンガの絵と構成のひと。里中満智子の場合、叙情じゃなくてあくまで叙事です。
得意技は「女の一生」マンガですから、「ほるぷ平和漫画シリーズ」に収録されたのも、そのタイプ。
「わが愛の記録」(別冊少女フレンド1970年)も大河ドラマ系。太平洋戦争中、アメリカ人の父と日本人の母との間に生まれた鈴子は幼なじみの恋人・武士の子を妊娠します。終戦となり、復員してきた武士と再会した鈴子は女の子を産みますが、出産時に死亡してしまいます。成長した娘・陽子は、結婚問題を機に父親と不仲になりますが、両親が愛し合っていたことを知り、父と和解。で、陽子の結婚式がラストシーン。
はっきりいって陳腐ですが、これだけのお話をきちんと展開させるのはチカラワザ。
もう一作、「無縁坂」(別冊少女フレンド1976年)は、さだまさしの歌「無縁坂」をマンガ化したもの。特攻隊の父が、出征前夜、愛してもいない近所の娘を抱いてできたのが自分であることを知った主人公(♂)が、母の愛とはなんだったかを考えるお話。
「水色の雲」(別冊少女フレンド1972年)の舞台はアメリカです。
ベトナム戦争から恋人・ダニィが帰ってくるので、17歳のマージーは大喜び。ところがダニィは、マージーのことは妹のように思っていただけ。彼はマージーの友人のキャロンと婚約してしまいます。そしてダニィは、今度はカメラマンとして再度ベトナムへ行き、爆死。キャロンは別の男とすぐ結婚しますが、マージーはダニィの写真集を出版し、「わたしの愛は永遠にダニィにささげます」と誓います。
お話はオハナシとして、こういう恋愛ってどんなもんでしょ。主人公、お若いのにねえ。
里中満智子が描きたいのは男女の愛のありかた。戦争は設定のひとつでしかなく、単に極限状態を演出するものです。このあたりがどうしても不満。
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